本作は、活動20周年記念のライブツアー「ARASHI Anniversary Tour 5×20」の東京ドーム公演を、監督・堤幸彦さんのもと、ライブ/フィルムカメラマンを100人超、カメラを125台集めて撮影。
嵐のライブ“そのまま”を映像化するため、日本のライブ撮影技術のすべてが詰め込まれた作品です。
生まれてこの方、櫻井翔さんに憧れ続け、"HIPなPOP"をコンセプトに掲げ、音楽/執筆活動する筆者。幸運なことに、全国公開に先立って公開された、ドルビーシネマでの上映を観に行くことができました。
そこで観たのは、“HIPなPOP STAR”櫻井翔の姿でした。
【関連記事】嵐、最後の「ワイルド アット ハート」 ラストライブで示した5人の想い
「櫻井翔のラップ」の代名詞と言えば?
デビュー曲でありTVで披露する機会も多かった「A・RA・SHI」? 1周年メモリアルソングの「感謝カンゲキ雨嵐」? スケボーキングのSHUNさん・SHUYAさんが提供したエポックメイクな楽曲「a Day in Our Life」?
嵐のラップ担当に選ばれたのは偶然だったものの、元々ヒップホップの伝説的イベント・さんぴんCAMPから影響を受けたことを公言(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」2008年より)するなど、いわゆるヒップホップヘッズだった櫻井さん。
m-flo・VERBALさんに勧められ、アルバムでは2002年発売の2ndアルバム『HERE WE GO!』から、シングル表題曲では2003年リリースの「言葉より大切なもの」から、自らリリックを書くようになりました。
以降、ほぼすべての楽曲のラップ詞を手がけ、その総数は100曲以上にも上ります。ファンであればあるほど、カップリングやアルバムに収録された名曲を挙げたくなるのではないでしょうか。
その中から、あえて1曲を選ぶとするなら「Believe」──この楽曲こそ、彼の代名詞に相応しいのではないかと筆者は考えています。
“HIPなPOP”に見るPOPへの意志
嵐ブレイク前夜の2006年、初のアジアツアーに向けてリリースされた6thアルバム『ARASHIC』。そのリード曲「COOL&SOUL」で、櫻井さんは自身/グループの音楽性を“HIPなPOP”と定義しました。五人で奏でるのは HIP HOP
じゃなく 真似し難い様な HIPなPOP right? 「COOL&SOUL」ラップ詞より(6thアルバム『ARASHIC』収録)
これは、単に「ヒップホップを取り入れたポップス」という音楽ジャンルを意味しているのでしょうか。否、それだけではなく、「自身/グループの音楽性をPOPにする」──ポップスとして認めさせる、そんな彼の意志が示されていると筆者は考えています。
櫻井さんは努力の人です。
学業と芸能の二足の草鞋を履いていた活動初期、学校では「なぜ芸能活動するのか?」、ジャニーズでは「なぜ学校に行くのか?」と、コミュニティごとに醜いアヒルの子のように揶揄されてきた櫻井さん。それでも、周りを納得させるため、必死に努力を続けてきました。
自ら「どの仕事も若干アウェイ」(『CUT』2013年7月号より)と語るように、それは音楽活動においても同じだったのでしょう。
事実、嵐のライブでヒップホップライブのようなコールアンドレスポンスを浸透させらことについて、櫻井さんが師匠・VERBALさんとの対談で語る中にも、その姿勢が垣間見えています。
まあ別に そっちが正義でも 別に何でもないんですけど
こういうノリ方があるっていうのを 知ってもらいたい かつ──
これから嵐のファンの人たちに そういう楽しみ方…
コールアンドレスポンスなんて文化も基本的には 当時なかったから 僕らのライブには
“When I say なんとか U say なんとか“っつたって 基本的には返ってこなかったから
(中略)
こんな話を今の若い子が “あの人たち なにドヤ顔で そんな話 してんだろうって” 思われたら勝ちっていうか
もう常識… 若い子たちには常識だからっていうか
“普通じゃん それ“っていうような… 思ってもらえてたら “ああ 本当に浸透したんだな“って思えるっていうか Netflix『ARASHI's Diary -Voyage-』第8回「SHO's Diary」より
櫻井翔のラップの中で最も“POP”な「Believe」
同じくVERBALさんとの対談の中、「自分で書かなかったら、(中略)ラップっぽい何かで少なくともヒップホップではない」と、ラッパーとして矜持を見せた櫻井さん。シングル表題曲に乗せ、ファンだけではなくお茶の間に向けて、音と彼自身の言葉を紡ぎ合わせてきました。活躍する畑こそヒップホップシーンとは異なるものの、国民的ラッパーのひとりと言っても過言ではないでしょう。
そういった点から見ると、「Believe」は櫻井さんのラップの中で最も“POP”な楽曲です。
「Believe」の作詞・作曲は100+さん、編曲は吉岡たくさん、振付は北村智晃さん、そしてRap詞は櫻井さん。嵐の活動10周年、ブレイク真っ只中だった2009年に、両A面シングル『Believe/曇りのち、快晴』としてリリース。勢いそのまま「オリコンCDシングル年間売上ランキング」で1位、「Billboard Japan Hot 100 Year End」でも2位を記録。
この年を象徴する楽曲の一つとして年末の歌番組でも披露。まさしく日本中で聴かれていました。松本潤さん曰く、「嵐そのものを表現するため」に選曲したという20周年記念ツアーにも「Believe」はセットリスト入りしています。
櫻井さんがピアノ伴走する「アオゾラペダル」からはじまる4thブロック──リボルバーのように立ち位置が変わるAメロの振付を彷彿とさせるカメラワークや、オーバーラップされるスローモーション演出が挟まる中、披露される櫻井さんのラップ。
そのラップパートの締め、スクリーンに映し出されたのは、櫻井さんを背中から抜いたステージ側からの景色でした。20年強の活動を通し、彼が「誰に向けてラップをしてきていたか」が描かれていました。
何より、それを力強く背中で語る“HIPなPOP STAR”の姿に、筆者は再び心奪われました。
Hip Hop and you don't stop!
この記事どう思う?
関連リンク
連載
日本男性アイドルの代表的存在であるジャニーズ。 テレビ、舞台、雑誌、ラジオ、そしてインターネットと、メディアを越境して活躍する彼らもまたポップな存在だ。 彼らをポップたらしめているものは何か? その魅力を紐解く。
1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:4924)
素晴らしいなので嵐ブレゼンドにサプライズライブにしてください。