新潮社から4月24日に刊行されたノンフィクション『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』の重版が決定した。
同作は、“Wikipedia三大文学”と呼ばれる記事の一つ「地方病(日本住血吸虫症)」の主要参考文献である『死の貝』の文庫版。価格は737円(税込)。
25年以上前に出版され長らく絶版だったため、文庫版の刊行が告知されるとSNSを中心に反響を獲得。売れ行きの好調を受け、発売1週間での重版決定となった。
死に至る謎の病と闘った人々の100年を記録
『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』は、死に至る謎の病と闘った人々の100年以上にわたる戦いを追ったノンフィクション。
作者はノンフィクション作家の小林照幸さん。1992年に『毒蛇』で第1回開高健賞奨励賞、1999年に『朱鷺の遺言』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。
舞台は明治時代、山梨県の甲府盆地や広島県の片山地方、福岡県と佐賀県の筑後川流域で、腹に水がたまって妊婦のように膨らみ、やがて動けなくなって死に至る「謎の病」が存在していた。
原因や治療法もわからず、現地では多くの人たちが恐怖し苦しむ中、やがて医師や住民らが立ち上がる。『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』では、原因である未知の寄生虫の撲滅に向けた取り組みが綴られている。
Wikipedia「地方病(日本住血吸虫症)」にはない情報も収録
1998年に文藝春秋社から単行本が刊行されるもその後絶版。現在はプレミア価格の中古本しか手に入らない状態が続いていた。
一方で、この「謎の病」について書かれたWikipediaの記事「地方病(日本住血吸虫症)」は、読み始めると思わず引き込まれてしまう秀逸な記事として、Wikipedia三大文学と呼ばれ親しまれている。
今回は文庫化に際し、新章を加えるなど大幅な増補を敢行。Wikipediaにはまだ書かれていない、文庫版ならではの情報も収録された。
生命科学者の仲野徹さんからは、「日本住血吸虫の研究と比較すると、医学の進歩というものがいかに素晴らしいかに刮目せざるをえない」との推薦コメントが届いている。
“Wikipedia三大文学”の原典が新潮文庫に勢揃い
前述した通り、Wikipediaにおける「地方病(日本住血吸虫症)」「八甲田雪中行軍遭難事件」「三毛別羆事件」は、俗に“Wikipedia 三大文学”と呼ばれ、SNSでたびたび話題を呼んでいる。
3つの記事のうち、「八甲田雪中行軍遭難事件」と「三毛別羆事件」の主な参考文献となった『八甲田山死の彷徨』と『羆嵐』は、新潮社から刊行され、共にベストセラーとして今も売れ続けている。
今回、Wikipediaの記事「地方病(日本住血吸虫症)」の主要参考文献に挙げられる『死の貝』の文庫版が刊行されたことで、“Wikipedia三大文学”すべての原典が新潮文庫に出揃った。
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書籍情報
『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』
- 著者
- 小林照幸
- 定価
- 737 円(税込)
- 発売日
- 2024年4月24日
- ISBN
- 978-4-10-143322-6
■書籍内容紹介
謎の病と闘った人たち
山梨県の甲府盆地や広島県の片山地方、福岡県と佐賀県の筑後川流域では、腹に水がたまって妊婦のよ うに膨らみ、やがて動けなくなって死に至る「謎の病」が存在していました。原因や治療法もわからず、 現地では多くの人たちが恐怖し、そして苦しんできました。
やがて、この病に立ち向かうため、医師や住民ら、多くの人たちが奮闘を始めます。そして原因が未知の寄生虫であることがわかり、じつに百年以上の時間をかけ、撲滅へ向けた取り組みが続けられていきます。本書は謎の病との闘いを追った圧巻のノンフィクションで、さながら「プロジェクトX」のような内容です。
なお、Wikipedia の「地方病(日本住血吸虫症)」では本書が主要参考文献として挙げられており、その記述の多くが本書に由来していますが、今回の文庫化に際し、新章を加えるなど大幅な増補をしています。Wikipediaにはまだ書かれていない、本書ならではの情報も満載です。
■著者紹介:小林照幸(こばやしてるゆき)
1968(昭和43)年、長野県生れ。ノンフィクション作家。1992(平成4)年に『毒蛇(どくへび)』で第1回開高健賞奨励賞、1999 年に『朱鷺(トキ)の遺言』で第30 回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。 信州大学卒。明治薬科大学非常勤講師。著書に『パンデミック 感染爆発から生き残るために』『大相撲 仕度部屋 床山の見た横綱たち』『熟年性革命報告』『ひめゆり 沖縄からのメッセージ』『全盲の弁護士 竹下義樹』『車いす犬ラッキー 捨てられた命と生きる』など多数。
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