「3つのルールで簡単作文!F**kingの正しい使い方!」や「兄貴の好きなけじめです。漢、見せて下さい。を英語にしよう」といった南部式の名に恥じない動画タイトルとは裏腹に、英語話者であれば誰もが太鼓判を押したくなるような実践的な英語教室が展開されているのが非常に印象的です。
配信しているのは、視聴者たち通称「構成員ども」から、「組長」と慕われる配信者のkson(ケイソン)さん。
「綺麗なお姉さん」を絵に描いたような顔立ちに反して、ジョージア州アトランタ出身の正真正銘のアメリカ南部育ち。彼女が自身の故郷について語る時、話の節々から硝煙の匂いが漂ってきます。 片言の日本語を話していたかと思えば、すらすらと任侠用語が飛び出るなど、謎に包まれた部分が多いksonさん。現在は日本とアメリカを往復しながらの生活を送っているという彼女が「南部式英語教室」を展開する真意に迫りました。
取材・文:Lit_Japan
※ksonさんの魅力を損なわないよう、多少の注釈と訳文を除き、原文を掲載しています
ゲームの実況動画を投稿して日本語を磨いた
──ksonさんはあるゲームがきっかけで日本語の勉強を始めたそうですね。kson そうなんです!『龍が如く』というゲームをプレイしたことがきっかけで日本の文化に興味を持ち始めました。それでゲームをプレイしているうちに英語字幕の翻訳が”weird”(ズレている)と感じるようになったんです。
なんとも言えないんですけど…暴力団の会長のことを”chairman”と訳しましたり…なんか違いませんか?
──たしかに、ある種のニュアンスが失われますよね。
kson ヤクザの「カシラ」のことをそういう風に訳すのはおかしいと思って、「これは日本語を学ばないと分からないな」という気持ちになったんです。
でも日本人の友達がいないから、私の日本語がどれだけ”improve”(上達)しているか分からなかったから、ニコニコ動画で晒すことにしました! ──なるほど。たしかに2016年頃に活動を始められた当初と比べて、日本語がかなり上達されているという印象を受けました。
日本の人は皆優しいですから、私がワケのわからない間違いがある日本語を話しても、誰も直してくれないんです。皆さん勝手に「あ〜わかる。あなたが言いたいことはコレですね」と分かってくれるんです。
だから、私は”Japanese Native”(日本語を母語とする人)と会話をしていても、日本語は上達しないと思ってるんですね。それは悪いことではないんです。日本人が優しすぎますのです! 「理解をしようとする心」が広すぎて、私が間違えても許し続けてしまいますから。
わざと間違えた日本語を教えてくる悪い友達もいましたけど(笑)。
でも、ニコニコ動画では、皆さん、ゲーム実況の動画にコメントをたくさん書いてくれました。それで、コメントで指摘されて「この日本語が違う」というのが分かるようになったんですね。 ──たしかにニコニコ動画にはコメントがリアルタイムで動画上に流れるという性質もあるので、そういったフィードバックもしやすいですよね。
kson そうです! 教科書みたいなものです。”Except those 教科書 stuff is really boring…”(ただ、本物の教科書はすごいつまらないけど…)。
「ここのココがこうですよ!」と言ってくれましたり…笑われることもありますけど、それはそれでエンターテインメントとして成立していますから。私が日本語を間違えても、許される場所をつくってくれたんです。”Japanese Class”(日本語教室)に行ったら、間違えたら怒られるでしょ?
英語に魂をぶち込む『ksonの南部式英語教室』
VRアバターを使い出した理由について「顔出しのために化粧をする暇があったら、ゲームをしていたいから」とksonさんは語るこいつは私の分身として、化粧したくない私のために働いているのですだけど、最近は愛着できました(*'▽')
— kson(組長) (@_ka_son) May 14, 2019
構成員の皆さん私がいないときの組長代行(バーチャル)よろしくおねがいしますね pic.twitter.com/o6b5PDR5ru
──ksonさんが今年の5月頃からYouTubeに投稿し始めた「南部式英語教室」の動画が人気を博しています。このシリーズを始めたきっかけは何だったんですか?
kson 最初の英語教室は『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』というゲームを実況している時の「おまけ」でした。自分が先生のキャラクターになって、お休みしている金八先生の代わりに学生どもの担任をするゲームなんです。
私が教えられるとなったら、英語かなあと思いまして。それでも私の英語はとても汚いことに後から気付きましたから、YouTubeでは「南部式英語教室」にしました!
──たしかにksonさんはジョージア州のアトランタ、まさに「アメリカ南部」の出身ですもんね。
kson ”Southern English”(米南部の英語)はとても”ghetto”(※1)な感じで汚いんです。それを最初に理解してもらう必要があるんですよね。「私の教えた英語で失敗しても責任取れませんからね! これは南部式ですから!」ということを言えば、責任を逃れられると思ったんですね。
それでもこれが本当の英語なんですよね! ”You know it, right!?”(分かりますよね!?)
