ひょうきんな表情に、やけにすらりと伸びた手足の悪魔が、まるで挨拶をするかのように発光した(?)右手を挙げている──。
どこか不気味な版画調のイラストを、最近、Xのタイムラインなどで見かけないでしょうか?
年末の足音が聞こえてくる季節に、突如2024年の終焉を告げるが如く、インターネット・ミームとして現れた謎の悪魔。
今回は「猫ミーム」ならぬ「悪魔ミーム」の元ネタをご紹介します。
「悪魔ミーム」元ネタは『地獄の辞典』に登場する悪魔
「悪魔ミーム」の元ネタは、フランスの文筆家であるコラン・ド・プランシーさんが1863年に刊行した『地獄の辞典』(第6版)の707ページに掲載されている挿絵。
フランス・ブルターニュ地方フィニステールに当時伝わっていたという悪魔のヤン=ガン=イ=タン/ヤンガンティタン(仏:Yan-gant-y-tan)を紹介したイラストです。
『地獄の辞典』は、19世紀前半にヨーロッパで流行したという会期趣味の数々が収録されており、地獄思想や悪魔、幽霊、魔術師などが挿絵付きで紹介された貴重かつ奇怪な辞典。
現在、フランス国立図書館が運営する電子図書館・Gallica(外部リンク)やGoogle ブックスで公開中。また、床鍋剛彦さんによる抄訳版が講談社より1990年6月から刊行されています。
5本の蝋燭が付いた指を高速回転させる不吉な悪魔
『地獄の辞典』によれば、「悪魔ミーム」の悪魔・ヤン=ガン=イ=タンは、フランス・フィニステール県の夜に出回る悪魔の一種とのこと。
5本の指に5本の蝋燭を付けており、繰糸(そうし)機のような速さで指を回すそうです。なるほど、だから挿絵の右手も発光していたんですね……熱くないのかな。
また、フィニステール県のあるブルターニュ地方に住んでいたケルト系民族・ブルトン人は当時、「ヤン=ガン=イ=タンとの出会いは不吉の予兆だ」と信じていたと言います。
迷信めいた話ではありますが、160年近く前に発表された本の挿絵が突如ネットミーム化したのも、何かの予兆なのかもしれません(?)。
ヤン=ガン=イ=タンのミームとしての使われ方
現在、インターネット・ミームとして使われているヤン=ガン=イ=タンは、Xを中心にネタ画像やコラージュ画像として登場。
漫画のオチとしてヤン=ガン=イ=タンが登場したり、特徴的なポーズを活かして、既存のアニメや漫画のキャラクターとハイタッチしたりする姿が確認できます。
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