イノナカミュージック・ツラニミズからの別れ——歌詞の先に見えた黒い蛙の燃えていた「いのち」
「みなさーん、こんこんきーつね」の挨拶で現れたのは白上フブキさん。「フブキング」の愛称がある彼女らしく、頭上にはお馴染みの王冠が輝いていた。披露したのは初のオリジナルソング「Say!ファンファーレ!」。アップテンポのポップチューンに合わせて、間奏中も会場を盛り上げようと「ちゃんと盛り上がってますかー?」と呼びかける。“うーっ、こんこんっ!”のフレーズに、オーディエンスが思いっきりサイリウムを振って応えていた。 続くAZKiさんは、VTuberをテーマにした楽曲「画面の中の君が好き」を歌う。彼女らしい高音が綺麗に伸びたボーカルが会場に響き渡る。全身を使って表現するダンスはライブでよく映え、その姿はかつてAZKiさんが目指したアイドル像そのもの。「僕は幸せだ」という歌詞と共に見せた笑顔は脳裏に焼き付くほど素敵だった。パフォーマンス後は「AZKiでした!」の声とともに颯爽と去る。ライブ慣れしたAZKiさんだからこそできるスピード感のある演出だった。
特筆すべきは、「画面の中の君が好き」の歌詞の一部を“一緒に過ごしたこの時間が、『いのち』を燃やしたこの時間が、僕らの大切な思い出として永遠に残りますように——”とライブへ向けて改変していた点。これは今回AZKiさんにとって、所属レーベル・イノナカミュージック終了前最後のライブだったことに因んだものと思われる。
これまではレーベルを主宰するツラニミズさんがマネジメントやプロデュースを行っていたが、今後はその役割から外れ、4月からAZKiさんはホロライブに所属する。移籍してからも止まらず進み続けてほしいと思うパフォーマンスだった。
次は桃鈴ねねさんの「ねねねねねねねね!大爆走」。この楽曲は本当にBPMの移り変わりが激しい。ゆったりとしたイントロからテンポアップしたかと思えば、Bメロでワルツのようにスローダウン、またサビに向けてロックのように激しくなる。目まぐるしい楽曲の展開に負けじと、桃鈴ねねさんもアイドルステップ、ふわっとスカートを揺らすターン、そして激しいダンスを見せた。まさに、縦横無尽なパフォーマンスだった。
赤井はあと、尾丸ポルカの赤コンビが”魅せる”「脱法ロック」
10曲目はイメージカラーが赤で統一されたコンビ。赤井はあとさんと尾丸ポルカさんによるボカロP・Neruさんの「脱法ロック」だ。サビで2人は元気なハイトーンのユニゾンを披露。その強さは現地のバックバンドの音がマスキング効果でかき消されるほど。ステージバックには、原曲のMVを彷彿とさせるような、サイケデリックなリキッドアニメーションが流れる。オリジナルへのリスペクトも感じさせた。
ホロライブで最もフリーダムなメンバー「はあちゃま」こと赤井はあとさん。2人のMCに入っても終始ぴょこぴょこ飛び跳ねテンションマックス。ウェーブでも会場の波が端に到達する前に逆方向に全速力で走り出し、いつもの自由奔放ぶりを見せた。
普段の配信ではMC力の高さで評価されている尾丸ポルカさんでも、「はあちゃま」のあまりの自由奔放ぶりにはついていくのでいっぱいいっぱいのよう。2人の「繋がるホロライブ」のコールと共にMCは終了……と思いきや、赤井はあとさんの「ア゛ッ」という声が最後に入り、会場にはその日1番大きい笑いが起こった。
会場はおぎゃり、さくら舞い、荒波にもまれ、さらにカオスへ
そんなカオスなMCの後に歌うのは、お菓子の国のお姫様・姫森ルーナさん。彼女の登場に、配信のコメント欄は「んなあああああ」の弾幕の数々。会場・配信共に幼児退行。「絶対忠誠♡なのなのら!」の可愛らしい歌詞、落ち着いたメロディーで、気持ちは赤ちゃんになっていたことだろう。愛々しいステップやツンデレさをみせるセリフで会場を魅了した。続くさくらみこさんも、姫森ルーナさんと同じく「ホロベイビー」と称されるひとり。しかし今回、姫森ルーナさんとは対照的にエリートで艶やかな姿を見せた。会場のスクリーンには大きな月が上がり、桜が散る。歌うは「花月ノ夢」。キックの重低音が効く、バーチャルクラブシーンでも映えるアンセム曲だ。
