連載 | #8 KAI-YOU編集部ネタバレ全開座談会

『タコピーの原罪』ネタバレ考察座談会 “おはなし”は孤独も救う

対話/物語の可能性「孤独でも救われる」 

みなさん最終話の「おはなしがハッピーをうむんだっピ!」で号泣しませんでした?僕は泣きました……😭。これを読んで、藤本タツキさんの『ルックバック』を読んだ衝撃を思い出しました。

テーマは一緒だよね、それは間違いない。

おはなしがハッピーをうむんだっピ!」の“おはなし”は、一方的な押し付けじゃない、“対話”という意味ももちろんあるけど──。

たぶん、”対話”と“物語”のダブルミーニングになっているんだと思う。

「“対話”がハッピーをうむ」って、友達をつくればいいってことなんだと思うんだけど、それができない人だっているわけじゃん。それこそしずかちゃんのような子には難しい。

でも“おはなし”を“物語”って意味合いで読んだら、例え孤独だったとしても救われる、一人でも救われるという風に受け取れた。“おはなし”というひらがな4文字が、まじで食らった。

タコピーがタイムリープして“物語”を何度も書き換えて、最終的にハッピーエンドを迎えたって考えると、ストレートに「おはなしがハッピーを生むんだっピ!」って台詞が腑に落ちましたね。

実際、僕も本を読むようになってから大人とも対等にやり合えるようになった経験がある。

昔は、先生とか親とか一方的に何かを言われて、明らかに間違ったことを言われたり暴力を振るわれたりしても、語彙がないから反論できなかったんだよね。その能力の無さこそが、弱者で、子どもってことだと思う。だけど、中学生くらいからいろんな本を狂ったように読み出して“物語”に触れることで、そこらへんの大人なら渡り合えるようになっていった。

『タコピーの原罪』じゃ救われないって言う人ももちろんいると思うんだけど、この“物語”の可能性はそんなもんじゃない。深い意味が込められていると思う。

結局、人間は自分が変わろうとしないと救われないですからね。

達観した物言い!

おっしゃる通りだと思います!

異論はないっピか?(笑) やっぱり「おはなしがハッピーを生むんだっピ!」ですね。じゃあ続いてのテーマは──。

ちょっと待ったあ!! ここで再び、俺の攻撃ターンに入ります。

攻撃!?

「おはなしがハッピーを生むんだっピ!」に関しては異論はないんだけど、全く別の理由で俺はこの最終回に物申したい。

今日新見さん、いつにも増してしつこ…饒舌ですね?

今日は、言わせてください……!

結局、子供が犠牲にならないといけなかったって結末だったじゃん。タコピーにだってお母さんのハッピーママがいて、明らかに子供として描かれていたから。

確かにタコピーはトンチンカンなこともするし、時には失敗するし、重大さもわからず人を殺してしまったりするわけですよ。それでも、その過ちを償って2人を救うために、なんで今度は自分の命を犠牲にしなきゃいけなかったのか、俺にはわかんなかったよ…😭。

(え、泣いてる…!) それはタコピーは物語のつくり手のようなポジションだったからじゃない?

私もそういうイメージでした。タコピーをドラえもんのような存在として捉えていたから。

そこで好みが分かれるんだと思う。それじゃタコピーは、“物語”を救済するためだけに要請されたキャラクターじゃん。イエス・キリストみたいな。

いいじゃん別に、かっこいいじゃん^^;

タコピーこそが“対話”をしない、一方的な関係を築く象徴だったので。その罪そのものだったので、消えなきゃいけなかったんです。

タコピーが地球人の文化を理解しないまま、勝手に道具を出したり押し付けたりした結果、逆にどんどん悪くなっていったよねってことですかね?第2話「タコピーの冒険」で「ぼくのせいだっピ?」って自戒していたように。

もしかしたらタコピーがいなかった方が幸せだったんじゃ…?

でも、タコピーがいなかったらまりなちゃんは母親を刺殺しちゃって、あのまま自殺していたってことだよね。

私はタコピーがいた方がよかったと思う。物語を動かすきっかけとして、ドラえもん的な存在としてね。

物語としてはわかるんです。ただ、明らかに子供として描かれていたから、タコピーに罪を押し付けて犠牲にしたことについて、俺みたいに反発が出てもしょうがないと思うけどな…。

いまいちタコピーの造形や描写に関してはよくわかってない点が多々あるし、正直抽象的な存在すぎてそこまで感情移入できないな(笑)。

登場人物たちの中で、タコピーって明らかにひとりだけデザインも絵柄も違うじゃないですか。感情移入させないようなつくりになってると思うけどな。

タコピーの命を犠牲にした最後のタイムリープだって、結局タコピーからしずかちゃんたちに対する一方的な押し付けだったわけじゃないですか。しずかちゃんも「待って」「タコピーまでいなくなったら」って止めようとしている。

一方的にやり直して、一方的な関係の築き方が終わる。だから、消えて然るべきだと僕は思いますよ。

わかるよ、物語としてはそうなるべきだよ。でも、本当にそれでいいの? 逆にそれは、“物語”の可能性を軽視してると思うよ。

ええ!

意味のわからない奇妙な存在だとしても、やっぱり読んでいると愛着が湧いてくるわけよこちとら! それだって物語の力じゃん!

もちろんタコピーを人間の子供とは同列に扱うことはできないけど、結局子供が犠牲になってると読めてしまうし、読者を引き込む力がある“物語”だからこそ「タコピーは仕方ないよね」とは割り切れないよ!

なるほどね。でも、タコピーは宇宙にハッピーを広めるために旅をしていたんだから、目的は達成できたと思うよ。しずかちゃんもまりなちゃんも幸せにできたし。だから別に犠牲ってニュアンスで読み取れなかったな。

多分それはタイトルのせいもあると思う。明らかに狙っているけど、“原罪”はキリスト教がモチーフで、人間の代わりに原罪を償ったイエス・キリストは誰なのかといえば当然タコピーでしょ。

……でも結局なんだったんだろう? タコピーが背負わなきゃいけなかった原罪って。みんな何だと思った?

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