SF群像劇にとどまらないアニメーションの面白さ
執筆時点で放送された第6話まででいえば、たびたび描かれているのが口下手な少女・瑞穂と、クラスメートたちを裏で操ろうとしている明星(ほし)の衝突である。瑞穂は思っていることをストレートに言葉にしてしまうことがあり、ほかの生徒たちと軋轢が生じている。そして明星は一見フレンドリーな性格であるもののその実は腹黒く、様々な事象を掌の上で操作しようと考えているのだ。この衝突は漂流以前からもあったものだが、周りに何もない孤島に転移した彼女らは、クラスメートを巻き込みながらその行き場のないストレスと欲求を露わにしていくこととなった。
これだけならばただのSF群像劇……となるのだが、それだけで終わらないのが『Sonny Boy』の面白いポイントだ。江口のデザインしたキャラクターが、独特の色彩とともにこれでもかと画面の中を動き回る。かといって中にはかなり抽象化された画もあって、その画づくりにとても目が惹かれるのだ。動くところは動く、そして動かないところは動かない。そのメリハリがとても心地よい。
昨今の深夜アニメでは珍しくOPとEDアニメーションがなく、各話のラストに主題歌がエンドロールとして流れるのも、ストーリーの合間に別の映像を流したくないという思惑かもしれない(もっとも尺の都合もあるだろうが)。
本作は難解で入り組んだストーリーと設定で構成されているが、シンプルに映像表現を眺めているだけでも心がウキウキしてしまうこと必至の作品だ。観ていて楽しいという感覚が真っ先に伝わる「アニメーション」なのである。
この物語がどこに辿り着くのかまったく予想がつかないが、今アニメで最も面白い作品の1つが『Sonny Boy』であることは疑いようもない事実だろう。
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作品情報
Sonny Boy
- 監督・脚本・原作
- 夏目真悟
- キャラクター原案
- 江口寿史
- アニメーション制作
- マッドハウス
- キャラクターデザイン
- 久貝典史
- 美術監督
- 藤野真里(スタジオPablo)
- 色彩設計
- 橋本賢
- 撮影監督
- 伏原あかね
- 編集
- 木村佳史子
- Music
- 落日飛車 (Sunset Rollercoaster) VIDEOTAPEMUSIC ザ・なつやすみバンド ミツメ Ogawa&Tokoro 空中泥棒 カネヨリマサル toe コーニッシュ
- 音響監督
- はたしょう二
- 音楽アドバイザー
- 渡辺信一郎
- 主題歌
- 銀杏BOYZ「少年少女」
関連リンク
連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
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