GoogleやAppleなどの巨大テック企業が支配する、新たな経済システムについて論じたビジネス書が、2月26日に集英社シリーズ・コモンから刊行された。
タイトルは『テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。』(以下『テクノ封建制』)。
著者はギリシャで財務大臣経験を持つ経済学者のヤニス・バルファキスさん。解説は哲学者の斎藤幸平さん、邦訳は翻訳家の関美和さんが担当した。
著者は経済危機のギリシャで財務大臣に就任した人物
『テクノ封建制』の著者であるヤニス・バルファキスさんは、1961年アテネ生まれの経済学者。
2015年には、ギリシャ経済危機の最中にチプラス政権で財務大臣に就任。緊縮財政策を迫るEUに対して大幅な債務減免を主張し、注目を集めた。
ヤニス・バルファキスさん
現在は、アテネ大学で経済学教授をつとめるほか、英国、オーストラリア、ギリシャ、米国でも講義を行っている。
主な著書に、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』などがある。
GAFAMが「領主」として君臨するシステムからの脱出法とは?
『テクノ封建制』でヤニス・バルファキスさんは、現代は資本主義が終焉を迎え、テック企業がデジタル空間の「領主」として中世のように君臨していると説明。
彼らが「農奴」と化したユーザーから「レント(地代/使用料)」を搾り取っていると主張している。
ここで言うテック企業とは、いわゆるGAFAM(ガーファム)──Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft──を指す。
本書の説明によれば、ドナルド・トランプ大統領とイーロン・マスクさんの専制政治、日本のデジタル赤字の爆増、そして世界規模での中間層の消滅といった大変動を理解する鍵が、「テクノ封建制」であるという。
また、AIやアルゴリズムの指揮下で不安定な雇用を生み、大量の「クラウド・プロレタリアート」を働かせ、利益を収奪していくと論じて、このシステムを抜け出す方法を探っている。
装画はコンテンポラリーアーティストの藤嶋咲子さんの「工場人間 #02」という作品/画像は集英社公式サイトより
なお、『テクノ封建制』のカバーデザインはコバヤシタケシさんが担当。印象的な装画は、コンテンポラリーアーティストの藤嶋咲子さんの「工場人間 #02」という作品だ。
「世界はGAFAMの食い物にされる」各専門家からのコメント
米大統領就任式で、ずらりと並んでいたテック富豪たちの姿に「引っかかり」を感じた人はみんな読むべき。
――ブレイディみかこ氏(作家)
テクノロジーの発展がもたらす身分制社会。その恐ろしさを教えてくれる名著。
――佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)
これは冗談でも比喩でもない!
資本主義はすでに死に、私たちは皆、農奴になっていた!
――大澤真幸氏(社会学者)
私たちがプレイしている「世界ゲーム」の仕組みを、これほど明快に説明している本はない。
――山口周氏(独立研究者・著作家)
世界はGAFAMの食い物にされる。これは21世紀の『資本論』だ。
――斎藤幸平氏(経済思想家・東京大学准教授)
私たちがいま陥っている混乱を理解したい人のための本だ。この混乱には私たち全員が巻き込まれているのだから、つまるところ、すべての人のための本である。
――スラヴォイ・ジジェク氏(思想家)
新時代の到来を告げるような、千年に一度の大転換……これは単なる新しいテクノロジーなどではない。世界がまったく新しい経済システム、そして政治的権力と格闘しているという話なのだ。
――キャロル・カドワラード氏(「オブザーバー」紙)
■『テクノ封建制』目次
はじめに
第一章 ヘシオドスのぼやき
第二章 資本主義のメタモルフォーゼ
第三章 クラウド資本
第四章 クラウド領主の登場と利潤の終焉
第五章 ひとことで言い表すと?
第六章 新たな冷戦――テクノ封建制のグローバルなインパクト
第七章 テクノ封建制からの脱却
解説 日本はデジタル植民地になる(斎藤幸平)
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解説:斎藤幸平
訳者:関美和
発売⽇:2025年2⽉26日
税込価格:1,980円(10%税込)
ISBN:978-4-08-737008-9
集英社シリーズ・コモン刊
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