11月14日発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)50号より、漫画家・タイザン5さんの新作『一ノ瀬家の大罪』の連載がスタートした。
タイザン5さんは、宇宙人・タコピーの存在を通じて子供たちの世界を克明に描いた『タコピーの原罪』で連載デビュー。2021年12月から2022年3月まで『少年ジャンプ+』で連載され、史上初の1日200万PVを突破した。
11月7日に新作『一ノ瀬家の大罪』が発表されると、タイトルに“原罪”を冠した前作がかなりショッキングな展開もあっただけに、『一ノ瀬家の“大罪”』はどうなってしまうのかと、その内容は大きな注目を集めていた。
そこで自分自身の記憶がないこと、また、周りにいる家族たちもまた、記憶をなくしていることが発覚する。
身分証などから自分たちを家族だと認識した「一ノ瀬家」は、記憶を取り戻そうと交流し、お互いの仲を深めていく。そうして時間が経ち、家に帰ると……というところで、1話は終了となった。
冒頭の交流のシーンでは、記憶がないながらもお互いを思いやる家族、支え合う兄妹の姿が非常に美しかった。タイザン5さんの持ち味でもある感情を120%で伝えてくれる雄弁さと、思わず感情移入せずにはいられないかわいらしさを兼ね備えた表情も相まってぐっときた。
そしてそこから現れる、タイザン5さんのもうひとつの持ち味である部屋の描写は、『ザ・ノンフィクション』のようなドキュメンタリーを見ているようで「いったいこの部屋で何があったんだ!?」とゴシップめいた好奇心を掻き立てられた。
作中で「罪」が強調されていることや、翼の部屋のシーンのあとで家族それぞれが部屋に秘密を抱えている描写があることからも、「一ノ瀬家」が何らかの問題を抱えているというのは間違いなさそうだ。
しかし、改めて読み返すと、その印象は少し違ったものになる。それは、リビングが描かれた見開きページが、かなり汚く描かれてはいるものの、“荒れている”というよりは生活感があるように見えたからだ。
見開きをよく見てみると、部屋の隅にマスクが干されていたり、除菌ティッシュや使い捨てのアイマスクが置かれていたりと、かなりの生活感がある。
壁には2人の子供が書いたと思われる習字が貼られている以上、子供たちが家の中で疎まれているとは考えにくい。プレミアム生食パンの紙袋を見ても、お土産を買ってくる程度の家族同士の交流はあったのではないだろうか。
ただし、テーブル上の一部を大量の総菜パンが占拠していることから、日常的に料理をしていたようには感じられなかった。
机の上にはほかにも、付箋が貼られた教育に関する本や中高一貫校について書かれた経済新聞が転がっている。両親はある程度教育に関心があり、その期待を受けた子供たちとともに、忙しい生活を送っていたのかもしれない。
少なくとも、『タコピーの原罪』のまりなちゃんの家のような、生活が崩壊している描写とは違った印象を受けた。総菜パンをストックしている描写があることからも、心中しようとはしていなかったのだろう。
第一印象では、その字のインパクトの強さから自分の「死にたい」という感情を吐き出したのかと思っていた。しかし「死」の書き方にかなりのバリエーションがあり、どこかパフォーマンスめいた印象を受ける。
その後のページでは「全員死ね!!」とも書かれており、翼から誰かへのメッセージのようにも見える。
暴れたときにやったのか、壁には穴が開き、適当に描いたであろううねった横線にぶら下げる形で「死」という文字を大量に書いている。
これらは長時間「死にたい・死んでほしい」と思わされるような状況にいたというより、何か大きな出来事があって、衝動的にやったことのように感じた。
冒頭にも書いたが、タイザン5さんの描く人間の表情や風景は、たった1話で読者にこれだけの想像を掻き立てさせるほどに雄弁だ。
KAI-YOU.net編集部で行われた『タコピーの原罪』の魅力を語る座談会でも触れられているが、筆者個人は、同作を読んだ際にかなりいろいろなことを考えさせられた。
第1話だけで計り知れない情報量を持っていた『一ノ瀬家の大罪』から、今後連載が続く中で何が飛び出てくるのか。これからも、繰り返し考えながら読んでいくのが楽しみだ。
タイザン5さんは、宇宙人・タコピーの存在を通じて子供たちの世界を克明に描いた『タコピーの原罪』で連載デビュー。2021年12月から2022年3月まで『少年ジャンプ+』で連載され、史上初の1日200万PVを突破した。
11月7日に新作『一ノ瀬家の大罪』が発表されると、タイトルに“原罪”を冠した前作がかなりショッキングな展開もあっただけに、『一ノ瀬家の“大罪”』はどうなってしまうのかと、その内容は大きな注目を集めていた。