さくらみこさんは、散りゆく桜を思わせる振付のダンスを披露。サビでは、生バンドのアレンジも加わり、バックの映像はVJのエフェクトのように。さくらみこさんの可愛らしさ、美しさを引き立てる演出が仕込まれていた。
背景が古地図にチェンジすると、宝鐘マリンさんが再びステージに登場。新曲「マリン出航!!」を披露した。どのようにジャンルを言い表せばいいか筆者には分かり兼ねるが、ひとつそれらしく言うのであれば「パイレーツ・メタル」ならぬ「パイレーツ・ポップ」。終盤にはマーチのようなパートがあり、不思議な曲になっている。ギターや金管楽器、ストリングス、コーラスが壮大かつ格好よく響き渡るこの曲は、今後宝鐘マリンさんを代表する曲のひとつになるだろう。
宝鐘マリンさんが大きく手を振ると、会場も合わせるように大きく手を振り、新曲に負けじと盛り上がっていた。
“団長と姫”の2人組白銀ノエル、姫森ルーナ「しんでしまうとはなさけない!」
折り返し地点となる14曲目は白銀ノエルさんと姫森ルーナさんの騎士と姫コンビ。披露したのはじーざすPさんの「しんでしまうとはなさけない!」だ。とにかく早口なこの曲。2人はしっかり追いつくように一生懸命舌を回す。また、“てゆうか私はVTuberです配信時間がデリート!デリート!”と、ホロライブらしい歌詞のアレンジも組み込まれた。
RPGをモチーフとした本楽曲。1番サビ明けの歌詞がゲームオーバーしてしまう展開なのだが、ここで2人が胸の前で手を合わせ、アーメン。振りがかわいい。
MCでは、白銀ノエルさんがまだまだ余裕そうに「いえーい楽しかった」と手を振るのに対して、姫森ルーナさんは体力の限界らしく息切れ。白銀ノエルさんから「しんでしまうとはなさけないですよ」と突っ込まれた。
ついにライブ来日 黒船来航 ホロライブEnglish/ID
ライブ後半戦は海外勢のパートからスタート。ついに、世界一のチャンネル登録者数を誇るがうる・ぐらさんが。「どうもサメです~。」の挨拶で登場。「Are you Ready?」という掛け声で歌いはじめたのは「REFLECT」。流暢な日本語を披露し、ラップパートではK-POPアイドルを思わせるトラップ・ビートにのせてダンスも。サビ前には大きく足を開き、小さな体をサメらしく誇示していた。
続いて登場したワトソン・アメリアさんは、ポップソング「ふしぎ・プルプル・プルリン・リン!」のカバーを披露。“プルプルリン”と胸の前で手を上下に降らす可愛らしい振付で、首から下げた聴診器が揺れる。全身でプリンを表現していた。間奏では英語で会場を煽っており、数あるVTuberのライブの中でも珍しい光景だと感じた。
「わあ!」の声と共に一伊那尓栖さんが登場。 落ち着いて澄み渡ったボーカルで、日本語詞の「VIOLET」を歌う。その様子は終始美しく、紫のロングヘアーは大きく揺れていた。
DAY1の海外勢として最後に登場したのは、ムーナ・ホシノヴァさん。彼女は今回「High Tide」のメタルアレンジを披露した。カメラワークも、今までのアイドル性を強調したような撮影とは少し変化。まるで欧米のロックフェスのような、ロングサイズが多いように感じた。
ムーナ・ホシノヴァさんのダンスはセクシーでキレキレ。カメラワークも相まってその風格が強調されていた。ただステージを歩くだけでなく、振りとシンクロしたしっかりとした歩き方をしていたのも、これまで相当な努力を重ねた結果なのだろう。
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