連載 | #31 KAI-YOU COMIC REVIEW

【名作】2023年完結の漫画『ダンジョン飯』『ハイパーインフレーション』など12選

【名作】2023年完結の漫画『ダンジョン飯』『ハイパーインフレーション』など12選
【名作】2023年完結の漫画『ダンジョン飯』『ハイパーインフレーション』など12選

画像はすべてAmazonから

3度の飯より漫画が好き──そんな生活を長年続けております。こんにちは、KAI-YOUのゆうきです。

年の瀬ですね。2023年もたくさんのおもしろ漫画に出会えて大満足。一方で、少し寂しい気持ち……というのも、今年も多くの名作が完結してしまいました。

比較的短い連載期間を思いっきり駆け抜けた作品や、長期連載でじっくり物語を描き切った作品。今回は、様々な最後を迎えた名作をご紹介。年末年始の一気読みにおすすめです。

※年内に完結または最終巻が刊行された作品から選んでいます。

目次

九井諒子『ダンジョン飯』

TRIGGER制作のアニメ(2024年1月4日放送)への期待も高まりに高まっている『ダンジョン飯』。9月、9年半に及んだ連載の幕が閉じられました。

主人公はダンジョンの深部で妹がドラゴンに食べられ、逃げる際に荷物も失ってしまった冒険者。彼は節約のためダンジョンに潜むモンスターを食材にすると決断。仲間も嫌々ながらその決断に従い、再びダンジョンへアタック。スライムや動く鎧を食していきます。

妹を食べたドラゴンを追ってダンジョンに潜る序盤。異色のグルメコメディという風味にシリアスさを加えはじめた中盤。ダンジョンの謎を起点に二転三転する物語が描かれる終盤。どのパートもハラハラドキドキ。そして笑える。万人におすすめできる名作です。

FLIPFLOPs『ダーウィンズゲーム』

数あるデスゲーム系作品の中で珠玉の一作『ダーウィンズゲーム』は、約11年にわたる長期連載を終えました。最終30巻は2024年1月5日(金)に刊行されます。

主人公は、謎のスマホアプリ「ダーウィンズ・ゲーム」によって、突如としてデスゲームに巻き込まれた高校生。彼が何度も死線をくぐり抜ける中で頼もしい仲間と出会い、事の発端となったアプリの作成者を見つけ出すために戦う物語です。

アプリの作成者がデスゲームを開催する理由。ユーザーに特殊能力を付与する意図。そして、なぜ進化論を提唱したチャールズ・ダーウィン氏を冠する名前をゲームに付けたのか。徐々に明らかになる事実と深まる謎のバランスが良く、読み出すと止まりません。

ヤマシタトモコ『違国日記』

2016年から6年にわたって連載、この6月に完結した『違国日記』。両親と死別し1人になった中学生と、彼女を引き取った小説家。姪と叔母がおっかなびっくり築いていく絆を描いています。

ライフスタイルや価値観の変容によって、恋人や家族といった従来の関係性に依らない人間関係のあり方を模索する作品が、ますます増えている昨今。本作も名前の付けられない関係性をひとつのテーマにした名作でした。

2024年6月には、新垣結衣さん主演で実写映画も公開。なお、『ユリイカ』2023年9月号では本作の完結を記念して、作者・ヤマシタトモコさんを特集しています。併せてどうぞ。

住吉九『ハイパーインフレーション』

体から雁札を生み出す能力に目覚めた奴隷の少年が、その力を使って最愛の姉を奪っていった帝国へ喧嘩を仕掛ける『ハイパーインフレーション』。

主人公の少年を利用して商機を掴まんとする悪どい商人と、雁札の危険性を排除するべく主人公を追う帝国政府の切れ者。この三つ巴による情報戦がテンポよく描かれました。敵味方が目まぐるしく入れ替わる展開は、現実の世界経済のごとく予測不能です。

血なまぐさい場面でも良い意味でふざけた描写を用いてユーモラスさを演出したかと思えば、至極真面目な経済の話も入れ込んでくる。何でもありのごった煮感は唯一無二の味わい。キャラクターのアクの強さも魅力です。

早池峰キゼン『テンバイヤー金木くん』

転売を生業にする“小学生”が主人公、3年半かけてインモラルなお仕事ライフを描いた『テンバイヤー金木くん』。社会問題の転売をテーマにした意欲作です。

困窮する家庭に負担をかけまいと、小学生でもできる転売に乗り出した主人公。生活必需品には手を出さないなど、自分なりのルールで転売を続ける彼が、ある日バイトとして雇った人畜無害な青年に影響を受け、変わっていく様が描かれました。

転売ビジネスの実際的な例が多数登場しており、「そんなパターンもあるのか!」と勉強になる本作。転売だけでなく、古物商やインフルエンサービジネスにも触れており、めちゃくちゃためになります。

たけうちホロウ『1Fの騎士』

格ゲーとフェンシングを組み合わせた斬新なスポーツ漫画『1Fの騎士』。1FのF(フレーム)は、1秒を等間隔に60分割した時間を指す格ゲーの用語で、1Fは約0.017秒。速すぎてよくわかんないぜ。

この1Fのなかでしのぎを削る格ゲーで名を馳せた中学生のゲーマーが、高校入学を機にフェンシング部へ入部。格ゲーと同様に、極限の速さの中で間合いを制し、的確な読みと判断で勝利をもぎ取るフェンシングに挑む物語です。

勝つために戦略を練り上げる理論派の主人公、気合で押し倒すパワータイプの先輩、オールラウンダーな部長と、登場人物のキャラも立っていました。もっと彼らの熱くクールな頭脳戦が見たかった……準備中の新作も楽しみにしております!

