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BOOTH(pixiv)x同人音楽超まとめx百化 運営者たちが語る“同人”のこれから
こんにちは。八田モンキーです。思いつきのように、ごくまれに登場させていただいてます。

突然ですが、4月にリリースされた「同人音楽超まとめ」というサービスを皆さんはご存知でしょうか。

同人音楽即売会M3に参加するサークルを網羅し、各楽曲を15秒ずつ自動で垂れ流してくれるというサービスです。私は、エンジニアとしてこのサービスの開発を担当させてもらいました。
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すべて人力で音源の選定などをこなす「同人音楽超まとめ」

企画者であるAnitaSunさんから開発の依頼をいただいたとき、私は同人音楽についてまったくの無知でした(今もです)。

しかしそんな私が、開発からリリースを通して、同人音楽、ひいては「同人業界の今」について関心を寄せるようになりました。

ただ、同人業界のことって、ディープすぎてよくわからないし、情報が一カ所にまとまっていません。入って来る情報も、「昔はこうだった」などの伝聞ばかり。

そこで、「じゃあ、当事者たちを集めて、詳しく語ってもらおう」と安直な発想を抱いた私は、各方面の「今」を知り、なおかつ「作り手」としてだけでなく、チームを率いて活動をおこなう「運営者」の方々をお招きし、ご自身が運営するサービスやチームの話を通して、同人の業界の今、そして「これから」を語ってもらおうと思い立ちました。

その結果、pixiv連動ショップサービス「BOOTH」の開発担当者さまをはじめ、なんだかすごい面々にお集まりいただけることに...!

具体的には、ピクシブ代表取締役社長の片桐孝憲さん、「BOOTH」開発マネージャーののりおさん、同人サークル「project百化」主宰の虎硬さん、AnitaSunさん、八田モンキーの5人。
※AnitaSunさんは地元にて休養中だったため、リモート参加

もはやこれは自分の見聞としてだけで終わらせるのはもったいないと思い、その一部を公開することになりました。

というわけで、普段はなかなか聞けない各代表者たちのナマの声を、この機会に是非お楽しみください。
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座談会 in 笑笑

※会場は都内の「笑笑」です。基本、登壇者はビールを飲んでいるものと思ってお読みください

はじめに

メイド喫茶ひろしま

メイド喫茶ひろしま(1)(ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)

片桐 じゃあ、八田くんの『メイド喫茶ひろしま』発売記念ということで(笑)。乾杯!

八田 あざっす! 皆さん買ってくださいお願いします(真顔)。

〜乾杯〜

八田 では、ゆるりと座談会ぽいものをはじめたいと思います。登壇者(?)の方々についてですが、同人音楽超まとめのAnitaSunは元クリプトンの社員さんで、虎硬さんは某大手IT企業に勤められていて、じつは全員がIT界隈という共通点があります。

AnitaSun 私はクリプトンの前はITコンサルにいて、エンジニアをしていたときもあります、今でも自分でコードを書いたりしてます。

虎硬 俺は今、会社でデザインやイラストをやっています。プログラミングは勉強中です(笑)。

片桐 のりおはもともと音楽系の制作会社でアーティストのオフィシャルサイトとかをつくってて、「Magrohead(マグロヘッド)」っていう名前でVJもやってたんだよね(笑)。

のりお 若気の至りです。pixivでは社員同士をニックネームで呼び合うから、入社時に僕は「Magrohead」になりかけて、それだけは勘弁してくれって(笑)。

M3にはギョーカイ人の匂いがしない!

八田 それでは本題に入りましょう。まずは同人音楽超まとめについてお話ししていけたらと思うんですが、のりおさん、何か感想とかありませんか(乱暴)。

のりお じつは同人音楽超まとめにすごく感謝していて。僕にとって同人音楽はSNSでシェアされてくるサンクラ(SoundCloud)とかを聞く程度だったんだけど、そこで「ふんわりちゃん」っていうアーティストを知ったんだよね。

そのときはかっこいいなって思ったくらいで、特に追ったりはしなかったんだけど、同人音楽超まとめで新譜が出ていることを知って聴いてみたら、やっぱりいいなと思って。その率直な感想をツイートしたら、なんと本人がフォローしてくれたことがあって。

AnitaSun 私、ふんわりちゃんのリミックスアルバムに参加してますよ(笑)。

「FNWRMX VOL.1」にBitplane名義で収録

のりお え、そうだったんですね(笑)。そのあと、ふんわりちゃんがBOOTHを使ってくれていることを知って最高にうれしくなって、出演するイベントに行ったら直接会って話すことができてしまった。この一連の出来事は、同人音楽超まとめのおかげなんだよね。