【ネタばれあり】『一ノ瀬家の大罪』第1話のあらすじ
『一ノ瀬家の大罪』第1話では、何らかの事故に遭い、入院していた主人公・翼が目覚めるところから始まる。そこで自分自身の記憶がないこと、また、周りにいる家族たちもまた、記憶をなくしていることが発覚する。
身分証などから自分たちを家族だと認識した「一ノ瀬家」は、記憶を取り戻そうと交流し、お互いの仲を深めていく。そうして時間が経ち、家に帰ると……というところで、1話は終了となった。
タイザン5の持ち味が存分に発揮された1話
第1話で印象的だったシーンといえば、やはり「一ノ瀬家」が家に帰ってきて汚れたリビングを目の当たりにしたシーン、そして、翼の部屋が「死」という文字に埋め尽くされていたシーンだろう。冒頭の交流のシーンでは、記憶がないながらもお互いを思いやる家族、支え合う兄妹の姿が非常に美しかった。タイザン5さんの持ち味でもある感情を120%で伝えてくれる雄弁さと、思わず感情移入せずにはいられないかわいらしさを兼ね備えた表情も相まってぐっときた。
そしてそこから現れる、タイザン5さんのもうひとつの持ち味である部屋の描写は、『ザ・ノンフィクション』のようなドキュメンタリーを見ているようで「いったいこの部屋で何があったんだ!?」とゴシップめいた好奇心を掻き立てられた。
作中で「罪」が強調されていることや、翼の部屋のシーンのあとで家族それぞれが部屋に秘密を抱えている描写があることからも、「一ノ瀬家」が何らかの問題を抱えているというのは間違いなさそうだ。
汚れてはいるけど荒れてはいない? 漂う生活の匂い
一読者としては、最初に読んだ際には『タコピーの原罪』を経た今作ということ、さらに一家6人が車で山道から転げ落ちるという事故に遭遇していることを踏まえ、「一家心中しようとしたのではないか」など様々な描写から不安感が襲ってきた。しかし、改めて読み返すと、その印象は少し違ったものになる。それは、リビングが描かれた見開きページが、かなり汚く描かれてはいるものの、“荒れている”というよりは生活感があるように見えたからだ。
見開きをよく見てみると、部屋の隅にマスクが干されていたり、除菌ティッシュや使い捨てのアイマスクが置かれていたりと、かなりの生活感がある。
壁には2人の子供が書いたと思われる習字が貼られている以上、子供たちが家の中で疎まれているとは考えにくい。プレミアム生食パンの紙袋を見ても、お土産を買ってくる程度の家族同士の交流はあったのではないだろうか。
ただし、テーブル上の一部を大量の総菜パンが占拠していることから、日常的に料理をしていたようには感じられなかった。
机の上にはほかにも、付箋が貼られた教育に関する本や中高一貫校について書かれた経済新聞が転がっている。両親はある程度教育に関心があり、その期待を受けた子供たちとともに、忙しい生活を送っていたのかもしれない。
少なくとも、『タコピーの原罪』のまりなちゃんの家のような、生活が崩壊している描写とは違った印象を受けた。総菜パンをストックしている描写があることからも、心中しようとはしていなかったのだろう。
部屋を埋めつくす「死」は誰へ向けたもの?
そうして見返してみると、翼の部屋を埋め尽くす「死」という文字の印象も変わってきた。第一印象では、その字のインパクトの強さから自分の「死にたい」という感情を吐き出したのかと思っていた。しかし「死」の書き方にかなりのバリエーションがあり、どこかパフォーマンスめいた印象を受ける。
その後のページでは「全員死ね!!」とも書かれており、翼から誰かへのメッセージのようにも見える。
暴れたときにやったのか、壁には穴が開き、適当に描いたであろううねった横線にぶら下げる形で「死」という文字を大量に書いている。
これらは長時間「死にたい・死んでほしい」と思わされるような状況にいたというより、何か大きな出来事があって、衝動的にやったことのように感じた。
考えさせられる漫画を、考えながら読んでいく
長々と書いたが、この記事では別に『一ノ瀬家の大罪』を考察したかったわけではない。冒頭にも書いたが、タイザン5さんの描く人間の表情や風景は、たった1話で読者にこれだけの想像を掻き立てさせるほどに雄弁だ。
KAI-YOU.net編集部で行われた『タコピーの原罪』の魅力を語る座談会でも触れられているが、筆者個人は、同作を読んだ際にかなりいろいろなことを考えさせられた。
第1話だけで計り知れない情報量を持っていた『一ノ瀬家の大罪』から、今後連載が続く中で何が飛び出てくるのか。これからも、繰り返し考えながら読んでいくのが楽しみだ。
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