“デスレース”映画『ランニング・マン』 スティーヴン・キングの原作小説が20年ぶり復刊

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“デスレース”映画『ランニング・マン』 スティーヴン・キングの原作小説が20年ぶり復刊
“デスレース”映画『ランニング・マン』 スティーヴン・キングの原作小説が20年ぶり復刊

小説『ランニング・マン』書影

作家のスティーヴン・キングさんによる小説『ランニング・マン』が12月2日(火)に扶桑社から刊行される。邦訳は翻訳家の酒井昭伸さんが担当した。

同作はスティーヴン・キングさんが「リチャード・バックマン」名義で発表し、日本では以前に旧題『バトルランナー』として刊行。

今回は、同作を原作とした映画『ランニング・マン』が2026年1月30日(金)に公開されることにあわせて、20年ぶりの復刊が決定した。

【画像】映画『ランニング・マン』場面写真一覧

逃げ切れば10億ドル、捕まれば即死亡のデスゲーム『ランニング・マン』

『ランニング・マン』は、スティーヴン・キングさんが「リチャード・バックマン」名義で1982年に発表した長編小説。

極端な格差が進んだ近未来アメリカを舞台に、主人公である失業者のベン・リチャーズが、生放送の逃走サバイバル番組に挑む。逃げ切れば10億ドル、捕まれば即死亡──敵である視聴者が賞金稼ぎとなるデスゲームが描かれる。

スティーヴン・キングさん近影 ©Shane Leonard

スティーヴン・キングさんは『シャイニング』『IT』『グリーンマイル』などホラー・サスペンス・ファンタジーを中心に、現代アメリカ文学で最も影響力を持つ作家の一人。

1980年代、スティーヴン・キングさんは出版点数の制限を避けるために「リチャード・バックマン」名義を使用していた。当時は作家名義あたりの年間刊行数に慎重な時代であり、別名義を使うことで継続的な刊行を可能にしたとされている。

今回の復刊では、映画版に合わせた改題/改訳が施され、映画版のキービジュアルを用いた特別仕様カバーで発売。解説は翻訳家の風間賢二さんが担当する。

エドガー・ライト版『ランニング・マン』は「現代の『ダイ・ハード』」

映画『ランニング・マン』は、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ベイビー・ドライバー』で知られるエドガー・ライトさんの監督作品。

映画『ランニング・マン』場面写真

主人公のベン・リチャーズ役をグレン・パウエルさんが演じ、共演にはジョシュ・ブローリンさん、コールマン・ドミンゴさんらが名を連ねる。

全米公開は2025年11月14日。日本では2026年1月30日(金)に東和ピクチャーズ配給で公開される。

映画『ランニング・マン』予告編

なお原作は、1987年にもアーノルド・シュワルツェネッガーさん主演で『バトルランナー』のタイトルで映画化されているが、今作は原作のトーンにより忠実な方向で企画されているようだ。

スティーヴン・キングさんも、Xに映画トレーラーのリンク付きで「現代の『ダイ・ハード』(DIE HARD for our time.)」と投稿している。

スティーヴン・キング「今では多くのことがゲームショー化している」

原作本の復刊にあわせて、スティーヴン・キングさんからのコメントも到着。

刊行当時について、最初に原稿を送った出版社からは「当社はディストピア小説は出版しておりません」と返答があったと回顧。

映画『ランニング・マン』場面写真2

続けて「今では多くのことがゲームショー化している。政治でさえもだ。彼らはすでに2026年や選挙について話している。それもゲームの一部だ。全てが競争の一部なのだ。(執筆当時は)こんなにひどいことになるとは思わなかった」と、現代社会についての思いを打ち明けた。

その上で、執筆していた頃に思い描いたディストピア設定の多くが現実となりつつある社会に警鐘を鳴らした。

「AIが存在する世界になるとは想像もしていなかったし、(映画で)主人公がようやく監視されている事態に気づいてカメラの小さなレンズをテープで覆うような映画の世界になるとも思わなかった。これは双方向なんだ。君が見ているものが、実は君を監視しているかもしれないんだ」

<著者メッセージ・本書より一部抜粋>
「純然たる物語という意味で、最初の四冊のうちでは、本書がいちばんよくできているのではないだろうか。サイレント・ムービーなみにスピードあふれる展開、物語に無関係なものはすべて切り捨てられた思いきりのよさ。それがこの本だ」――スティーヴン・キング

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