連載 | #8 Johnny's-POP

櫻井翔「Hip Pop Boogie」をSixTONES田中樹がカバー ジャニーズラップ継承の歴史

櫻井翔「嵐の櫻井翔として、今つくる曲」

櫻井翔さんがパーソナリティをつとめていたラジオ『SHO BEAT』の最終回(2008年3月30日放送)では、「僕個人の曲とはまた別に、嵐と言う看板を持った上で、嵐の櫻井翔として、今つくる曲は、こういう曲をやりたくてつくりました」と語られた「Hip Pop Boogie」。

そのトラックメイキングを担当したのがCOUNT FORCE。ヒップホップ・バンドである韻シストのTAKUさん、Shyoudogさん、TAROW-ONEさんの別名義だ(外部リンク)。

アコースティックなドラムスとベースに、リズミカルなカッティングギター、明るく軽快なブラス、ターンテーブルのスクラッチ、コード感を生み出すキーボードとコーラスワーク。

そんなバンド・ビートに乗せ、デビューから不遇の時代をを経て国民的スターになった「嵐・櫻井翔からのメッセージ」が紡がれていく。

“パイオニア”の自負と努力から伝わる自信

“大卒のアイドルがタイトルを奪い取る/マイク持ちペン持ちタイトルを奪い取る” “これが最初のタイトなパイオニア/きっと笑うぜ最後には”──グループや自身のソロなど過去の楽曲を引用・オマージュしたパンチラインからは、自らリリックを書くアイドル・ラッパーの“パイオニア”であるという自負、そして絶えず続けてきた努力から来る自信が伝わってくる。

現在ほどヒップホップ・カルチャーが市民権を得ていなかった時代において、メジャーシーンから世間に向けて、自ら紡いだラップを届けてきた櫻井翔さん。

世界的人気となったK-POPを代表に、今やアイドルの楽曲でラップが用いられること、またグループにラップ担当がいることは当たり前になりつつあるが、櫻井翔さんはその先駆け──“パイオニア”的な存在であった。

ヒップホップ・カルチャーに根強い偏見へのカウンター

また、“こうなりゃもう… そう咲き乱れる/本業の方々顔しかめる/温室の雑草がマイク持つRAP SONG”といったフレーズなどは、当時、いや現代でも根強い、ヒップホップ・カルチャーにおいてアイドルがラップすることに対する偏見に対するカウンターでもある。

ジャニーズのアイドルという出自ゆえに正当に批評されてはこなかったが、櫻井翔さんの活動が国内のヒップホップ・カルチャーの隆盛に繋がっているといっても決して過言ではない

Netflixのドキュメンタリー『ARASHI's Diary -Voyage-』第8回「SHO's Diary」の中でも、師であるVERVALさんは、櫻井翔さんの功績をそういった視点から評価している。

長年の努力が叶うカタルシス「ヒップポップ・ドリーム」

道なき道を歩いてく
迎合せずただマイペース
いま言える いまならば言える
蒔いてた種たち咲いてく
Somebody (yeah) Everybody (yeah)
いま時代が手の中に (yeah yeah)
Pass da mic.
Pass da pen.
このmic and pen でRock the world 「Hip Pop Boogie」/櫻井翔(嵐)より

「Hip Pop Boogie」が発表された2008年は、嵐のブレイク真っ只中。嵐は、1999年にデビューしてから10年弱あまりの時間をかけて国民的スターへと成り上がった、大器晩成を見せたアイドルグループだ。

様々な辛さや痛みを味わいながら、それでも重ねてきた長年の努力がついに実を結ぶ。みにくいアヒルの子が美しい白鳥となり飛び立つ。

「ヒップホップ・ドリーム」ならぬ「ヒップポップ・ドリーム」を叶えた、その瞬間のカタルシスが「Hip Hop Boogie」からは感じられる。


(※1)Netflix『ARASHI's Diary -Voyage-』第8回「SHO's Diary」より。
(※2)TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」2008年より。
(※3)2002年6月12日発売のライブ・ビデオ『ALL or NOTHING』で発表。音源としては、後に「ALL or NOTHING Ver.1.02」が2ndアルバム『HERE WE GO!』などに収録。
(※4)ライブなどで披露。音源としては、後に「la tormenta 2004」がベストアルバム『5×5 THE BEST SELECTION OF 2002←2004』などに収録。

※記事初出時、一部表記に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

Hip Pop and you don't stop!

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Johnny's-POP

日本男性アイドルの代表的存在であるジャニーズ。 テレビ、舞台、雑誌、ラジオ、そしてインターネットと、メディアを越境して活躍する彼らもまたポップな存在だ。 彼らをポップたらしめているものは何か? その魅力を紐解く。

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