「VTuber」テーマの論文が哲学誌に掲載 兎田ぺこら、葛葉ら23名を例に分析

「#VTuber学会」…5年の歴史を持つVTuber研究

実は、VTuberの概念を研究・考察をしようとする試み自体は2018年から存在する。

例えば、aqzさんが考案したTwitterのハッシュタグ「#VTuber学会」はその一例だろう(外部リンク)。

このハッシュタグは、市井のTwitterユーザーが数多く参加し「バーチャルYouTuber(VTuber)とはなにか?」を考察するタグとして2018年を中心に使用された。

文化事象を研究する批評家集団・限界研に所属するnoobieさん、ネットミーム、数学に詳しくミームを解説するWebサイト「文脈をつなぐ」を管理する木村すらいむさん、漫画研究を専門としVTuber関連分野でもライターとして活動する泉信行さん、VTuberのデータ解析やライターとしても活動しているmyrmecoleonさんなど、各分野に精通した論者も参加し議論が行われた。

こうしたムーブメントの中、ストリーマーとしても活動するふしめろさんら中心に「ふしまつ対談」が実施。「バーチャルYouTuber」という存在に対する問いを投げかける放送には、5回目のゲストとしてバーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさんことねこますさんも出演していた。
ねこますさんが出演した「ふしまつ対談」

現在でも研究の基礎となっている『ユリイカ』の特集

2018年6月には、青土社が刊行する文芸誌『ユリイカ』で特集が掲載。 文芸誌初の「バーチャルYouTuber」特集となったこの号は、現在でもVTuberの研究において基礎となっている。

今回の山野弘樹さんの論文「『バーチャルYouTuber』とは誰を指し示すのか?」も、この『ユリイカ』に強く影響を受けていることを公言している。 また、『ユリイカ』の論考の中では、美学や哲学を専門にする難波優輝さんによる先行研究「バーチャルYouTuberの三つの身体――パーソン、ペルソナ、キャラクタ」が掲載。

バーチャルYouTuberには「パーソン(中の人)」「メディアペルソナ(現れた姿)」「フィクショナルキャラクタ(アバター)」の3つの層があるとして、「三層理論」が提唱されており、山野さんの論文でも比較対象として取り上げられている。

国内外に広がる「VTuber」研究

このように、2018年から研究されているVTuber。

先日、雑誌『現代思想』の2022年9月号に掲載されたスイスの人類学者のミラことリュドミラ・ブレディキナさんによるバ美肉の研究や、国際的に権威のある学会「CHI2021」の場で発表された論文(外部リンク)をはじめ、国内外での研究も徐々に増えつつある。

今後はアカデミックの方向の動向にも注視していきたい。
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