SNSに「ファンアートタグ」をつけて投稿されるイラスト。
VTuberやインフルエンサー、作品の一次制作者側が専用のハッシュタグ(ファンアートタグ)を用意し、ファンアート(二次創作作品)を自身の活動に使用することも当たり前となっています。
特にVTuber文化では顕著で、ファンアートを使用することで活動を円滑にするだけでなく、新たな才能をフックアップするきっかけにもなっています。
しかし、近年では画像生成AIが隆盛。その使用の有無や是非を巡り、論争の火種になる事例も発生しています。特にこの2月、ホロライブ所属のVTuber・大神ミオさんのファンアートを巡り、大きな騒動がありました。
ライブ配信のサムネイルにも使用されたファンアートが、画像生成AIによって制作されたものだと視聴者から指摘された後に、殺害予告にまで発展。一体何が起きているのでしょうか。
「サムネイルにAIイラストを使用しない方針」採用された二次創作はAIイラストだった?
今回の騒動は、紅ちゃんというイラストレーターが制作したイラストを巡り、大きな議論となっています。大神ミオさんは、紅ちゃんが制作したファンアートを配信のサムネイルに採用。
ところがその後、紅ちゃんがpixivに投稿したイラストに「AIイラスト」を明示するタグが設定されます(pixivは第三者によるタグ追加が可能)。
このタグを発見したファンが「サムネイルに採用したイラストは、AIイラストである」と反応。これを受けて大神ミオさんも「サムネイルにAIイラストを使用しないという方針がある」と説明し、自身の配信のサムネイル差し替え対応を行いました。
一方で、イラストの制作者/提供者である紅ちゃんは画像生成AIの使用を否定。
ライブ配信にて、イラストの制作工程を公開へと踏み切ります。しかし、それでも批判や誹謗中傷は止まず、殺害予告を受ける事態に。
現在はXのアカウントを閉鎖している状況です。
画像生成AIを巡る対立と「使用していない」ことの証明の難しさ
近年、クリエイティブ業界──特にインターネット上のイラストシーンにおいて、画像生成AIの否定派/容認派の大きな分断と対立が発生しています。
画像生成AIと学習元データセットの権利関係など、技術的かつ法的な議論や使用の是非は今後も検討され続けていくとは思いますが、現実として、1枚のイラスト作品を鑑賞して、人間のイラストレーターが描いたものか画像生成AIが出力したものかを峻別することは、年々困難になってきています。
大神ミオさんも「100%AIイラストだと確定する情報はない状態で早計に対応を進めてしまいました」と投稿。「多くの方に混乱や不快な思い、お騒がせする形となり申し訳ありませんでした」と謝罪する事態に。
同様に、一度発生した「画像生成AIを使用しているのではないか」という疑惑を払拭することも困難な状況となっています。
一般にこうした場合、「していないこと」の証明は非常に困難であるため(悪魔の証明)、確証を得ずに「使用した」と糾弾することの責任は大きなものです。
揺らぐコミュニティの信頼──二次創作文化と共に歩んできたVTuberシーン
VTuberシーンはその黎明期以来、二次創作文化と密接に歩んできました。
あるVTuberがどのような存在なのか、どのような個性を持っているのか──そうした“印象”の流通にはファンアートやライブ配信の切り抜き動画が重要な役割を果たしています。そうしたVTuberと二次創作との関わりは長年に渡って論じられています(外部リンク)。
VTuber及び運営側もファンアートを配信サムネイルに採用する/切り抜き動画やハッシュタグ使用のガイドラインを整備するなどして、二次創作文化との良好な関係を築いてきました。
しかし今回のように「画像生成AIを使用しているのではないか」「画像生成AIを使用しているとの疑惑をかけられるのは」「誹謗中傷を浴びるのでは」と互いが互いを懐疑的に見る状況は、これまでのようなファンと配信者の友好的な関係を結ぶための前提が崩壊しているといえます。
これは画像生成AIの使用や是非を巡る問題ではなく、SNSのようなオープンなコミュニティにおける“信頼”という、別の枠組みの問題です。
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3件のコメント
クローバー4
情報が古い。
論議はAIか否かのところでは結論がほぼ出ている状態で、イラスト投稿者の言動、過去のポスト、行動、過去にも類似の問題を起こしていたこと、ココナラのプロフィールと本人の話すプロフィールの違い(これがここならの規約違反に該当する)、イラストの内容(女性の服装で絶対にそうならないデザイン)など、矛盾点や疑義が大量に出ている状態にある。
その点の論議はほぼ終わっており、ことここに至り「断言したこと」への謝罪を済ませた後も引き続きVtuberへの批判、中傷(明らかに刑事事件に相当するもの)が多数あり、その点が現状の問題になっている。
KAI-YOUは常にこの辺のニュースの取り上げ方が特殊であり、時に偏りの強さを感じるが、記事にするのであれば、
速報性を保てないのなら遅らせてことの結論が出てから
その際は経緯を整理、精査しきちんと正確に重要な要素を漏らさないようにする
名前の出せる専門家の意見も採り入れ客観性を重視し筆者の独断は入れない
という点を「記事」の大事な要素と理解されたい。
匿名ハッコウくん(ID:12010)
この記事では生成AIの是非を巡って殺害予告が来たかのように書かれてますが
記者の方は当該イラストレーターに殺害予告を行った犯人が普段ホロライブタレントを始めとした著名人の名前を騙って
話題の人物やイベントに誹謗中傷や犯罪予告を行っている愉快犯の危険人物であったことなど調査をしてから書かれているのでしょうか
匿名ハッコウくん(ID:12009)
炎上した原因は紅ちゃんへの対応。
いまだに一言の謝罪もなく放置。