ハヤカワ文庫JAの電子書籍が、11月19日(金)から12月2日(木)までKindleストアなどでセール中です。
対象は700点強と豊富。レーベルを彩ってきた傑作、怪作、名作の数々がラインナップされています。そのうち12作品をピックアップしてみました。
購入時の参考にどうぞ。
なお、同時開催中の年に一度のブラックフライデー、Kindle本最大80%オフセールのおすすめ漫画もあわせて是非。
ポル・ポト政権下にあったカンボジア激動の現代史を背景にした上巻、そして一気に時間軸を押し進め物語を転回させる下巻の挑戦的な構成も、読者を唸らせました。
「とりあえず近年話題になったSF小説を読んでみたい」というなら筆頭の候補に挙がるでしょう。
SFのみならず様々なジャンルで描かれてきたディストピア/監視社会をテーマにしているのですが、登場人物たちが進んで自分のプライバシーを売って生活している様は、どこか今の現実世界ともリンクしています。
これからの活躍がますます期待される俊英のデビュー作という点でもおすすめです。
ある発明により死後の世界が否定された未来で、世界最後の宗教が残るミクロネシア経済連合体に訪れた文化人類学者が、人が死んだ時にたどり着く場所とされる“ニルヤの島”を追う......このあらすじだけで筆者はワクワクが止まりませんでした。
骨太かつ難解で読み応え抜群、何度も読み返したくなる作品です。
そのどれもが魅力的ですが、仏教を信仰するインディアンが仮想世界に閉じこもる未来のアメリカで救済の旅をする表題作「アメリカン・ブッダ」と、VRの世界で一生を過ごす少数民族を描いた「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」は中でも特筆すべき珠玉の作品。
ちなみに、日本SF作家クラブ会長で柴田さんの大学の先輩でもある声優・作家の池澤春菜さんによる作品(というか柴田さん本人)の解説が面白くて最高でした。Webでも公開されていたのでここだけでもぜひ(外部リンク)。
超情報化社会が成った世界で行方不明の恩師を探す男と謎の少女の出会い、そして冒険と、エンターテインメント性の高い作品で、野﨑さんの作品特有の軽快な筆致もこの頃から完成されています。
アニメ『バビロン』や『HELLO WORLD』で野﨑さんを知った方には『know』を入り口に、野﨑さんのいかんともし難い作家性を知っていただければと。
共にテロや災害に揺れる世界を舞台にしたスケールの大きい作品ですが、一貫して描くテーマを物語からズラさない筆致は圧巻の一言。
それぞれの作品世界の行く末を見届けた後に、本を閉じて呆けたようにため息をつくあの感覚をぜひ味わってほしいです。
シリーズ初の書籍として怪奇篇と恋愛篇が同時に刊行された後、中井紀夫さん、新城カズマさん、石黒達昌さんの順に作家別で連続刊行された計5冊がすべてセールの対象になっています。
アニメ『PSYCHO-PASS』や『攻殻機動隊 ARISE』への制作参加、実写映画化された『天地明察』など多くの作品の執筆など、多彩な活動で知られる冲方さんですが、活動初期の2000年代前半から書き続けている「マルドゥック」シリーズも、そろそろ終わりが見えてきたかというところ。
ハードボイルドSFの傑作として読み継がれるであろうシリーズを買い揃え、迫る年末にかけて読み耽るというのも悪くない選択だと思います。
純粋な恋愛ものからSF寄りまで、個性豊かな作家陣の色が表れています。何が百合なのかという定義は難しいですが、このテーマに合わせて各々が書いた作品群という楽しみ方もできる、一度で二度美味しいアンソロジーになっています。
重厚な物語、一読では理解しきれない難解な描写、奇想的な表現方法の実験など、とっつきづらさも否定できないイメージのあるSFというジャンルですが、「裏世界ピクニック」シリーズはキャラクターも親しみやすく、読み進めやすさがあります。
アニメ版は視聴者の幅を広げるためか少しゆるめのホラーテイスト百合SFといった具合でしたが、原作はよりシリアスな異世界サバイバルホラー百合SF(要素が多い)になっているので、アニメで知った人にも読んでほしいですね。
ポップな表紙とは裏腹に倫理観ぐっちゃぐちゃな展開もあるので、読む人を選ぶ作品なのは間違いないでしょう。しかし一読する価値は間違いなくあります。百聞は一見にしかずということでよろしくどうぞ。
対象は700点強と豊富。レーベルを彩ってきた傑作、怪作、名作の数々がラインナップされています。そのうち12作品をピックアップしてみました。
購入時の参考にどうぞ。
なお、同時開催中の年に一度のブラックフライデー、Kindle本最大80%オフセールのおすすめ漫画もあわせて是非。
日本SF大賞作品からアニメ化作品まで幅広く
『ゲームの王国』
2017年に刊行され、第38回日本SF大賞と第31回山本周五郎賞を受賞した『ゲームの王国』は、当時SF界の注目を一身に集めたといっても過言ではありません。ポル・ポト政権下にあったカンボジア激動の現代史を背景にした上巻、そして一気に時間軸を押し進め物語を転回させる下巻の挑戦的な構成も、読者を唸らせました。
「とりあえず近年話題になったSF小説を読んでみたい」というなら筆頭の候補に挙がるでしょう。
『ユートロニカのこちら側』
そんな『ゲームの王国』の作者・小川哲さんの作家デビュー作が、2015年刊行の『ユートロニカのこちら側』。第3回ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞した作品でもあります。SFのみならず様々なジャンルで描かれてきたディストピア/監視社会をテーマにしているのですが、登場人物たちが進んで自分のプライバシーを売って生活している様は、どこか今の現実世界ともリンクしています。
