アニメーター・玉川真吾さんが11月20日に公開した自主制作アニメ『PUPARIA(ピューパリア)』は、本人が目標とした「どこで止めても絵として成立させる」を実現した作品だ。
「第7回新千歳空港国際アニメーション映画祭」の日本コンペディション部門にノミネートされた『PUPARIA』は、わずか3分程度の短編でありながら、見る者を没入させる力がある。
『Gレコ』で作監、玉川真吾が目指した絵としての成立
富野由悠季総監督によるアニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』に作画監督として参加していたことで知られる玉川真吾さん。どこで止めても絵として成立させる、というのが今回の目標の一つでした。
— 玉川 真吾 Shingo Tamagawa (@ShingoTamagawa) November 20, 2020
アニメは映像である前に絵だと思っているので、その強さを失いたくないと思って作りました。 pic.twitter.com/DvcLl9m3fU
自主制作アニメ『PUPARIA』は、玉川さんのツイートによれば「どこで止めても絵として成立させる」を目標の1つとしてつくられた作品。
「アニメは映像である前に絵」であり、「その強さを失いたくないと思って」つくられた映像は、一見「この絵が動くのか?」と錯覚してしまうほどの密度を有する。”PUPARIA”
— 玉川 真吾 Shingo Tamagawa (@ShingoTamagawa) November 20, 2020
Full version↓↓https://t.co/DLkVcWuXfQhttps://t.co/lztQuzxYZD pic.twitter.com/p5ZBkGnvXl
大袈裟と思う人もいるだろう。ぜひ停止した状態で、YouTubeのシークバーを動かしてみてほしい。粗さを感じる場面が皆無であることに気づき、鳥肌が立つはずだ。
幻想的な絵が連続する自主制作アニメ『PUPARIA』
玉川さんはTwitterで制作工程についても紹介しており、それによると映像の中に登場するキャラクターは1枚ごとに色鉛筆で塗って質感を出しているという。キャラの部分は一枚一枚色鉛筆で塗って質感を作っています。
— 玉川 真吾 Shingo Tamagawa (@ShingoTamagawa) November 20, 2020
でもそれだけだと手描き感が強くなりすぎてしまうのでデジタル上でいろいろ調整もしています。
あくまでこの肌の質感のキャラクターが、生きて動いている、ということが表現したかったのでそうなっていきました。 pic.twitter.com/gV5nhYm2yZ
一方で、手書き感が強くなりすぎるのを防ぐために、デジタル上での調整も行った。理由について「あくまでこの肌の質感のキャラクターが、生きて動いている、ということが表現したかった」と説明している。
スティーブ・ライヒさんの楽曲「MALLET QUARTET:1 FAST」が流れる中で、不思議な生物(?)のような存在を後ろに座り込む少女、延々に続いていきそうな通路を浮遊しながら高速で移動してくる物体、かと思えば、身体に印象的な模様のある人のような存在が、使者のようにたたずむ── 一言では言い表せない幻想的な光景が広がっている。
玉川真吾を輩出した「新人アニメーター大賞」とは?
玉川さんは過去に、NPO法人アニメーター支援機構が開催している「新人アニメーター大賞」の第1回で大賞を受賞。余談だが、このアワードはその後、数多くの実力派アニメーターを輩出している(外部リンク)。デジタル作画の知識を活かしたアクションを得意する川野達朗さんは、現在スタジオコロリドに所属し『BURN THE WITCH』では監督をつとめた。
2013年に多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業した石舘波子さんは、『ペンギン・ハイウェイ』のプロップデザインや作画監督などを担当。現在は個人作家としても活動している。
ちなみに石舘さんの大学の同期は、久野遥子さん、冠木佐和子さん、中内友紀恵さんの3人。それぞれが、さまざまなフィールドで活躍しているため、この年の“タマグラ”は当時から一部コアなアニメファン(僕の知り合いのアニメ関係者など)の注目を集めていた(と記憶している)。
そしてKAI-YOU.netでの北九州関連記事でもお馴染み、NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』の題字とオープニングアニメーションなどを担当した刈谷仁美さんも、この「新人アニメーター大賞」の大賞受賞者だ。
低賃金や厳しい労働環境を背景にしたアニメーター支援機構の活動では、定期的に寄付の募集やクラウドファンディングを実施しており、現在は新人アニメーター寮への支援を募っている(外部リンク)。
アニメーターの、すごい、仕事
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