339

BOOTH(pixiv)x同人音楽超まとめx百化 運営者たちが語る“同人”のこれから

自由すぎる「BOOTH」

八田 BOOTHについてですが、イラストレーターとして様々なオンラインショップを利用してきたユーザーとして、虎硬さんはどう見ていますか?

虎硬 BOOTHが出たとき、俺はpixivっぽくないなと思いました。「ホントにここまでしてくれんの? ユーザー自由すぎじゃね?」って(笑)。

同人のDL販売ってとら(のあな)とかメロン(ブックス)とかもやってるけど出品するための審査がキツい。それなのにBOOTHは出品に対する制限が何もない。でも冷静に考えてみたら、それがWeb販売の最先端なのかなとも思いました。Gumroadとかもそうですもんね。

虎硬さんのBOOTHページ

のりお そう、実は結構スゴいことやってるんだよ(キリッ。クレジットカードで決済できるシステムまで提供して、完全にユーザー自身に運営を委ねるというのは、他の同人DL販売サイトではやっていない

飲み会参加のpixiv社員Iさん その仕様は僕が考えたんですけど、単純にそういう業界の常識を意識していなかったというのもあります。率直にルールはない方がいいなと。自由がいいなと(笑)。

片桐 pixivにしても、もともとその世界に詳しい人にしかわからないものにしたくなかったしね。同人業界がうんぬんじゃなくて、単純に、絵を描く人が一晩でスターになれるような場所にしたかった。

BOOTHをつくった理由のひとつとしては、例えば、あまりいい話じゃないけど、イラストレーターの仕事って、受託仕事ばかりになっちゃうことが多い。

そうじゃなくて、自分が主体として作品を描くことで、稼げるようにしたいと思った。正直、まだBOOTHはそこまでできているとは言えないんだけど、そのひとつの解決方法として考えている。

虎硬 片桐さんは「pixiv NIGHT」の頃からずっとそれを言ってますよね。だからBOOTHができた時も「変わってない!」と思いました。もちろん良い意味でですよ(笑)。

BOOTHに関して俺が期待しているのは、強烈に舵を取れる、自らサービスを使い倒していくユーザーの出現です。そんなファンタジスタが出てきたらこのサービスは化けると。

もしくはサービス自体がそういった人達に寄っていくというのがいいかもしれません。同人っていう文化はユーザーが学習して活用方法を見いだして、自身がルールをつくっていくのがいいと思うんです。運営はそれのお手伝いをすると。

※2010年6月に開催されたpixiv主催の初のライブイベント「pixiv NIGHT」

今だから実装できる機能

八田 これは素朴な疑問なんですけど、BOOTHの機能をpixiv本体のなかに組み込まなかったのはなぜなんですか?

のりお ……まあ、それも考えたんだけどね。正直、ビビってた部分がある。

片桐 思うんだけど、世の中の流れ的に「こういうのアリだよねっていう空気があるかどうか」って、意外と大事なんだよね。何の脈略もなしに突拍子もないことをしたら、それだけで叩かれて終わったりする。

新サービスをリリースするときも、そういう社会的な意識に合わせないといけない。ユーザー運営の自由なDL販売にしても、今だったら、GumroadとかBASEとかが既にあったというのもある。

例えば、今、pixivの投稿にgifとかの短い動画を対応させるかどうか検討しているんだけど、それも今だから検討できる。

初期にgifを許可していたら、せっかくイラストのギャラリーサイトとしての空気ができていたのに、棒人間が派手に動くようなgifであふれて、プラットフォームとしてめちゃくちゃになっていた可能性もある。昔から存在するアイデアでも、やっぱり出すタイミングがあると思うんだよね。

※6月25日に動くイラストが投稿できる新機能「うごイラ」を追加

うごイラ

AnitaSun それはわかります。もっとわかりやすい例だと、最近、「ニコニ立体」とかの3Dデータ投稿サイトが注目されはじめているじゃないですか。同じようなアイデアはかなり前からありますし、海外ではすでに沢山存在します。だけど、あえて今、あのサービスをつくることに意味があるわけですよね。

コミュニケーションを持ち込めるダイレクトな販売環境と店舗づくり

のりお BOOTHについて、僕個人が現状で改善したい部分を挙げると、売り手・買い手関係なしにユーザーの顔を見られるようにして、もっとコミュニケーションできるようにしたい。ユーザーが商品のお気に入りリストを作成して公開できるようにするとか。

それとBOOTHで売る・売らないに関係なく、今までにユーザーがつくったものをBOOTHに登録できるようにしてアーカイブとして見られるようしたい。そこでほしいモノがあれば「再販希望」できるとか。

