作画枚数は従来の1.5倍 動物が躍動するアニメーションに
──素朴な疑問ですが、普段たなかさんが描かれている人間のキャラクターよりも、今回のような動物の場合は頭身が下がります。となると、演出や作画といった芝居のさせ方も変化するのではないでしょうか?
たなか たしかにレイアウトは変わりましたね。アニメーターさんたちにとっても、人間を描く時とは違う気の使い方をする場面が多かったかなと思います。たとえば、あきゅりんがブランコをするカットは、コンテ段階だとどうやって鎖を前足で掴んでいるのか、正確には定まってませんでした。そういうコンテ段階で曖昧な部分は、今回参加していただいた原画マンの方にすごく助けていただきました。
アキュラホームのアニメCMより
上松 あのカットは弊社の青木優衣さんが担当ですね。普段の原画よりは時間が掛かっていたので、やはり青木さんにしても動物のキャラクターは大変だったと思います。
たなか 原画マンの方々との作打ち(作画打ち合わせ)では、「あきゅりん、ひつじ、ふくろうを楽しく動かしてほしい」とお願いをさせていただきました。CMを見た視聴者にあきゅりんたちのワクワクが伝わり、ひいては木造住宅に対しての興味関心につながればと思い。
その結果、たくさんの原画枚数を使って素敵な演技を描いてくれて。
上松 一般的に、30秒尺であれば動画を含めた枚数は500枚以下なんです。でも、今回は約750枚。気づいたときには、かなり多い枚数になっていました(笑)。原画マン、動画マンの方々が“ノって”くださった結果なので、悔いはありません!
──あきゅりんの長い首がダイナミックに映るカットも印象的でした。
たなか あれこそ、アキュラホームの木造建築技術「AQダイナミック構法」によって生み出された大空間を象徴するカットですからね。あきゅりんの特技は「長い首を伸ばしてワクワクを見つけること」ですから、その要素を表現しようと。あのカットは企画初期から入れたいなと考えていました。
アキュラホームのアニメCMより
遠藤 吹き抜けの高さを表現するためには、あきゅりんの首が最適でしたしね。
山中 作画面だと、3匹の動物の動きに応じて描かれるエフェクト作画についても言及しておきたいです。コンテ初稿が上がってきたとき、思わず「誰が描くんだよ!」と思ってしまったほどで(笑)。
たなか 映像の盛り上がりをつくるにはどうしても必要なカットでした(笑)。
アキュラホームのアニメCMより
山中 最初はたなかくん自ら原画を担当すると思っていたんです。でも、聞いてみたところ「いや、僕ではいい画にならないから」と固辞して。それならたなかくんにはディレクションに集中してもらい、該当のカットは他の原画マンにお願いしようと考えて、2025年WIT STUDIO入社の水野陽日さんにお願いしたのですが、結果としてリッチな画になりました。
水野さんは先輩のエフェクトアニメーターにマンツーマンで教わりながら描いてくださったのですが、とても熱量を感じる仕上がりになったと思います。
『ワンエグ』『忘却バッテリー』美術監督が“地元の繋がり”で参画
──アニメファンとしては、美術監督および背景美術が『ワンダーエッグ・プライオリティ』『忘却バッテリー』の船隠雄貴さんであることも気になりました。
山中 船隠さんとは地元が近いこともあって(山中さんが高知で、船隠さんが香川)、仲が良かったんです。以前に短編の作品で一度ご一緒させてもらったんですが、お仕事も素晴らしくて。たなかくんにも「船隠さんと一緒にやりたいね」とよく話していたんです。
たなか なので今回の企画が決まったときに、船隠さんの名前がお互いから自然と出ましたね。
──その結果、美麗な背景を全て船隠さんが担当されたと。
たなか 先ほど実写CMではなくアニメCMにする意義に触れましたが、船隠さんの美術はまさにアニメだからこそ成せるものだったと思うんですよね。現実に存在する住宅ではあるけれど、画だからこそ可能な表現で描かれているんです。その狙いをしっかりと叶えてくださったのは、船隠さんだったからこそだと思っています。
アキュラホームのアニメCMより
──ちなみに、制作が開始したのは2025年初頭とのお話でしたが、実制作期間は半年ほどだったそうですね。
山中 短いスケジュールだったとは思いますが、たなかくんはしっかり納期に間に合わせてくれるので、絶対に大丈夫だと信頼していました。
たなか 優秀なスタッフの方々に参加していただいたので、僕も安心していました。後半は少しスケジュール的に厳しくなって緊張が走りましたけど、無事に完成させることができました。
上松 原画も、いつもお願いしている間違いのない方々でした。と言いつつも、無事に出来上がって、本当にホッとしています(笑)。
クライアントワークとしてのアニメCMという経験値
──なお、本作には30秒バージョンのほかに、15秒バージョンも制作されています。地上波で流れるCMにはこういった尺の異なるバージョンがありますが、今回のアニメの場合はどのように制作が進められたのでしょうか?
