VRChat「ぽこピーランド」はクリエイターの夢──制作に1年を要した可能性の世界

VRChat「ぽこピーランド」はクリエイターの夢──制作に1年を要した可能性の世界
VRChat「ぽこピーランド」はクリエイターの夢──制作に1年を要した可能性の世界

「ぽこピーランド」のモニュメント(この記事の画像は開発中のものを含みます)

滋賀県発の個人勢バーチャルYouTuber(VTuber)・甲賀流忍者!ぽんぽこさんと、オシャレになりたい!ピーナッツくん。“ぽこピー”としてYouTubeでの活動を開始してから、ついに5周年を迎えた。

当初は奇を衒い、VTuberの中でも異例の実写動画やゲーム実況に依存しない独自の活動スタイルで話題を呼んだが、2023年現在、彼らが切り拓いた活動スタイルこそが、VTuberシーンの新たな王道になりつつある。

KAI-YOUでは、まだ「ぽんぽこちゃんねる」(当時のチャンネル名は「甲賀流忍者!ぽんぽこ」)の登録者が4~5万人ほどの時に取材させてもらったことがある。彼らの才能に早くに出会えたことは、記者冥利に尽きる。 そんなことを「刀ピークリスマス2022」の記録的なバズの最中に考えていた某日、急にピーナッツくんから連絡があった。

もう長い付き合いになるが、彼の方から連絡が来ることは「Clubhouseに誘ってほしいナッツ!」と言われた限りで、今回でたぶん2回目だ。

KAI-YOUさんに、ぽこピーランドに遊びにきて欲しいナッツ!

ぽこピーが、ソーシャルVRプラットフォーム・VRChatで巨大なワールドの開発を計画しているのは、ファンの間では知られた話。しかし、あまりに続報がない……! 本当に開発は進んでいるのだろうか。一体なぜ、「ぽこピーランド」という着想を得たのだろうか。

聞きたいことはたくさんあった。

先に結論を言ってしまうと「ぽこピーランド」の取材が終わった翌日、すぐにVRゴーグルを購入した。それだけ「ぽこピーランド」は画期的で、ワクワクするような世界が広がっていた!

取材執筆:わいがちゃんよねや 写真:chochi

目次

ぽこピーの世界観が細部まで詰め込まれた「ぽこピーランド」

正面エントランス。広大な世界が後ろに広がっている

VRChatを起動し、「ぽこピーランド」にジョイン。落ち着いたエントランスから、ゲートを通ることによって、一気に「ぽこピーランド」へ。

ワームホールのような没入感の高いワープ演出が一気に高揚感を掻き立てる。

早速、ピーナッツくんと合流する。

ピーナッツくんも「いや~本当にすごいですね、感動しますわ……」と感慨深い様子。「え、はじめて入るんですか?」と聞くと、毎日のように開発が進み、更新されており、ワールドに入る度に新しい発見があるという。

大迫力! 巨大な建造物も

「ぽこピーランド」の制作には、10名を越えるクリエイターが集っている。3Dクリエイターやイラストレーター、デザイナー、音楽家など、様々だ。

ぽこピーの2人と仲の良い人はもちろん、クリエイターの繋がりが新たなクリエイターを呼び込んだという。ピーナッツくん曰く「あんまり話したこともない人もいるナッツ!」という。

広大かつ、緻密で情報量の多いワールド、見どころしかない。

ワールド設計統括・ぬるもとさん「統括の自分ですら、全てを把握できているのか…!」

まず最初に話のうかがったのは、"バーチャル魔法使い”として活動するぬるもとさん。

「ぽこピーランド」の全体設計を担当し、モデリングも行っている人物だ。今回のプロジェクトを統括する監督のような立場だという。

ぬるもとさん

まずは、ぬるもとさんがおすすめする「グミコースター」へと足を運ぶ。広大な「ぽこピーランド」だが、マップ機能まで実装されていて、行きたいエリアにすぐ飛べる。

ぬるもと「着きました。この建物が、グミコースターとなっております」

ピーナッツくんいきなりメインアトラクションナッツ!

