本取り組みは、民間で初めて経済産業省から認定された、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資「クラウドプログラム」の供給確保計画に基づくもの。
同社は、3年間で130億円規模を投資(半分は経済産業省からの助成を受ける予定)し、NVIDIA社のGPU「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を2,000基以上採用。高い演算性能および拡張性に優れたGPUクラウドサービスの提供を目指す。
国家支援の下、日本のAIビジネスを支える基盤の一翼に
現在、OpenAI社のAIチャットボット「ChatGPT」やStable Diffusionといった生成系AIが普及しはじめている。これらのようなAIサービスを開発したり、ユーザーが効率的に活用するには、演算処理を行う高性能なGPU(画像処理半導体)が欠かせない。
2016年9月から、機械学習向けのGPUクラウドサービスを展開してきたさくらインターネットだが、今後は経済産業省の承認および支援の下、日本のAI事業を支える基盤の一翼を担うこととなる。
例えば、個人で画像生成AI「Stable Diffusion」を活用するなら、今までは高額なGPUを購入するか、あるいは米Google社が提供する「Colaboratory(Google Colab)」のGPUを利用するのが定番だった。しかし、GPUクラウドサービスが普及することによって、そういったAI生成の常識が変わる可能性もある。
生成系AI向けのGPUクラウドサービスは、さくらインターネットが運営する石狩データセンターでの提供が予定されている。
現在、ラインアップや料金体系などのサービス内容に関するアンケートが開始(外部リンク)。このアンケートでは、無償トライアルと有償の先行利用の申し込みも行うことができる。
さくらインターネット社長「外資系AIの利用で貿易赤字が膨らむ」
さくらインターネットの代表取締役社長・田中邦裕さんが発表したコメントでは、外資系のAIサービスの隆盛や、すでにAIを取り巻く開発基盤が米国でつくられていることを危惧。様々な課題が多く取り沙汰され、AI技術の発展自体を懸念する声もあるが、GPUクラウドサービスによって国内のAI産業に寄与していくことを宣言している。
【さくらインターネット代表取締役社長 田中邦裕さんのコメント】
現在のデジタル分野は4.7兆円規模の貿易赤字です(※1)。今後、ChatGPTに代表される外資系AIの利用が増えることにより、
さらに貿易赤字が膨らむと予想できます。つまり、クラウド化が進めば進むほど日本の貿易赤字が増えるという構図となっています。そのため、内閣府主催の「AI戦略会議」(※2)で述べさせていただいた通り、日本独自のAIの開発と利活用は、経済安全保障の観点でも重要となってきます。
米国では、Amazon.com、Google LLCなどのネット企業の潤沢な利益を再投資する形でAI基盤が作られAIの開発が行われています。日本でも、AIアプリケーションからAI基盤までを自社開発しているネット企業もありますが、米国企業の様にAI基盤の部分で強みをもつ企業は多くはありません。
大規模クラウドインフラがない日本がAIの発展を加速させるためには、AIに関わるコンピューティングリソースの抜本的強化が必要です。そのため、さくらインターネットでは、日本のこのような構図を打開しデジタル大国日本を目指すべく、3年間で130億円規模のAIに関わるコンピューティング資源の安定供給確保を行い、日本におけるAIの発展に寄与してまいります。
【NVIDIA日本代表兼米国本社副社長 大崎真孝さんコメント】
これまでもさくらインターネット様とは、大規模計算リソースサービス「高火力コンピューティング」シリーズで連携を行ってまいりました。本GPUクラウドサービスで採用されるNVIDIA H100 GPUは、大規模言語モデルや生成AIの急増する計算需要に応えることができる、卓越したパフォーマンスを提供します。これにより、研究開発やサービス提供におけるコンピューティングリソースの確保が容易になり、様々な業界で新たな機会を創出し、日本のAIを活用したビジネスを加速させることができると確信しております。
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