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BOOTH(pixiv)x同人音楽超まとめx百化 運営者たちが語る“同人”のこれから

イラストレーターという仕事

虎硬さんが企画・監修、project百化が製作したイラスト評論集「ネット絵学」

八田 では最後に、虎硬さんの主宰する「百化」のお話を。とはいえ、百化もそうですが、虎硬さん自身も、最近はあまり個人での活動はされてないとお聞きしています。それはどういう心境の変化なんでしょうか?

虎硬 単純に商業の仕事を受けすぎてしまって時間がなくなったというのが大きいです(笑)。ただ、(色々な意見があると思いますが)イラストレーターの受注仕事って、自分の感覚で言えば、自分の作品ではなく、クライアントの仕事の一端を請け負っているにすぎないですよね。

あくまで現在の俺の持論ですが、イラストレーターが作家性を得て独立するためには、単なる受注業者になってはだめなんです。受注仕事の場合、クライアントの脳みそを越えづらくて力を出しにくいこともあります。だから同人など個人のメディアを使って活動することは大いに意義があることだと今でも考えてます。

片桐 昔読んだグラフィック雑誌で、「CDジャケットは音楽よりもかっこよかったらだめ」と書いてあったんだけど、それに近い話だね。

虎硬 かなり近いと思います。今の自分は会社にいるのですが以前よりお金の不安が少なくなってます。こういう状態になってようやく受注仕事を無理に受ける必要がなくなる。だから「じゃあBOOTHで面白いことをしてみようかな」とか思えるわけですよ。

イラストレーターで単に絵を描く仕事をしていれば幸せだと思っている人もいるかもしれないけれど、俺個人の感覚だとそうとも言えない。もっと「自分の絵」「自分の仕事」をしたいと考える人もいると思う。

片桐 高橋ひでつうさんが言っていた面白い話があって、クリエイティブで食うためには、100点を取る必要はなくて、平均点以上を取ればいい。

ひでつうさんいわく、「つくる」「広める」「売る」の努力をそれぞれ33点ずつにわけて、そのうちの2つを組み合わせればわかりやすい。「つくって売って3分の2」は、無理してこびなくても、ニッチな層からの支持でそこそこ食える。「つくって広めて3分の2」は、売れなくてもそこそこ評価を得て、人生楽しい。最後に「広めて売って3分の2」は、才能がなくてもそこそこ食える。これはマーケティングさえできていれば、クソみたいなクリエティブでも売れるということ。で、全部合計しても99点で、1点足りない。その1点は「運」だって。

※高橋ひでつうさん(京都精華大学特任准教授)さんのFacebookアルバム「なんていったかなんて。もうおぼえてないよ。」より

一同 おおー(歓声)。

クリエイティブで食っていくためには

「コミックマーケット85」

AnitaSun クリエイターがお金をもらうというシンプルな意味では、方法は三種類あると思います。自分でつくって自分で売るか、受注制作をして権利ごと売るか、雇われるか。イラストレーターさんだと、それを臨機応変に組み合わせたりしづらいんだと思います。

一方で、音楽のアーティストだと、意外とそれができたりする。ただ、全部自力でやるとなると、たしかにオーバーヘッドがなくていいですが、一人でPRから流通まで、全てできないといけない。これができない人、またはしたくない人のために、その部分を代行する人達がいて、チーム戦になるんですよね。

ただし同人音楽・インターネット以降は商売の仕組みが変わりすぎたので、最近はこの役割が果たせていない中間者が増えているようですが...。

虎硬 その中間の人っていう話にも通じると思うんですが、イラストの価格問題が散々言われたじゃないですか。「pixivができて安価で仕事を受ける人が増えたせいで、イラスト全体の単価が下がった〜」とか。

でもそれってたとえば新規参入の多いソシャゲ業界とか、仕事を受けたイラストレーターとかが、お互いに不慣れだったというか、市場として未成熟だったということが大きいと思うんです。しかしそれも徐々に成熟していっていると思うし、そもそも今みたいにソシャゲが沢山つくられてイラストの仕事が増えてくるようになった環境は、pixivがあってイラストレーターが露出しやすくなったおかげという一面もある。

八田 具体的に、イラストレーターさんがもっと自分の作品だけで食っていけるようにするには、どういう対策を講じればいいと思いますか?

AnitaSun イラストって、短歌の連作みたいな感じがするんですよね。短歌って、それ単体だと世界観が伝わりにくい表現で、同じシリーズを100作読んではじめて世界観が伝わるものです。オリジナルのイラストも、それ単体ではシナリオ性を提示するのが難しくても、連作にすることで世界観を提示できることがあると思うんですよ。

片桐 今のGoogle時代に何かを流行らせるためには、僕は言語化することがめちゃくちゃ大事だと思うな。言語化するということは、その言葉で検索できるようにするってことだから。ブランドとかも機能としては同じで、ヤフオクでオリジナルの服は売れないけど、そこにブランドがつくと売れる。これは「ブランド志向」という単純な話以前に、言語化できていないものはネット上で人目に触れないから。

二次創作が強いのも、まずそのオリジナルのタイトルで検索できるということが大きい。ただ、これはあくまでGoogle時代の話で、これからどうなるかはわからないけど。

のりお 共通言語化かパターン化しないとだめというのは、すごくよくわかる。それは音楽も絵も一緒だと思うし、モノづくりする人って、最終的にはそうすべきなんだと思う。シナリオがあるコンテンツが強いというのと同じこと。

片桐 ストーリーがあったほうが売れるっていう話はよく聞くけど、実際そうなのかなとも思う。キティちゃんとか。

虎硬 サンリオって、海外展開ですごく盛り上がっているらしいですね。それを考えると、一方でなるべくプリミティブな見せ方が海外ではうけるのかなとも思います。

片桐 海外の現代アートに、普通にキティちゃんがモチーフとして描かれてるの見てビビったもん(笑)。現代アートでは、「花」と「ドクロ」と「きのこ」というモチーフがかなり使われるらしくて、それぞれが「生きる」「死ぬ」「セックス」の象徴になってる。

みんながそのモチーフを描くんだけど、結局、ダミアン・ハーストがつくったドクロと、村上(隆)さんがつくったドクロは全然別もの。キティちゃんとか初音ミクって、もはやそういうのだと思うんだよね。みんなが初音ミクを描くけど、それぞれ作家性がちゃんと出ていて、普遍的なモチーフとして成立している。

虎硬 それを言えば、ルネサンス美術もそうですよね。知り合いのイラストレーターのTOKIYAさんが以前「ゲオルギウスと竜」というテーマでイラストを描いていたんだけど、そのテーマはルネサンス時代に沢山描かれていたものなんですよ。当時それを見て「あえて今これを描くのはかっこいいな〜」とか思ってました。話がそれましたがそういう共通のモチーフを現代に置き換えたとしたら、それが初音ミクなんじゃないかなと思います。

※TOKIYA:イラストレーター、ゲームクリエイター。デジタルイラストレーベル「SKILL UPPER」主催。pixiv以前のお絵描き掲示板全盛期からネット上で活動し、多くのフォロワーを生んだ。 http://www.abukas.com/
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