UUUM、ANYCOLOR、カバーら誹謗中傷対策で連携「企業の利害関係は度外視」

UUUM、ANYCOLOR、カバーら誹謗中傷対策で連携「企業の利害関係は度外視」
UUUM、ANYCOLOR、カバーら誹謗中傷対策で連携「企業の利害関係は度外視」

メディア説明会に登壇した「誹謗中傷対策検討会」の代表者たち。左から国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授・山口真一さん、UUUM会長・鎌田和樹さん、note法務室長・淺井健人さん。

YouTuberやバーチャルYouTuber(VTuber)など、インターネット上で活動するクリエイターが晒される誹謗中傷問題の解決に向け、関連企業が連携する。

クリエイターエコノミー協会が6月28日、YouTuberマネジメント事務所のUUUMやVTuberプロダクションを運営するANYCOLOR社、カバー社らが参画する「誹謗中傷対策検討会」の設置を発表した。

同検討会は、前述の3社に加え、プラットフォーム提供社としてグーグル(Google日本法人)とnote、誹謗中傷問題の有識者として国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授の山口真一さんで構成されている。

6月28日にUUUM本社で開催されたメディア向け説明会には、クリエイターエコノミー協会代表理事であるUUUM会長・鎌田和樹さんらが登壇。設立の背景を語った。

クリエイターの4人に1人が誹謗中傷の経験あり

UUUM会長の鎌田和樹さん

クリエイターエコノミーとは、あらゆる人々がインターネット上のプラットフォームでクリエイターとして活動し、それによって生まれる新たな経済圏を指す。

クリエイターエコノミー協会は、クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進することを目的に、2021年8月に設立。

代表理事には鎌田さんのほかに、note株式会社の代表・加藤貞顕さん、BASE株式会社の代表・鶴岡裕太さんが名を連ねる。

誹謗中傷の経験有無/クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる調査より

今回発表された「誹謗中傷対策検討会」の設置の背景には、2022年に同協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが共同で実施した調査がある(外部リンク)。

調査によれば、「クリエイターの4人に1人が誹謗中傷を受けた経験がある」と回答しており、業界の垣根を超えた連携や啓発活動が必要として、検討会の設立に至った。

UUUM会長「利害関係を度外視して取り組んでいく」

クリエイターエコノミー協会主催「誹謗中傷対策検討会」参画企業

説明会で鎌田さんは、「これまではクリエイター、プラットフォーム、有識者会議などが個別で対策していた。一方通行とまでは言わないまでも、それぞれの連携が頻繁ではなかった」と背景を説明した。

検討会では、UUUM、にじさんじ運営のANYCOLOR社、ホロライブプロダクション運営のカバー社、グーグル、note、国際大学GLOCOMが連携して啓発活動を展開。

「今後は未然に対策して誹謗中傷の数を減らしていきたい」とコメントする一方で、具体的な活動についてこれから検討していくという。 また「すべてが解決できるとは思っていないし、解決はできないかもしれない。でも、企業が利害関係を度外視して、共に取り組んでいくことがポイント」と、組織としての意義を強調した。

質疑応答では、国内で代表的なSNSであるTwitterが「誹謗中傷対策検討会」に参画していない点に指摘が及んだが、「参画企業は現時点のもの。今後については必要があれば検討していきたい」とコメントするにとどめた。

誹謗中傷はクリエイターの人生を一発で壊してしまう可能性がある」──そう口にした鎌田さんは、検討会設置についてUUUMの一部クリエイターにヒアリングしたところ、「(検討会としての)活動に期待のコメントをもらった」という。

誹謗中傷によって表現の萎縮が生まれている

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授 山口真一さん

説明会には、国際大学GLOCOM准教授の山口真一さんも登壇。GLOCOMによる調査結果(外部リンク)を参照しながら、誹謗中傷の実態を紹介した。

中でも、ジャーナリストへの誹謗中傷の影響について、「誹謗中傷された結果、記事を書かかなくなるなど、表現の萎縮が生まれている」と指摘。「クリエイターにも同様の影響が出ているだろう」とコメントした。

さらに、インターネットではごく少数の極端な意見が目立つ構造がある、非対面のため言葉遣いも攻撃的になるなどの問題点を解説。

検討会の設置に関連して、「個人や少数のクリエイターは誹謗中傷に対して脆弱な面がある」として、加害者に対するアクションのサポートや相談窓口・カウンセリングの充実の必要性を訴えた。

誹謗中傷経験率の比較/国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの調査より

加えて、「誹謗中傷の多くは個人の正義感に基づいているため議論が成立しにくい、反論は自体を悪化させるなど、そうしたクリエイターに対する啓発」も必要だという。

最後には、SNS以外も含めた誹謗中傷経験率を紹介。その中でネット以外が最も多い結果に触れながら、「誹謗中傷はインターネットだけでなく社会全体の問題」と警鐘を鳴らした。

ネットを中心に常態化する誹謗中傷問題

近年、誹謗中傷を巡る問題は常態化。TVはもちろん、インターネットやYouTube、TwitterなどSNSとの親和性が高いプラットフォームで活動するタレントが、多くの被害に遭っている。

2022年だけでも、HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんが所属するUUUM、プロゲーミングチーム・ZETA DIVISIONといった組織が、誹謗中傷への対策状況や声明を発表した。 また「誹謗中傷対策検討会」にも参画しているANYCOLOR社とカバー社も、誹謗中傷への対策を講じるためのノウハウの共有や法的措置、警察諸機関との連携などで、協力体制を敷いたことも話題を呼んだ。

ほかにも、エンタメユニット・すとぷりを運営するSTPRや、バーチャルシンガー・花譜さんらを擁するクリエイティブレーベル・KAMITSUBAKI STUDIOなども、誹謗中傷への法的措置を明言している。 同年7月には、インターネットやSNS上での誹謗中傷対策として、侮辱罪を厳罰化する改正刑法が施行された。

こうした中で、ネットシーンで存在感を発揮するタレントを擁する企業らが連携した「誹謗中傷対策検討会」。その具体的な活動が注目される。

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