たなか 今回の場合でいうと、30秒バージョンの制作がある程度進んだ段階で15秒バージョンの構成を考え編集しました。
構成の骨子はそのままに映像を短くまとめ、結果的に15秒バージョンでも表現したいことやCMで伝えたい意図を損なわない映像ができたかなと!
──そうしてCMが無事に完成し、放送/配信が開始されました。今の率直なお気持ちをお聞かせください!
上松 学生時代、アニメCMを録画してDVDに焼いていた人間としては、ここまで高いクオリティのアニメCMに携わることができて感無量です。いつか、この映像を観てアニメ業界を志す人が生まれるととても嬉しいですね。
制作デスクとしては、たなかさんの秀でたディレクションはもちろんですが、青木さん、石井かおりさん、水野さんが頑張ってくださった動き(アニメーション)にも注目していただきたいです!
遠藤 TVアニメではなく、ショートフィルムをプロデュースするのははじめてだったのですが、本当に楽しい経験でした。一プロデューサーとしても、「クライアントの求めるものをどこまで追求できるのか?」という原点に立ち戻って企画できた作品です。これからも長い間覚えていただける映像になればいいと願っています。
山中 今回は企業CMであり、目的も明確ですので、まずはアキュラホームの名前を覚えていただけたら嬉しいです。その上で、お客さんが増えてくださるように祈っています。ただ作画枚数を使っただけで、マーケティングに繋がらないことが一番の失敗ですから(笑)!
たなか まずはシンプルに多くの人にご覧いただきたいです。そして、アキュラホームのCMとして長い間覚えてもらえる、愛していただける映像になるといいなと願っています。
アニメとして考えると、なかなか近年ではできない動物キャラクターに挑戦させていただけたので、一つ経験値を得られた貴重な機会でした。ぜひ、そんなCMを何度もご覧いただけますと幸いです!

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CM情報
アキュラホーム新アニメCM「あきゅりんアニメ」篇
- 放送開始日
- 2025年9月17日(水)
- 放送エリア
- 全国(一部の地域を除く)
- 動画公開
- アキュラホーム公式ホームページ CMギャラリー
- https://www.aqura.co.jp/adgallery/
【声の出演】
あきゅりん:鬼頭明里
ひつじ:飯田ヒカル
ふくろう:関根明良
星:関根明良
【スタッフ】
■脚本・絵コンテ・演出・作画監督・編集
たなかまさあき
■原画
青木優衣 石井かおり 水野陽日
■動画検査
三瓶苑美
■動画
WIT STUDIO
今萌々子 川村花奈 小林仁美 小松尚子
鈴木泰子 西野萌衣 本迫央 山添愛梨
小川智美
所沢映画
岸影動画
■色彩設計・色指定・検査
木幡美雪
■仕上
アニタス神戸
吉木絵理
岸影動画
■2Dワークス
アズマ
■美術監督・背景美術
船隠雄貴
■撮影
スタジオKAI撮影課
林賢太 原田翔太
■音響監督
渡邊慎唯
■音響効果
小林孝輔
■録音スタジオ
スタジオT&T
■音響制作担当
中村暢
■音響制作
ビットグルーヴプロモーション
■企画・プロデュース
遠藤一樹(テレビ朝日)
■アニメーションプロデューサー
山中一樹
■制作進行
上松敬弘
■アニメーション制作
WIT STUDIO
【主題歌】
iCO「君へのカルタ」
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