これからの活躍がますます期待される俊英のデビュー作という点でもおすすめです。
『ニルヤの島』
第2回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞した『ニルヤの島』は、その筆致でも作者名でも話題になった柴田勝家さんのデビュー作。ある発明により死後の世界が否定された未来で、世界最後の宗教が残るミクロネシア経済連合体に訪れた文化人類学者が、人が死んだ時にたどり着く場所とされる“ニルヤの島”を追う......このあらすじだけで筆者はワクワクが止まりませんでした。
骨太かつ難解で読み応え抜群、何度も読み返したくなる作品です。
『アメリカン・ブッダ』
そして柴田さんの作品だと外せないのがこちらの短編集『アメリカン・ブッダ』です。彼が学んでいた民俗学、そこに連なる信仰とSFをかけ合わせた物語のほか、サスペンスやホラー風味のある短編も収録されています。そのどれもが魅力的ですが、仏教を信仰するインディアンが仮想世界に閉じこもる未来のアメリカで救済の旅をする表題作「アメリカン・ブッダ」と、VRの世界で一生を過ごす少数民族を描いた「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」は中でも特筆すべき珠玉の作品。
ちなみに、日本SF作家クラブ会長で柴田さんの大学の先輩でもある声優・作家の池澤春菜さんによる作品(というか柴田さん本人)の解説が面白くて最高でした。Webでも公開されていたのでここだけでもぜひ(外部リンク)。
『know』
アニメ化された「バビロン」シリーズなどで知られる作家・野﨑まどさんの作品からは、2013年刊行の『know』をピックアップ。超情報化社会が成った世界で行方不明の恩師を探す男と謎の少女の出会い、そして冒険と、エンターテインメント性の高い作品で、野﨑さんの作品特有の軽快な筆致もこの頃から完成されています。
アニメ『バビロン』や『HELLO WORLD』で野﨑さんを知った方には『know』を入り口に、野﨑さんのいかんともし難い作家性を知っていただければと。
KAI-YOUが追ってきた「野﨑まど」という傑物
『虐殺器官』『ハーモニー』
短い活動期間のなかで鮮烈な印象を残した伊藤計劃さんの代表作『虐殺器官』『ハーモニー』は必読でしょう。共にテロや災害に揺れる世界を舞台にしたスケールの大きい作品ですが、一貫して描くテーマを物語からズラさない筆致は圧巻の一言。
それぞれの作品世界の行く末を見届けた後に、本を閉じて呆けたようにため息をつくあの感覚をぜひ味わってほしいです。
「日本SFの臨界点」シリーズ
『なめらかな世界と、その敵』の作者・伴名練さんが編者となった「日本SFの臨界点」シリーズも、購入するには今が絶好の機会でしょう。伴名さんの膨大なSF作品への造詣を凝縮した傑作短篇集です。シリーズ初の書籍として怪奇篇と恋愛篇が同時に刊行された後、中井紀夫さん、新城カズマさん、石黒達昌さんの順に作家別で連続刊行された計5冊がすべてセールの対象になっています。
「マルドゥック」シリーズ
アニメや漫画などメディアミックスも豊富な冲方丁さんの「マルドゥック」シリーズもこのセールを機にいかがでしょうか。サイバーパンクとハードな描写が合致した冲方さんの代表作です。アニメ『PSYCHO-PASS』や『攻殻機動隊 ARISE』への制作参加、実写映画化された『天地明察』など多くの作品の執筆など、多彩な活動で知られる冲方さんですが、活動初期の2000年代前半から書き続けている「マルドゥック」シリーズも、そろそろ終わりが見えてきたかというところ。
ハードボイルドSFの傑作として読み継がれるであろうシリーズを買い揃え、迫る年末にかけて読み耽るというのも悪くない選択だと思います。
『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』
近年にわかに盛り上がっていた百合SFを、一ジャンルとして確立させた感のある『SFマガジン 百合特集2018』。これに寄稿した宮澤伊織さん、森田季節さん、草野原々さん、伴名練さん、今井哲也さんの作品に、陸秋槎さんや小川一水さんの作品を加えた小説・漫画のアンソロジーです。純粋な恋愛ものからSF寄りまで、個性豊かな作家陣の色が表れています。何が百合なのかという定義は難しいですが、このテーマに合わせて各々が書いた作品群という楽しみ方もできる、一度で二度美味しいアンソロジーになっています。
「裏世界ピクニック」シリーズ
現実で語られる怪談をモチーフに、百合、怪異、異世界でのサバイバルと様々なジャンルを詰め込んだ宮澤伊織さんの「裏世界ピクニック」シリーズは、アニメ化も果たし、いま最も勢いのあるSF作品と言っても過言ではありません。重厚な物語、一読では理解しきれない難解な描写、奇想的な表現方法の実験など、とっつきづらさも否定できないイメージのあるSFというジャンルですが、「裏世界ピクニック」シリーズはキャラクターも親しみやすく、読み進めやすさがあります。
アニメ版は視聴者の幅を広げるためか少しゆるめのホラーテイスト百合SFといった具合でしたが、原作はよりシリアスな異世界サバイバルホラー百合SF(要素が多い)になっているので、アニメで知った人にも読んでほしいですね。
『最後にして最初のアイドル』
ご存じ草野原々さんの怪作短編集『最後にして最初のアイドル』を最後にご紹介......したいのですが、筆者は冒頭からずっと「なんなんじゃこれは......」と思いながら読了してしまいました。ポップな表紙とは裏腹に倫理観ぐっちゃぐちゃな展開もあるので、読む人を選ぶ作品なのは間違いないでしょう。しかし一読する価値は間違いなくあります。百聞は一見にしかずということでよろしくどうぞ。
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