著者のケヴィン・ケリーさんは、アメリカのテック雑誌『WIRED』の創刊編集長をつとめた。その先見性の高さからビジョナリー(予見者)とも呼ばれる人物だ。
現在は『NYTimes』や『Science』などに寄稿するほか、編集長として毎月50万人のユニークビジターをもつWebサイト「Cool Tools」を運営している。
本書ではそんなケヴィン・ケリーさんが5000日後に実現されうると推測する、AI(人工知能)に全てが接続したAR(拡張現実)世界「ミラーワールド」の全貌が記される。
進むAI技術、私たちはどう生きるべきか
ケヴィン・ケリーさんによると、インターネットが商用化されてから5000日後(約13年後)にソーシャルメディア(SNS)が勃興をはじめたという。そして、現在ソーシャルメディアの登場からさらに5000日が経った。今やインターネットやSNSは生活に無くてはならない存在である。
これらの例は、先端技術が世に出て約5000日経つ頃には可用化され世間に欠かせないものになっている、ということを示している。
では今から5000日後にはいったい何が起きているのだろうか。何の技術が世界を席巻しているのだろうか。
ここで著者が取り上げたのがAI(人工知能)である。近年AI技術の進歩が著しい。AIは登場から間もないが、徐々に私達の生活に浸透しはじめている。
例えば、先日猫語翻訳アプリ「ニャントーク」がSNSで話題となった。このアプリでは、猫の鳴き声の解析にAIによる学習技術が採用されている。
巨大プラットフォーム「ミラーワールド」の登場
人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイルさんが2005年に提唱した「シンギュラリティ」の概念は、AIを語る上でしばしば取り沙汰される。AIが2045年に人類の知能を超え技術的転換点を迎える、というのが「シンギュラリティ」の概念である。
本書で取り上げる世界は、「シンギュラリティ」と現在のちょうど中間に位置づけられる。著者によると5000日後の近未来世界では、ありとあらゆるものがAIと結びつき、私たちの生活の一部に溶け込んでいるという。
さらには、各国に住む100万人単位の人がバーチャルな世界で協働することが可能になる巨大プラットフォーム「ミラーワールド」が登場するという。
SNSが世界を大きく変えたように、「ミラーワールド」も世界を一変させうる概念であると推察できる。
AIによって大きく変わりゆくであろう未来情勢をいかにして生き抜くか、が本書のテーマである。
関連商品
著者:ケヴィン・ケリー(著), 大野 和基(編集), 服部 桂(翻訳)
出版社:PHP研究所
発売日:2021年10月15日
新書:216ページ
AIとの向き合い方
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書籍情報
5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる
- 価格
- 950円(税込)
- 著者
- ケヴィン・ケリー(著), 大野 和基(編集), 服部 桂(翻訳)
- 出版社
- PHP研究所
- 発売日
- 2021年10月15日
【第1章 百万人が協働する未来】
■ミラーワールドが起こす大変化
百万人が各国からバーチャルで一緒に働く世界に
SNSに続く「新たな巨大プラットフォーム」の到来
■ミラーワールドは新たな力と富を生み出す
勝者はGAFAの誰でもない
■まったく新しい働き方が到来する
いまはない新しい組織の形ができる
■仕事と遊びが融合する時代
高齢者よりも若者が失業する時代に
【第2章進化するデジタル経済の現在地】
■AI化という新たな産業革命がもたらすもの
これから五十年間は「AIの時代」が続く
退屈な仕事はAIに任せ、クリエイティブな仕事で生きられる時代に
■GAFA後の世界
二十五年以内にGAFAの代替わりが起きるだろう
「新たな石油」ビッグデータをお金に換える仕組み
【第3章すべての産業はテクノロジーで生まれ変わる】
■食の未来
クリーンミートが変える食
農場はAIとロボットが活躍する場になる
■移動の未来
自動運転車が主流になるのは二〇四〇年以降
空飛ぶモビリティが作る未来
■お金の未来
実名での取引しか不可能な、「国家による暗号通貨」ができる
NFTが変える「モノの価値」
■エネルギーの未来
今後五年で、電気自動車は爆発的に普及する
■教育の未来
AR・VR技術が教育を激変させる
自動翻訳が変える世界
【第4章アジアの世紀とテック地政学】
■アジアの世紀が到来する
ネクストiPhoneを生み出すのは中国企業
いま世界中で起きている「収斂と分岐」
■都市がますます勃興する
今世紀中に、ある産業に特化した都市のクラスターが出現する
【第5章テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる】
■変化が加速する時代に
ゲームのルール自体が変化する時代
■結局のところ、未来を作るのは楽観主義者だ
「プロトピア」を思考せよ
【第6章イノベーションと成功のジレンマ】
■偉大な起業家たちとの対話で得た結論
大企業がイノベーションを起こせない本質的な理由
イノベーションはエッジから生まれる
■思考を止めないために
AI時代には「問いを考える」ことが人の仕事になる
【あとがき――大野和基】
楽観主義者であるということ
【訳者解説――服部桂】
ケヴィン・ケリーにはなぜ未来が見えるのか?
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