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Wikipediaに載るにはどうすればいい? 知らないと危険な3つの落とし穴

Wikipediaに載るにはどうすればいい? 知らないと危険な3つの落とし穴

この画像は、https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Puzzle2_found_bw.jpg をもとにして、筆者が作成した派生作品。クリエイティブ・コモンズ 表示 2.0 一般。

POPなポイントを3行で

  • Wikipediaに載るためには?
  • 知らないと危険な3つの落とし穴
  • Wikipedia特有のルールを解説
Wikipedia(ウィキペディア)に載りたいという人は多いが、載るためには「特筆性」「プライバシー侵害のおそれ」「コントロール不能」という3つの落とし穴に気を付けなければならない。

ウィキペディアに載りたい

ウィキペディアに自分のページが欲しいという声は、SNS上では珍しくない。あるバーチャルYouTuber(VTuber)は自らの目標の一つとして挙げ、あるYouTuberは自分の記事ができた時の内容を想像して動画にまとめていた。あるアーティストは「ウィキペディアにのりたい」という曲すら発表している。
【MV】ポイズンマッチョボーイズ - ウィキペディアにのりたい

ウィキペディアにのれたら 死ぬまでに名前を残したいポイズンマッチョボーイズ『ウィキペディアにのりたい』より引用

この世に名前を残す名誉、自分が有名になるまでの一里塚、無料でできる宣伝など、ウィキペディアに載ることはとても分かりやすい目標である。

待っていては始まらない、と言わんばかりに、自ら自分のウィキペディアの記事をつくる人も多い。あるいは自分自身ではなく熱心なファンがつくることもまた、よくあるケースである。そうしてできた記事はとても多く、かつ、ほとんど全てが削除され、削除されない

この記事は、ウィキペディアに載りたいと言う人にウィキペディアの危険性を知ってもらうためにある。

穴一つ目 特筆性の問題

ウィキペディア上の記事が削除される理由は、特筆性の不足が最も多い。Wikipedia:削除依頼/ログ/先週というページを開き、「特筆性」でページ内検索をするとわかりやすい。

ウィキペディアにはWikipedia:削除依頼/ログ/今週というページがあり、直近一週間のうちに削除依頼が提出された記事が集まっている。試しにこのページで「Tuber」や「チューバー」、あるいは「歌い手」「ゆっくり」、もしくは「登録者」「特筆性」でページ内検索すると、ほぼ必ず、いつ検索しても、YouTuber・VTuberやゆっくり実況者などの削除依頼が提出され、議論されていることがわかる。

そして、YouTuberやVTuberだけでなく、芸能人や実業家もまた、「特筆性なしとして削除しました。」の一言とともに記事があらかた削除されている。まるで「ドラゴンクエスト」シリーズの敵全体の息の根を止める呪文「ザラキーマ」のようだ。

では、そのザラキーマたる「特筆性」とは何か。Wikipedia:独立記事作成の目安によると特筆性とは「百科事典の記事として言及するにふさわしい価値」である。明け透けに言えば、「紙幅を割いてまで書く価値」である。「百科事典で調べる人がいるほどの存在」「調べようと思われる存在」とまで言っても過言ではないのかもしれない。皆が調べたいと思ったことにこそ、紙幅を割くのである。独立記事作成の目安にはこうも書かれている。

ウィキペディアにおいて「特筆性」を主張するには、相応の、信頼できる、検証可能で、客観的な証拠を必要とします。これは、特筆性に関する全てのガイドライン、主張、目安において一致した要件です。少なくとも、「重要である」「名声がある」「人気がある」と言うだけでは、ウィキペディアにおける特筆性を主張するには、全く無意味ですWikipedia:独立記事作成の目安 2021年7月31日 (土) 04:14(UTC)より引用C-BY-SA 3.0 太字は筆者による

逆転裁判では証拠のみが語る。それと同じで、ウィキペディアでも証拠が重要である。では、それは何か。

ほかのメディアが紙幅を十分に割いた記事である。例えば雑誌の特集記事であったり、KAI-YOUの独占インタビューであったり、学会やジャーナルであったりする。それらがなければ、登録者数が何十万人いようと削除され、ウィキペディア上には「この人は特筆性がありません」という削除依頼だけが残る。

極端な例では(あえて具体名は出さないが)、チャンネル登録者数が100万人を超えているにもかかわらず、特筆性を認められず、ウィキペディアに記事がないYouTuberが複数存在する。その一方で宇宙物理たんbot(外部リンク)というVTuberは、チャンネル登録者数1万人前後(執筆時点)ながら、学会の基調講演や雑誌の掲載歴により特筆性を認められ、削除依頼は存続でクローズしている(外部リンク)。