AnitaSun コミュニケーション性を持ち込むのはすごくいいと思います。「作り手」と「受け手」がはっきりと別れていると、「場」としての魅力がないんですよね。

のりお 今のBOOTHはそうなってしまっているんだけど、これからは実際の売り場の魅力をもっとサービスに落とし込みたい。とくに同人即売会だと、買い手と売り手とのコミュニテーションで売り場が成立している。だから、BOOTHでものを買うときにコメントをつけて購入できる機能をつけようと思ってる。

AnitaSun PayPalはコメントできますよね。だからPayPalってすごく暖かいんですよね。

片桐 ジャパンネットバンクの振込もコメントできるよね(笑)。

虎硬 そういうのは俺もすごくわかりますね。今は同人から離れているけどコミティアに4年間参加してみて、やっぱり同人は対面でないと得られないカタルシスがあると思いました。個人的にはイラストを深く楽しむ方法として、即売会は最高だと思います。

単純に絵を見るっていう目的だったら、どこでもほぼ無料で見れるネットの方が快適だとは思います。でも、直接面と向き合いながらつくっていく「人間の環」ってお互いに深く影響してくる関係になると思います。今自分がやっている仕事でも間違いなく同人でやっていたことが下地として活きているし。ちょっと泥臭い話なんですけど、どこまでいってもそういうところで培った仲間意識みたいなものはついてくると思います。

AnitaSun バンドのCDの手売りって、すごく効果的なんですよ。握手会と一緒で、マンツーマンで本人から直接買うというのは、体験としての価値が高い。ライブが頻繁に開催されている海外では、ライブという体験をユーザーが十分に消費できてるんですけど、日本では土地の問題もあって、そもそもライブの数が少ないですよね。

すると、自分がアーティストに関わる体験としては、CDを買うことくらいしかできない。その点、やはり即売会は体験として価値が高いと言えると思います。

片桐 僕の好きな漫画に『マネーの拳』という作品があるんだけど、そこに「一番儲かるのは、自分でつくったものを自分で売ること」で、だから一番儲かるのは和菓子屋だっていう話がある。その理由は、単純に考えると「中抜きがいないから」と思いがちだけど、実際は「自分で商品をつくって、売り場に行って、買う相手の反応を見ながら直接売る」という、その工程すべてから得られることが多いんだよね。

客が何を求めているかわかるし、自分の商品以外の何が売れているかも直接見ることができるから、次は何をつくるべきか考えやすい。そう考えると、同人って実は商売としてめちゃくちゃわかりやすい。

AnitaSun これは私の持論ですが、コンテンツ産業も含めたダイレクトな物作りって1次産業だと思うんですよね。例えば多くの第三次産業って、会社で1日100通の電話やメールをこなすと、自動的に給料がもらえて、気が付いたら食卓に肉が並ぶ。その仕事とメシとの関連性については全く腑に落ちた実感がないまま、訳も分からずそれを食って生きているっていう状況じゃないですか。

一方、なにか物をつくってダイレクトに自分の手で売る。その金で肉を買って食うっていうのは、ハンティングに行って、獲物を狩ってくる感覚に近くないですか? 私はGumroadやBOOTHを見ていて、ネットを使ったWebコミケのようなことは実現できると思っています。

八田 つまりAnitaSunは、制作者が物をダイレクトに販売する環境は、すでに十分に整っているという立場なんでしょうか?

AnitaSun 商品が沢山あって、それを買うシステムもあるけど、店舗がないと私は思っています。こう言うと、BOOTHなりAmazonストアがあるから、売り場もあると思うかもしれませんが、それってレジだけ用意されているようなもので、商品を恣意的に選び、陳列するような店舗とは別だと思うんですよ。

もっと、「作り手」でも「買い手」でもない、その間にいる人たちのための場を用意することが大事だと思います。だから、BOOTHがお気に入りなりおすすめリストをつくれるようにするのは、とてもいいと思いますね。
【次のページ】クリエイターが食っていくためには?
1
2
3
4

こんな記事も読まれています

関連キーフレーズ

「八田モンキー」を編集する

キーフレーズの編集には新規登録またはログインが必要です。

この記事をツイート 247

KAI-YOU.netでは、ユーザーと共に新しいカルチャーを盛り上げるため、会員登録をしていただいた皆さまに、ポップなサービスを数多く提供しています。

会員登録する > KAI-YOU.netに登録すると何ができるの?

この記事へのコメント(0)

コメントを削除します。
よろしいですか?

ページトップへ