*1 ghetto(ゲットー):「少数民族が居住するスラム街」の意味が転じて、「ガラの悪い」という意味合いで使われる
──同感です。南部に限らず、友達同士の会話であれば”F**k”や”S**t”などのいわゆる”Swear words(※2)”は普通に使われていますよね。だからこそ、南部式英語教室の「英語に魂をぶち込む」というキャッチフレーズは本当に言い得て妙だと思います。
*2 Swear Words(スウェア・ワーズ):「卑語」もしくは「汚い言葉の総称」の意味。映画や一部メディアを除いて、伏せ字や「ピー音」により自主規制される
kson ”It’s like a Southern Soul!”(南部の魂なんです!)
”Southern Soul”…日本にはない……その……南部は移民の人が多くいる場所ですよね。人口の半分以上がヒスパニック(※3)、中国、白人、黒人、全て人種が滅茶苦茶なところでしたから。綺麗な英語ではない人もたくさんいました。
その中でもやっぱり皆さんに共通しているのは”F**k”と”S**t”と”Ass”の魂で…それだけが通じていれば、全てが通じる。そんな世界なんですね。
*3 Hispanic(ヒスパニック):「スペイン語を話す人・スペイン系」の意味。アメリカでは主に、メキシコを含む中南米からの移民のことを指す
──なるほど。日本人は英語を喋る「勇気」が足りないと言われていますよね。そんな中で少しだけ会話の中に”F**k”や”S**t”を混ぜるだけで、一気に距離が縮まるという話はよく聞きます。
kson そうなんです!”Swear”(汚い言葉を使う)というよりも、親しいから使う言葉でありまして、「嫌いだから使う言葉」というわけではないことを知って欲しいですよね。
会話をスムーズにしたり、アクセントとして使われるものであって、フレンドリーなコミュニケーション・スキルとしての側面を知って欲しいんです。
──ksonさんたちのファン、通称・構成員たちの英語力が上がってきている手応えはありますか?
kson あります! ニコニコ動画で流れてくるコメントが英語になっている時があるんですね! 英語で感想を書いてくれましたり、英語で叩いてくることがあるんですね。それが幸せです!
”You finally understood! Thank you!”(やっと理解してくれた!ありがとう!) 日本語と英語の両方で繋がれることがすごく嬉しいんです!
努力をする過程がコンテンツになる時代
──ksonさんが日本とアメリカを往復しながら生活をする中で、以前よりも英語の需要が高まってきているという実感はありますか?kson うーん…私はいつも毎日グループ・チャットをしながら、いろんな人とゲームをしているのですけれども、日本のゲームだけでなくアメリカのゲームもやりますから、そこで英語は必要と思いますけど……それ以外はそんなに感じないですね(笑)。
──実は僕もあまり感じません。でも実際にksonさんのYouTubeチャンネルの登録者数が日に日に増えているのを見ると、密かに英語を学びたい人たちが増えているのかなとも思ったりします。
kson あー、そうかも知れませんね……でも、やっぱり今は「苦しんで何かを得るような時代」ではなくなっています。楽しみながら、ついでに英語も学べればお得、という気持ちで見に来ているのではないでしょうか。
何かをする時に辛い思いをしてやる、という時代ではないよねー。YouTubeでお金を稼いで生活する人も増えている時代ですからね。でも英語が武器になるというのはあると思いますよ。
私が良い例かも知れないです。それまで日本語を知らなくて、でも勉強しようとして、それで結果的に皆さんが私の動画を見てくれるようになったので。私が日本語を勉強しようと思わなかったら、誰も見なかったかも知れません。
他の国の言葉を学ぶ、それを努力しているところを見てもらうこともエンターテイメントになっているからね。
ksonさんは今でも勉強のために、漢字の書き取り練習を欠かさないという。動画中の日本語の質が高いのも納得だ言葉を覚えますとき、文法は体で覚えますけど、単語は暗記するしかないですから書きます。ノートを書くということはインプットしたのをアウトプットすること。アウトプットが多いと人間は覚えます。1度聞いた日本語も100回書けば覚えるのです。 pic.twitter.com/SluJqswYIr
— kson(組長) (@_ka_son) July 31, 2016
──たしかに「努力をする過程がコンテンツになる」というのは、ksonさんが仰ると非常に説得力があります。
kson だから英語ではなくてもいいと思います。中国語でも韓国語でもイタリア語でもイギリス英語でも何でもいいんです。
何かを学びました時に、その頑張っている姿をゲーム実況で見せたり、人に話したり、それだけでも何かのきっかけになります。それが仕事になったり、コミュニケーションの入り口になりましたり、恋人をつくれるかも知れませんし(笑)。
そんな色々な入り口になるきっかけを語学はつくってくれます。語学にはそういう力があります。
──貴重なお話をありがとうございます。それでは最後に構成員たちと、これからksonさんの動画を見ようと思っている人たちにメッセージをお願いします。
kson 構成員どもへ。いつも私を支えてくれて、ありがとうございます。お前らがちゃんと英語を学んでくれまして、次は日本語という美しい言語をアメリカの皆さんに教えるような動画をつくる構成員が現れることを私は願っているんですね。
日本の文化を世界に教えた方がいいです。特に日本のゲームは最高だと思っています! だから私は日本とアメリカを繋げている怪しいパイプの様な存在になりたいです。よろしくお願いしました!
南部式英会話で差をつけろ!
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1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:4173)
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