コースターに腰をおろすと、ピーナッツくんの代表曲「グミ超うめぇ」のMVの世界が眼前、いや、360度に広がる。あのサイケデリックな空間を、楽曲を聴きながら体験できる。

「グミ超うめぇ」のMVをVRアトラクションとして完全再現

VRワールドと音楽を組み合わせた新たな音楽体験の形は、ミソシタさんやキヌさんをはじめ多くのクリエイターが実践してきている。遊園地/テーマパークとの相性は抜群だ。

ぬるもと「僕はワールド全体の設計を行っているんですが、このアトラクションも主に担当させてもらったんです」

ピーナッツくん「ぬるもとさんとの出会いは、ぽんぽこさん発だったナッツね」

コースターに揺られながら、「ぽこピーランド」の開発前夜が語られる。

ピーナッツくん「Vket(=バーチャルマーケット)でぬるもとさんが遊園地みたいなものをつくっているのを発見して、それで、ぬるもとさんならもしかしたら『ぽこピーランド』の構想を形にしてくれるんじゃないかなってお声がけしたんです。というより、構想段階からぬるもとさんに頼りまくってました!」

ぬるもとさんは、VRChatの最初期のブームである2018年頃からVRChatに入り浸るようになり、次第にアバター制作も開始し、バーチャルマーケットに出展。その後、2021年にはバーチャルマーケットの開発スタッフにもなり、ワールドクリエイターとして活動するようになったという。 ぬるもと「たしか最初に『ぽこピーランド』お話をいただいたのは、2022年の1月くらいでしたよね。ぽんぽこさんとピーナッツくんが活動4周年記念の配信で発表したタイミングが、本当に着手したばかりで」

ゼロからはじまった「ぽこピーランド」の開発。具体的にVRワールドの設計というのは、何を行うのだろうか。

ぬるもと「何を空間に配置していくとか、全体の大きさとかボリューム感とかを決めたり、ユーザーの導線を考えたり。そういう3D制作の土台づくりみたいな部分が大きいかもしれません。ぽんぽこさんやピーナッツくんからいただいたオーダーとか、『こういうものをつくりたい!』というリストみたいなものも最初にいただきましたね」

ピーナッツくん「そうなんです。ぬるもとさんのアバターを観てもらえば分かる通り、めちゃくちゃポップじゃないですか。そのクリエイティブのポップさがまず、ぽこピーに通ずるというか、素敵だと思ったナッツ! 多分!」

ぬるもと「(笑)」

今回の取材、ぬるもとさんに最初にコンタクトをとったぽんぽこさんが不在だ。ピーナッツくんが彼女の声を力強く代弁してくれた。

「グミコースター」はピーナッツくんからのアイディアだったそうだ。「本当にポッと出のアイディアを形にしていただいて……」とピーナッツくんは苦笑する。

ピーナッツくん「めちゃくちゃ最初は適当というか、なんとなく遊園地みたいなワールドをつくりたいねっていう、妄想みたいな感覚だったナッツ。でもそうしたら、ぬるもとさんをはじめ、すごいクリエイターたちが次々に集結してくれて……!

VRワールドの開発は、実際の建築や都市設計のように、まずはグレー一色のミニチュアのような3Dのモックアップをつくり、規模感や建物の配置を探っていくという。それもぬるもとさんが行っている。

制作に参加したクリエイターたちは、ぽこピーだけでなく、ぬるもとさんが招聘した人もいるという。 ぬるもと「今回のプロジェクトは、もちろん本気の一方で、ファンメイド的な部分もあって。次々にいろんな人から新しいアイディアが挙がってくるんです(笑)。熱量がすごくて。みんなぽこピーの動画をめちゃくちゃ観てるし、好きっていう共通点もありますね」

「グミコースター」はその最たる例だが、ワールド全体に、ぽこピーの動画やピーナッツくんのアニメや音楽の中に入ったような没入感がある。ぬるもとさんは、このワールドをどのように楽しんでもらいたいのか。

ぬるもと「関わっているスタッフたちが本当にガチで……! ぽこピーに関する小ネタというか、『よく見つけてきたな!』というような彼らに関する意匠や仕掛けが、たくさん施されています。まずそれを楽しんだり、探してみたりしてほしいなと思いますね」

ワールド制作の統括をするぬるもとさんでも、あまりの物量・情報量・更新量があるため、「もしかしたらすべてを把握できているのか怪しい」と笑っていた。

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2件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:6658)

めちゃくちゃ良い記事でした。VR chatの環境がない状態ですがいつか必ず行きたい場所です。ほぼファンメイドという、ぽこピーのオタクが輝いていますがそうさせる魅力のあるぽんぽこさんとピーナッツくんは本当にすごいです。わくわくするような記事を書いていただきありがとうございました。

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:6656)

素晴らしい記事でした。めちゃめちゃ面白かったし期待が爆発してます!はやく行きたい!

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