CLAMP『カードキャプターさくら クリアカード編』

7年半の連載が12月に終わったばかりの『カードキャプターさくら クリアカード編』。CLAMPの代表作『カードキャプターさくら』の続編で、新規アニメの制作も決定しています。

主人公・さくらが町で起こる不思議な出来事の解決につとめつつ、その裏に潜む陰謀に迫る物語が描かれました。本作では童話『不思議の国のアリス』の世界観がたびたび引用されており、クライマックスで活写されたミステリアスな世界は圧巻の一言

また、さくらと恋仲にあるキャラクター・李小狼は前作で付かず離れずの関係でしたが、本作ではたびたび2人だけの世界に浸っていてめちゃくちゃかわいいです。2024年4月1日(月)に刊行される最終16巻のおまけ漫画とかで、2人のその後が見たい。

トマトスープ『ダンピアのおいしい冒険』

6月に約4年にわたる連載が完結。実在の探検家ウィリアム・ダンピア氏を主人公にした『ダンピアのおいしい冒険』。時は17世紀。英国公認の海賊船の乗り、世界中の海を巡ったダンピア氏の半生と史実を元に、未知の世界を食べて調べる海洋ロマン譚です。

ダンピアは上陸した土地の動植物を食べては記録に記す、好奇心旺盛な人物。その目と舌と鼻と耳と肌。五感をフルに活用して世界の未知を味わい尽くしていきます。

その旅には出会いと別れ、予期せぬトラブル、おいしいだけでは終わらない血なまぐさい現実もありました。特別編のスピンオフも収録された最終6巻が、2024年1月18日(木)に刊行されます。

ペトス『亜人ちゃんは語りたい』

ヴァンパイア、デュラハン、雪女、サキュバス、インキュバス……様々な性質を持ち、亜人と呼ばれる人間が社会に溶け込んだ世界の学園コメディ『亜人ちゃんは語りたい』。連載期間は8年でした。

亜人の絶対数は少なく、作中に出てくる亜人も両手で数えられるほど。その珍しさから周囲の理解も十分ではなく、サキュバスなら意図せず他人を魅了してしまう、雪女なら冷気で誰かを傷つけてしまうかもしれないと、特有の悩みを抱えています。

そんな亜人に関心のある教師が、学生や同僚の亜人の悩みを聞き、彼なりに返す言葉が非常に滋味深い。何度も読み返したくなる言葉なのです。また、SF的空想科学でロマンあるエピソードもあり、物語としての振れ幅も楽しい一作です。

米代恭『往生際の意味を知れ!』

7年前に失踪した元カノが何の前触れもなく現れて、「私の出産記録を撮ってほしい。だからあなたの精子が欲しい」と言ってくる……。そんな続きが気になりすぎる開幕から3年。この7月に完結した『往生際の意味を知れ!』。

元カノを盲目的に愛し、結婚することを夢見て7年間を過ごしていた元カレも去ることながら、一癖も二癖もあるキャラクターたちが登場。元カノと元カレの不協和音を奏でるやり直し(?)恋愛劇が描かれました。

恋愛要素だけでなくサスペンス要素も盛り盛り。元カノの狂いきった母の邪悪さは特筆。笑顔が怖い怖い。それぞれの往生際がもたらしたラストは、皆がハッピーになれたわけではないと思います。でも、この2人はこれしかないと納得する最後でした。

をのひなお『明日、私は誰かのカノジョ』

レンタル彼女、パパ活、ホストクラブなど、テーマごとに登場する主人公たちの物語を通して、現代社会の暗部を投影してきた『明日、私は誰かのカノジョ』。11月に4年半の連載が終了しました。

2022年9月からはじまった最終章は、顔に残る大きな火傷の傷跡を治す資金を稼ぐため、レンタル彼女を仕事にしている初期の主人公に再びスポットライトが当たる内容でした。テーマは毒親。

子どもを道具のように扱う、あるいは全てをコントロールしようとする親のエゴが読んでいてキツい……。子も子で「それでも親だから」と、微かな期待を抱いてしまう苦しさ。その葛藤の描写が刺さりました。

松田奈緒子『重版出来!』

編集、印刷、デザイン、取次、書店員などなど、漫画と出版に関わるあらゆる職種のキャラクターが登場。一人ひとりの誠意ある仕事を通して、1冊の漫画や書籍が生まれ、読者に届けられていることを教えてくれる『重版出来!』。

漫画家と編集者による共同制作と、紙の書籍に関わるエピソードを重点的に扱いつつ、Web漫画の成否、漫画の映像化の難しさ、編集部の刷新による漫画誌の変化など、リアルな内情が描かれてきました。

終盤にかけては、初期からタッグを組んでいた主人公の編集者と、彼女が担当する気鋭の新人作家の関係性にフィーチャー。二人三脚で作品をより良くつくり上げんとする苦闘が物語の中心です。連載期間11年。堂々の完結となったお仕事漫画の名作です。

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