出会いのきっかけになってくれたことに個人的に感謝しているし、そもそもサイトのコンセプトもすごくいい。ふんわりちゃん以外の好みのサークルも沢山知るきっかけにもなったし、4月は行けなかったけど、M3にも絶対行ってみたいと思った。

AnitaSun M3は是非行ってみてください! 私、M3ほど面白い音楽イベントって、サマソニやWIRE規模のフェスくらいしかないと思っています。

音楽イベントって、だいたいがギョーカイ人の匂いがするものなんですけど、M3にはそういうのが一切しない。プロの人もいれば、アマチュアの人もいるけど、売り手はみんな単純に「CDを売るんだ!」という意識だけで集まっている。
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「M3 2014春」CD視聴コーナー 撮影:cube Tanaka

買い手にも音楽をつくってる人や音楽批評をやっている人が相対的に多くて、全員が「参加者」って感じがする。M3は、そういう人たちばかりが数万人も集まる場所なんです。
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「M3 2014春」演奏もできる一般向けスペース 撮影:cube Tanaka

八田 4月のM3を終えてみて、何か同人音楽超まとめの成果を示せるようなデータはありますか? たとえば、4月のM3全体での売り上げが上がったとか。

AnitaSun そういうデータはないですね(笑)。ただ、リリース後1週間で4000ツイートされて、実際には累計1万人くらいの人に使ってもらえました。M3当日も、「あのサイト見た」と色んな人から言ってもらえたり、「サークル全員で徹夜で全部聞いたよ」という声をいただきました。

M3が終わったあとも、「それまでは鳴かず飛ばずだったのが、今回は完売しました」というリプライをくれたユーザーがいたり。ひとくちに1万人と言っても、M3の来場者数を考えると、それなりに効果はあったと思っています。そもそも同人イベントに行く人しかターゲットにしていないサービスですから。

片桐 いや、イベントに数万人が集まるなら、Webサービスにはそれ以上集められるよ。pixivも、リリース当時はユーザーとして見込めるのはコミケに参加する人数くらいが限界、つまり10万ユーザー、よくても100万ユーザーくらいだと散々言われた。

でもpixivは、それまでコミケには参加したことがなくても、イラストを目にすることで自分も描きたくなるような場にしたかった。それで実際、今では1000万ユーザーを越えた。

AnitaSun それができるならしたいですね。そのための場が同人音楽超まとめなのかはわかりませんが。

そもそも今、絶望的に音楽SNSが足りてないと思っています。自分のプレイリストを他人とシェアする音楽SNSは多いですが、実際、他人は他人のプレイリストに興味がないですから(笑)。だから、音楽批評とか、みんなで楽曲の投稿合戦をするとか、そういう場があればいいなとは思っています。

ぶっちゃけ今のボカロってどうなってるの?

八田 同人音楽超まとめのサイトにも少し書かれていましたが、AnitaSunから見て、それぞれの業界での「ボカロの今」ってどういう感じなんでしょうか?

AnitaSun それをどこまで僕が言うべきかわからないんですが...(苦笑)。特に2013年の中盤から、50万PVを超える作品が一気に減りましたね。その原因のひとつとしては、作品が紹介される場がニコ動のランキングにしかなくて、新しい芽が出てきにくい状況というのがあります。

単純な話で、露出しないというのは、存在しないのと一緒です。おまけに、2012年以降はランキング上のジャンルの一極化が進んだんですよ。

1年間同じ料理ばかり食べ続けたら、飽きてしまうのは当然です。togetterの記事の種類とView数の統計なんかも個人的にとりましたが、それでボカロから離れていった人も多いと感じましたね。

虎硬 俺もそのなかのひとりですね(笑)。

AnitaSun 東方やBMSのときも同じことが起こっていました。ある時期から、トランスで埋め尽くされるようになって、そこから一気にファンが離れていったという経緯があります。「カゲプロ」も、それ自体のクオリティやオリジナリティは本当にすごいし、人気が高いことも当然なんですが、それに対抗するものがない。あったとしても既にランキング上のジャンルが固定化されていて、新たにランキングに食い込めず、人の目に触れない。

この状況を変えるためには、ニコ動のランキングとは違う基準でつくられたメディアが必要です。そこで、同人音楽超まとめをつくったんです。

※BMS:2000年代に流行したデジタル音楽フォーマット。楽曲に限らず画像データや効果音などを内包する。特定のPCソフトから実行することで「音ゲーの楽曲」として配布することができる

