テレビ朝日のプロデューサーが繋いだ企業とアニメスタジオ
──ちょうどお話にもありましたが、今回、たなかさんが絵コンテ・演出をつとめられたアキュラホームのCMが制作されました。アニメーション制作をWIT STUDIO、プロデュースをテレビ朝日の遠藤さんが担当されているわけですが、そもそもこの企画はどのようにはじまったのでしょうか?
遠藤 WIT STUDIOの山中さんと上松さんとは以前、TVアニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期のOPアニメーションでご一緒していました。その後も定期的に連絡をとっていたのですが、2025年の頭頃に、山中さんから「たなかさんとショートフィルムをつくりたい」と連絡があったんです。
遠藤一樹さん:2016年テレビ朝日に入社。2019年から『ドラえもん』のプロデューサーをつとめ、以降は深夜アニメの企画を複数担当。企画/プロデューサーをつとめた『僕の心のヤバイやつ』は、国内外で高い人気を獲得した。
山中 「ホロアース」のPV、『アオのハコ』のED映像と、2作品一緒につくってきましたけど、まだまだたなかくんと作品をやりたかったんです。そこで「クリエイターのことが大好きな遠藤さんなら、きっと面白い企画を持ってきてくださるはず!」とご連絡しました。ただその時点ではまだ、短尺の作品としか決めていなくて、CM以外にもMVなど、他の企画の可能性もありましたね。
遠藤 山中さんからのメッセージに「なんて素敵なお話なんだ!」と思い、すぐに企画を探しました。最初は自分が担当しているTVアニメのOPやEDのアニメーションをお願いする可能性も考えたのですが、タイミング的にも上手くハマりませんでした。そこで思いついたのが、企業CMを制作するというアイデアでした。
──テレビ局のプロデューサーが、企業CMを企画する──あまりイメージできないのですが、企画を立ち上げて以降の流れを詳しく教えてください。
遠藤 企業の中には、アニメCMを制作したいけど、どうやってスタジオにお願いすればいいのかわからない方がいらっしゃると思うんです。一方、僕はこれまで制作スタジオやクリエイターの方々とともに、様々なアニメをプロデュースさせていただきました。同時に、テレビ局として多くのスポンサー企業の方々とお付き合いさせていただいています。
となれば、僕が仲介役として、アニメCMをつくりたい企業と制作会社/クリエイターとを繋ぐ。今回で言えば、企業がつくりたいアニメCMを、たなかさんやWIT STUDIOにお願いすることは可能なのではないか、と思いついたんです。
そこから弊社の営業チームも巻き込んで、様々な企業とお話をしていきました。その結果、総合住宅メーカーのアキュラホーム(株式会社AQ Group)さんに手を挙げていただきました。
建築系企業のアニメCM……他社作品との差別化という課題
──そうしてアキュラホームのアニメCMを制作することになりましたが、そもそも会社への印象はどういったものだったのでしょうか?
遠藤 ものづくりの志が素敵な会社だと感じました。もともと創業者の方が大工出身ということもあり、ものづくりのマインドが社風となっているんです。加えて、秀でた木造建築の技術を強みとされているんですよね。
実際、今回のCMにも登場しますが、アキュラホームの本社は8階建てなのですが、鉄筋コンクリートではなく木造建築なんです。しかも、耐震性も素晴らしくて安全ですし、広い吹き抜けのような空間もある。そんな強みをアニメで表現したら面白いのではないかと感じました。
アキュラホーム本社/アキュラホーム提供
山中 ただアキュラホーム、つまり建築会社のCMと決まった時点で、アニメ業界の人間としては他社の有名アニメCMが思い浮かぶわけです。他社のCMではありますし、目的も異なりますけど、その印象と被りすぎるのもよくありません。いい意味で差別化を図りたい、ということは企画当初から念頭にありました。
たなか そこで浮かんだアイデアが動物のキャラクターでした。アキュラホームの本社にお伺いしたとき、「あきゅりん」というキリンのオリジナルキャラクターがいることを知り、「これだ!」と頭の中で繋がったんです。
あきゅりんの声は声優の鬼頭明里さんが担当
──なるほど。そうしてあきゅりんに加え、ひつじとふくろうがメインキャラクターになったと。そこからどのように内容を詰めていったのでしょうか?
たなか 今回のCMの一番の目的はリクルートやブランディングではなく、視聴者にアキュラホームさんの住宅をアピールし購入を促すことでした。
その上で、アキュラホームの本社ビルを制作する過程で培われた、一般的な木造建築ではあり得ないような大空間を、高い耐震性のもと実現する「AQダイナミック構法」を押し出したい。
また、せっかく実写ではなくアニメのCMをつくる機会ですから、作画ならではの表現も盛り込んでアキュラホームのアピールをしていきたい。この3点を意識しながら脚本を考えていきました。
ひつじ役はの声優は飯田ヒカルさん
ふくろう役と星役の声優は関根明良さん
たなか その後紆余曲折ありつつですが、結果的に脚本だけでいえばすごくオーソドックスな構成になったと思っています。「こんなのあったらいいな」「ありますよ!」で説明に入る、という構成なので。
登場人物を動物にするという世界観的なところで映像としての差別化ポイントというか、引っ掛かりみたいなものをつくれたので。話の構成はシンプルにした方がいいなというバランス感でした。
振り返ってみると、アキュラホームさんは「動物のキャラクターでCMをつくります!」と聞いたときには少し困惑されたと思うんですよね。
遠藤 一言で動物のキャラクターと言っても幅がありますし、それゆえにイメージがわきづらいですからね。たなかさんからより明確なイメージボードを提出していただいて、先方も方向性が掴めたからこそ、OKが出た気がします。

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CM情報
アキュラホーム新アニメCM「あきゅりんアニメ」篇
- 放送開始日
- 2025年9月17日(水)
- 放送エリア
- 全国(一部の地域を除く)
- 動画公開
- アキュラホーム公式ホームページ CMギャラリー
- https://www.aqura.co.jp/adgallery/
【声の出演】
あきゅりん:鬼頭明里
ひつじ:飯田ヒカル
ふくろう:関根明良
星:関根明良
【スタッフ】
■脚本・絵コンテ・演出・作画監督・編集
たなかまさあき
■原画
青木優衣 石井かおり 水野陽日
■動画検査
三瓶苑美
■動画
WIT STUDIO
今萌々子 川村花奈 小林仁美 小松尚子
鈴木泰子 西野萌衣 本迫央 山添愛梨
小川智美
所沢映画
岸影動画
■色彩設計・色指定・検査
木幡美雪
■仕上
アニタス神戸
吉木絵理
岸影動画
■2Dワークス
アズマ
■美術監督・背景美術
船隠雄貴
■撮影
スタジオKAI撮影課
林賢太 原田翔太
■音響監督
渡邊慎唯
■音響効果
小林孝輔
■録音スタジオ
スタジオT&T
■音響制作担当
中村暢
■音響制作
ビットグルーヴプロモーション
■企画・プロデュース
遠藤一樹(テレビ朝日)
■アニメーションプロデューサー
山中一樹
■制作進行
上松敬弘
■アニメーション制作
WIT STUDIO
【主題歌】
iCO「君へのカルタ」
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