アニメ化・実写化された名作『寄生獣』を読んだことはあっても、意外とこちらは読んだことがないかもしれません。
年間数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事に沿った漫画を新作・旧作問わず取り上げる連載「漫画百景」。第四十五景目は『寄生獣』で知られる岩明均さんによる傑作『七夕の国』です。
『寄生獣』が転調の激しいポップスなら、『七夕の国』は静謐なピアノの調べを思わせる対照的な作風のSFミステリーで、対をなす作品とも言えます。
7月4日からDisney+で実写ドラマが配信開始となり、改めて注目を集めている『七夕の国』。変死体、奇祭、悪夢──田舎町を舞台に繰り広げられる超常ミステリーの魅力を解説します。
実写ドラマが配信開始 岩明均によるSFミステリー『七夕の国』
漫画『七夕の国』は、1996年から1999年にかけてコミック誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて連載されました。
1995年に『寄生獣』の連載を終えた岩明均さんが、同作の次に連載した作品です。
完結から約25年後の2024年1月に全10話の実写ドラマ化が発表。7月4日にDisney+で1話〜3話が一挙に配信されました(8月8日までに順次10話まで配信)。
実写ドラマのキャストには、注目の若手俳優・細田佳央太さんや、数々の名演で知られる山田孝之さんが出演。監督はTVドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』などを手がけてきた瀧悠輔さんが担当しています。
頭部が抉れた変死体、奇妙な七夕祭り、悪夢を見る人々 田舎町で起こる超常ミステリー
『七夕の国』の主人公は、紙や薄いプラスチックに極々小さな穴を開けられるという、かなり微妙な超能力を持つ平凡な大学生4年生の南丸洋二(みなみまる ようじ)。愛称はナン丸。
就職の二文字を聞くと無意識に聞き流してしまう、モラトリアムを邁進している彼のもとに、大学教授の丸神正美(まるかみ まさみ)から呼び出しがかかるのですが、当の教授はなぜか行方不明。
丸神教授の研究室のメンバーに話を聞くと、教授が自分と同じ超能力を有しており、さらに先祖が同じであるらしいことがわかります。
時を同じくして、丸神教授が向かった某県丸川町において、頭部の一部がスプーンでしゃくり取られたような変死体が発見されて話題に。ナン丸は自分の超能力との関連性を感じ、丸神教授の研究室のメンバーと共に丸川町へ向かいます。
そして、来訪当初は普通の田舎町に見えた丸川町で、6月に行われる季節はずれの七夕祭りの存在を知り、同じ悪夢を見るという町民たちと出会い、謎めいた物語が動き出す……というあらすじになっています。
では、以下からネタバレ全開で『七夕の国』の魅力を掘り下げていきます。未読の方はご留意ください。
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連載
テーマは「漫画を通して社会を知る」。 国内外の情勢、突発的なバズ、アニメ化・ドラマ化、周年記念……。 年間で数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事とリンクする作品を新作・旧作問わず取り上げ、"いま読むべき漫画"や"いま改めて読むと面白い漫画"を紹介します。
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