Wikipediaにはなぜネタバレが載っているのか?『市民ケーン』を例に解説

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Wikipediaにはなぜネタバレが載っているのか?『市民ケーン』を例に解説
Wikipediaにはなぜネタバレが載っているのか?『市民ケーン』を例に解説

画像はhttps://commons.wikimedia.org/wiki/File:Puzzle.jpg(パブリック・ドメイン)をもとに筆者が制作したもの

POPなポイントを3行で

  • Wikipediaにはなぜネタバレが載っているのか?
  • ネタバレに配慮しない”Wikipediaの使命”
  • 百科事典としてのWikipedia
Wikipedia(ウィキペディア)にはネタバレが載っている。なぜならウィキペディアは”百科事典”だからだ。

調べものの役に立つために、あるいは作品が与えた影響や作品の特筆性を説明するために、必要な情報が掲載されていなければならない。

しかし、ネタバレを書いていいからと言って、ただのネタバレにしかならないような細部のあらすじを記すべきではないだろう。ウィキペディアを編集する際は、本当にその作品の説明に必要なことは何かを考えなければならない。

ウィキペディアにはネタバレが載っている

ウィキペディアでネタバレを食らった人は多い。今から見ようとしている映画やアニメのウィキペディアでネタバレを食らった経験は誰にでもあるはずだ。

今の時代、ネタバレに対する配慮はどのサイトでも行き届いている。何を隠そうウィキペディアにも、かつてネタバレを隠すための機能があった。

しかし、議論の末にネタバレを隠す機能は廃止されてしまった。今やウィキペディアだけがネタバレに一切配慮していない。それはなぜか?

それには”ウィキペディアの使命”が深く関係している。

この記事では、『市民ケーン』という映画を題材にして、なぜウィキペディアにネタバレが載っているのか解説する。

ネタバレは作品を台無しにする

市民ケーンはオーソン・ウェルズの監督デビュー作。ウェルズはプロデュース・主演・共同脚本も務めた。1941年公開の作品で、現在ではパブリックドメイン。

『市民ケーン』は、アメリカで映画ランキングをつくればいつだって上位にランクインする、押しも押されもせぬ名作である。ネタバレをなるべくなくしたあらすじは以下の通り。

富、名声、権力、すべてを手に入れた男、新聞王チャールズ・フォスター・ケーン。彼の死に際に放った一言は、人々を困惑させた。すなわち「Rosebud(バラのつぼみ)」のたった一言である。ケーンという男の生涯を纏めるよう上司に命じられたトンプソンは、ケーンに近しかった5人の人物を順に訪ね、ケーンの人生を紐解いていく。39社ものマスメディアを手中に収めたケーンの人生とは。そして「Rosebud」の正体とは何か。『市民ケーン』あらすじ

無論、この映画で最も重大なネタバレは「Rosebud」の正体である。スヌーピーでおなじみの『ピーナッツ』でも、市民ケーン初見のライナスが姉・ルーシーから「Rosebud」の正体のネタバレを食らって絶叫する話がある。

下の弟・リランも「Rosebud」の正体のネタバレを食らいそうになるが、すんでのところでライナスが阻止する。「映画全てを台無しにする気か!」と言いながら。

そしてウィキペディアには「Rosebud」の正体がはっきりと書かれている。なぜ、映画全てを台無しにするネタバレすら明記してあるのだろうか。

百科事典としてのウィキペディア

この理由は、ウィキペディア内の「Wikipedia:ウィキペディアは何ではないか」というページに記されている。

その作品の現実世界における位置づけ(制作の経緯、後世への影響、批評家の反応、出典を明示した文学的分析など)とともに、作品のあらすじ、登場人物、設定について適度に簡潔な解説が記述されるべきです。

ウィキペディアはネットワーク上の百科事典であり、また、それを実現するために、互いに尊重しあう精神の下で高品質の百科事典を作成しようとする人々のオンラインコミュニティです。Wikipedia:ウィキペディアは何ではないか『ウィキペディア日本語版』2021年11月20日 (土) 03:54(UTC)の版よりCC-BY-SA 3.0


前述の通り、ウィキペディアは百科事典で、調べものの役に立たねばならない。

「Rosebud」は重篤なネタバレである。しかしだからこそ、「Rosebud」抜きで『市民ケーン』を説明することはできないのだ。

例えばストーリテーリングの技術に触れるには、「Rosebud」の正体に触れざるを得ない。

もし、その正体に触れずにあらすじを書くとすれば、「冒頭でケーンの人生を短く纏め、観客はケーンの生涯について大づかみながらも全て理解する。だが『Rosebud』が何を意味するのかはいまだ不明なので、観客はさらなる視聴を促され……」などと書かねばならないからだ。

もし百科事典の記事の中でトリックや犯人などの情報が伏せられていたら、事典の読者はその作品について具体的にどのような点で画期性があるのか何もわからず、したがってその作品に付されている内外の論評を理解することもできないし、その作品の歴史的な重要性を十分に理解することもできないでしょう。 Wikipedia:あらすじの書き方『ウィキペディア日本語版』2021年8月31日 (火) 01:51(UTC)の版よりCC-BY-SA 3.0

「Rosebud」の正体はこの作品を語る上で特筆すべき事項だ。そして、それを説明するのが百科事典として存在意義なのであり、”ウィキペディアの使命”なのだ。

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2件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:6170)

Rosebudの正体は載ってないですよ。もちろんソリに書かれた文字だというのは書かれていますけどね。重要なのはそこじゃないです。それが何を象徴していてなぜその言葉を言ったのかという謎の部分には触れてないです。Rosebudは女性器のことであるとか、母のことであるとか、彼女のことであるとか、いろんな説があります。ただ幼少期のことを思い出してソリに書かれた言葉を言ったという説もありますね。

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:5044)

冒頭部に掲載している『アクロイド殺し』ではなくこちらでしたか