穴二つ目 プライバシー侵害のおそれ

ウィキペディアに載ることにはさらなる問題点がある。プライバシーの侵害である。

たとえ自分自身の記事であっても、ウィキペディア上にある限り、基本的には誰でも編集できる。TwitterなどのSNSやYouTubeなどの各種動画サイトでは、削除申請しさえすれば比較的すぐコンテンツは削除される。一方で日本語版ウィキペディアは、プライバシー侵害や名誉棄損のおそれのある記述を削除するのに、かなり時間がかかるのである

再び、Wikipedia:削除依頼/ログ/今週を開き、今度は「緊急」や「即時」で検索してみる。通常の削除依頼は一週間以上議論をしなければ削除できないが、緊急削除と即時削除は一週間を待たずして削除できる。果たして何時間で削除されるかというと、おおよそ2~5日間である。緊急削除依頼が数か月にわたって削除されないこともある。Wikipedia:削除依頼/ログ/長期積み残し案件を見れば、一か月以上削除されていない名誉毀損・プライバシー侵害などの削除依頼がどれだけ溜まっているかがわかる。

日本語版ウィキペディアの削除が遅い理由の一つに、管理者や削除者の不足があげられる。日本語版では管理者41名削除者4名で、記事数は約120万。英語版では管理者だけで約1000名おり、記事数は約630万である(全て執筆当時)。加えて、ほかの主要な言語版と比べると、日本語版は管理者一人に対する活動者数が最も多いのである。

Wikipedia:全言語版の統計 2020年12月29日 (火) 00:00(UTC)をもとに筆者作成。

プライバシーを守るためにウィキペディアンの中には、存命人物の記事はすべて削除しておいた方が良い、と主張する人もいる。だが、存命人物の記事をすべて削除してしまうと、ノーベル賞受賞者のヘンリー・キッシンジャーさん(外部リンク)もジェームズ・ワトソンさん(外部リンク)も調べられない。それでは百科事典として調べものの役に立たなくなってしまうとして、この主張に反対する意見も根強い。

もし仮にウィキペディアにあなたの記事ができたとしても、荒らしもまたそのページを編集できる。残していったプライバシー侵害のおそれのある記述は、明日削除されるかもしれないし、一週間たっても半月待っても一か月かかっても、削除されないかもしれない。

穴三つ目 自分の記事なのにコントロールできない

ウィキペディアに自分の記事をつくる人は、2001年に同サイトがリリースされて以来数多くいた。2004年の時点ですでにWikipedia:自分自身の記事というルールが考案され始め、現在ではガイドラインの一つになっている。この文章に、こんな文言がある。

本人が執筆した自伝的記事が、後から他の人の編集を受けた結果、最初の執筆者の気に入らない内容となってしまうことが時々あります。英語版では、このような事態の結果、初版執筆者によって記事が削除依頼に出された例が、少なくとも四例あります。しかし、いくつかの事例では、初版執筆者、すなわち記事の対象となっている人物本人が削除を望んでも、コミュニティが存続に合意することがあります Wikipedia:自分自身の記事2020年8月19日 (水) 11:40(UTC)より引用 CC-BY-SA 3.0 太字は筆者による

存続に合意とはすなわち、「この記事は削除しない」とウィキペディアンが合意することである。ウィキペディア上の自分の記事が自分の意に反していなくても削除できない。あるいは上に書いたようなプライバシー侵害の心配があっても、自分で自分の記事を削除することはできない。

なぜ自分の記事を消したくても消せないのか、理由は一つ、削除の方針には「本人が望むから消す」などという方針はないからである。もし本人が望む記事を消せるのなら、企業や政治家の不祥事まで消せてしまう。(ただし実際には、不祥事は次々と除去されてしまうのが現状である。)

まとめ

ウィキペディアはTwitterなどのSNSアカウントとは違って、自分のコントロールができない外部のサイトである。そこにはウィキペディア特有のルールがあり、記事の題材となった人物に不都合なことも多い。有名税だ、と割り切って記事をつくるのもいい。しかしそれは、ウィキペディアに載ることによる宣伝効果や満足感と、果たしてつり合いが取れるだろうか。

ウィキペディアにのれたら 死ぬまでに名前を残したい ポイズンマッチョボーイズ『ウィキペディアにのりたい』より引用

残るのは名誉かもしれないし、汚名かもしれない。

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

「(ただし実際には、不祥事は次々と除去されてしまうのが現状である。)」ここは不祥事だから削除される、のではなくて、不祥事を掲載することによって訴訟に遭うことを恐れるユーザーが日本語版ウィキペディアには多く、掲載内容が除去されやすい、というのが厳密な答えではないでしょうか。英語版Wikipediaには掲載されていて、日本語版Wikipediaには掲載できないという話は北村さんの話でもあったと思います(https://lineblog.me/d_jamtuusin/archives/2457285.html)。

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

「そうしてできた記事はとても多く、かつ、ほとんど全てが削除され、削除されない。」かつ、ほとんど全てが削除され、のあとを確認した方がいいと思います。

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