イラストレーターをはじめとするクリエイターが、SNSやプラットフォームで作品を発表する──今まで当たり前のように行われていたことが、揺らぎはじめている。
生成AI(ジェネレーティブAI)の登場により、インターネット上にアップロードした作品が、権利者に無断(※)で学習データに利用されてしまうケースが頻発。
それに対抗し、SNSではクリエイター側が自分の作品について「無断学習禁止」を宣言したり、過去に投稿した作品をインターネット上から削除したりするなどの動きも増えてきた。
(※)なお現在、日本の著作権法では、AIの学習を目的とした著作物の利用は「その著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない」かつ「著作者の利益を不当に害さない」場合、原則として権利者の許諾なく利用できるとされている(KAI-YOU.net調べ)
そうした現状を受けて、クリエイターを守る新たなサービス「Oneup」が2024年3月15日にスタートした。
「Oneup」は“AI学習からクリエイターを守るSNS”を掲げ、独自のシステムでAI学習に対する防御策を用意する国産SNSである。
開発・運営は合同会社Nols。代表である春山了平さんは、クリエイターの創作活動や権利が脅かされている現状を憂い、クリエイターとその作品を守るために、熱き信念を燃やしている。
迸る情熱の源泉は、春山さん自身もアニメやゲームといったオタクカルチャーに心を救われてきたことにある。『らき☆すた』との出会いでオタクに目覚め、『けいおん!』の影響でジャズベースまで買ったという教科書のようなオタクルートは、他人事とは思えない人も少なくないはずだ。
今ではしっかりとVTuberにもハマり、好きなヒト・モノ・コトのためにはとにかく課金する主義という、天晴なオタク道を突き進む春山さん。彼がクリエイターたちへの強いリスペクトを胸に「Oneup」を立ち上げたのも、必然だったのかもしれない。
取材・執筆:オグマフミヤ 編集:都築陵佑 撮影:寺内暁
目次
AI学習からクリエイターを守るSNS「Oneup」誕生の経緯
物心つかぬうちに撮られた家族写真では『スーパーマリオブラザーズ』のカセットを手に満面の笑みを浮かべ、幼少期にハマったゲームに『クロノ・トリガー』や『ファイナルファンタジーV』を挙げるなど、硬派なゲーム少年として育った春山さん。
前述した典型的オタクルートを通った後に、芸術系の大学を卒業。まずはテレビ番組制作の仕事に関わる。0から1を生み出す難しさを身を持って知り、クリエイターへのリスペクトを強く持ちはじめたのは、こうしたルーツもあってのことだ。
「昔からイラストもゲームもアニメもずっと好きだったし、『日本のオタク文化最高!』って思っていたので、画像生成AIが話題になりはじめたときに『これはアカンな』って直感したんですよね」(春山さん)
テレビ業界を離れて海外留学を経験したのち、インフルエンサーマーケティングなどに携わるように。そしてフリーランスとして活動する中、春山さんは生成AIを巡る動きに関心を持つようになった。
「作曲家のすぎやまこういちさんの有名なエピソードに、「ドラゴンクエスト」の『序曲』は5分でできたけど、それまで生きてきた54年の人生がなければあの楽曲はできなかった(外部リンク)、っていうのがありますよね。
僕は、優れた作品が生まれるには、単純な制作時間だけじゃなく、その人のバックボーンが必要だと思っています。生成AIは、その部分にかかる労力を完全に無視していると思うんです。0から1を生み出す大変さを全く理解できていない」(春山さん)
そうした危機感から、クリエイターを守る仕組みが必要だと、「Oneup」の立ち上げに踏み切ったという。
「Oneup」運営が考える、現在の生成AIの問題点
「画像生成AIが登場したとき、批判する前にまずは自分の目で確かめるべきだと、試しに使ってみたこともありました。僕はイラストレーターさんのように絵が描けるわけではないのですが、大学の授業でデッサンなども学んでいたので、上達していく面白さや作品を生み出す喜びは知っていました。AIで絵を生成しても、そういう感覚がない。まったく面白くなかったんです」(春山さん)
上達する面白さや作品を生み出す喜びを味わえない、だからこれ以上発展していくこともない──これが春山さんの画像生成AIに対するファーストインプレッションだった。
しかし、予測に反して生成AIブームは拡大の一途を辿っていく。
「2023年くらいから、生成AIでお金を稼ぐ人が出てきたり、企業側がそれを良しとしはじめたりしたんですよね。これはモラルの問題だと思うんですが、個人で楽しむだけならまだしも、その生成AIの餌にされてしまったクリエイターの努力や苦労は、一体どうなってしまうのでしょうか。
企業側の立場に立って見ても、コストパフォーマンスを求めるなら、生成AIで生成した方が安上がりなのはわかります。でも、その背後には、食いものにされているクリエイターがいることは理解していないといけない。クリエイターを守ろうとする側も、動き出さなくてはいけないと思いました」(春山さん)
関係者間のルール・ガイドラインの制定や法律の整備を待つとしても、どれくらいの時間がかかるかわからない。仮にルールやガイドライン、法律ができたとしても、その抜け穴を通そうとする悪意のある生成AI開発者やユーザーとのいたちごっこが続く。
ならば、クリエイターを守るために立ち上がるしかない。こうして生まれたのが「Oneup」だ。
「たとえば、学習に使う作品ひとつひとつ、クリエイターにちゃんと対価を支払って集めたデータセットを使った生成AIならばいいと思います。
でも今は、無断でスクレイピング(特定のWebサイトから、分析・保存・その他の用途に使用するために情報を抽出すること)して集めたデータセットが使われているのが主流なんです。こんなの、クリエイターを舐めてるとしか言いようがない」(春山さん)
※「Oneup」では、スクレイピング行為は利用規約に違反する。サーバーに負荷をかける過度なアクセスを行い問題が発生した場合、法的措置が講じられる。
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ARKHAM
そのシャツ、海賊版だよね。
公式からはそんなグッズ出ていないんですが。
p68i
作成した画像をAI学習から守ってくださるという点に関しては非常に有難いSNSだと思っております。
ですがこの「Oneup」というSNSで、AI作品投稿を規制するなら二次創作も規制するべきではないでしょうか。
二次創作も立派な他者作品の盗用であり著作権侵害物ですから。
こちらのSNSでは是非、筋を通していただきたいです。