虎硬 ちょっと話が変わるかもしれませんが、カゲプロ系が売れるのって、シナリオありきですよね。絵描きとしての体感なんですが、どうしても絵単体だと、そういうものには勝てないなって思うんですよ。

のりお 「絵だけじゃ勝てない」という感覚は、みんなで文脈を共有できるかどうかが重要だという話で、それはpixivの投稿作品に二次創作が多い理由にも通じる話だと思う。絵だけではなく世界観やシナリオという文脈を含めて楽しんでいるから。二次創作はすでに文脈を共有できているから文脈を共有できていないオリジナルより楽しみやすい。

ただ、オリジナルで大きいコンテンツになった例外として、ブラックロックシューターがある。ブラックロックシューターという1枚のイラストをきっかけにsupercellのryoさんが曲をつくって映像がついたことで世界観が伝わりやすくなってどんどん盛り上がった。コンテンツが盛り上がるためには、背景にある世界観やシナリオがどれだけ伝わるか、共有できるかが重要だと思う。

虎硬 例えば、そういう「シナリオや世界観ありきのコンテンツと戦う」みたいな意識って、M3に参加するサークルの中でもあるものなんですか?

AnitaSun 作品に物語性を持たせることは、それこそ(M3に参加している)サンホラ(Sound Horizon)の頃からありますよ。彼らの世界観は、かなり乱暴に言ってしまうとメタルとRPGを混ぜたような世界観なのですが、そのやり方自体が、同人の世界とも非常に親和性が高かったと思います。

ただ、少し前までは、物語性が高くてもオリジナルものは、東方やミクのようなキャラクタージャンルものには人気が及ばなかった。それが今は、オリジナルの方が売れたりする。いまのキャラクタージャンルものに飽きがきている証拠です。

CGMにしたらダメ

八田 また違う視点についてお話したいのですが、AnitaSunさんは最初から運営方法に関して「CGM(消費者生成メディア)にしたらダメ」だと決めていたじゃないですか。で、すべて運営側が手作業で登録する今の「スーパー人力更新システム」になったわけですが、その意図はどこにあるのでしょうか?

AnitaSun まず前提として、サークルすべてを網羅する必要があると思ったんです。ひとつでも欠けていたら意味がない。そこにいけば全部見られる、という状況をつくらなければいけない。それに、音楽に特化したCGM(つまり登録制)にはいくらでも残骸があり、成功が見えないという不安もありました。

おそらく、普通にCGMにしても、すでに知名度のあるトップサークルにとってはメリットがないので、べつに使わない。結果、とりあえず宣伝だけしたいっていう人たちばかりが集まることになる。そういう人たちがサイトの色をつくってしまうと、小さいコミュニティで終わってしまいますよね。まあ、単純にすべて登録してビビらせたかったというのもあります(笑)。

のりお でも今回のリリースで、大手からも「すべてのサークルが網羅されている場所なんだ」という認識はもらえたのでは? だったら、今後はCGM化もありえるかもってことかな。

AnitaSun そうですね。一部、自由登録みたいな機能を入れたいと思っています。ただ、結局はすべて人力でやる必要はあるだろうと。

このサービスを思いついた当初は、昔のコミケの300サークルを念頭に置いていたので、M3が1200サークルだと知ったときは、開発担当の八田さんとも頭を悩ませましたけどね(笑)。

※AnitaSunによる後日談:コミケの300という数字も、コミックマーケットの音系ジャンルコード「デジタル(その他)」のみの、しかもかなり古い数字だったようで、最近は「デジタル(その他)」単体で規模が膨れ上がっているほか、これ以外のジャンルコードに広がっている音楽作品数を足すと、数倍に膨れ上がることが分かったそうです

片桐 面白いね。Googleも「Webがこんなに増えるとわかってたらやってなかった」っていう話があるしね(笑)。

AnitaSun Googleの話をすると、極私的な観点でいえばGoogleは悪の存在なんですよ。昔のWebって、検索したら、1ページ目からわけわからないページが色々あって面白かったじゃないですか。

でも、今は整理されすぎていて、なかなか奇抜なものにあたらない。音楽でも同じで、なんだこれというものにもっと出会える場であった方がいいと思うんですよ。

だから、何かしらのジャンルで適当な区切りを設ければ、GoogleでもWeb黎明期でもない中間くらいのメディアをつくることは可能だと思うんですよね。同人音楽超まとめも、そういうメディアになれたらいいなと思っています。
【次のページ】pixivの新サービス「BOOTH」って何?
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