Wikipediaにはなぜネタバレが載っているのか？『市民ケーン』を例に解説

何がネタバレにあたるのか

SNS上で「ウィキペディア　ネタバレ」と検索すると、いろいろなネタバレを食らった人々がいるのがわかる。

「声優を調べるだけのつもりが、物語の舞台が〇〇であるというネタバレを食らった」
「放送日時を調べようとして、前作の登場人物が出てくるというネタバレを食らった」
「どのキャラがが死ぬのか調べようとして、実は同一人物というネタバレを食らった」
「あらすじを見るだけのつもりが、完結せず劇場版へ続くというネタバレを食らった」

何がネタバレにあたるのか、は人によって全く違う。もちろん『市民ケーン』では「Rosebud」の正体が最大のネタバレである。しかしそれ以外にも事前に知ると楽しみが減る情報は多数ある。

『市民ケーン』の作中で、ニュース映画の記者・トンプソンは「Rosebud」についてこう述べている。

I guess Rosebud is just a piece in a jigsaw puzzle, a missing piece.（筆者訳：おそらく、「Rosebud」はジグソーパズルの1ピースに過ぎないんだろう、失くなった1ピースに。）

作品全体にとって「Rosebud」はほんの1ピースに過ぎない。他にも人によってはネタバレにあたる情報は数多くあるのである。

Wikipedia:あらすじの書き方にはこうある。

ネタバレを書いてよいからといって、物語の流れや作品の重要性となんら関わりのない、ただのネタバレにしかならないような瑣末な細部をあらすじに記すべきではありません。 Wikipedia:あらすじの書き方『ウィキペディア日本語版』2021年8月31日 (火) 01:51(UTC)の版よりCC-BY-SA 3.0

あなたの好きな作品（アニメ・漫画・ゲーム）を、人物を、ウィキペディアで調べてみたことはあるだろうか。その作品を知る上で必要な情報は何だろうか。

人気のある作品ほど、あるいは長期にわたって続いている作品ほど、圧倒的な情報量で書かれている記事が多い傾向がある。

自分にとっては、作品のすばらしさを伝えるために必要な情報かもしれない。しかし、他人にとってそれは知りたくなかったネタバレかもしれない。

何がネタバレなのかは人によって違う。作品の魅力を何に感じるかも人によって違う。では何を書くべきなのか。何を書かないべきなのか。

何を書くべきなのか。何を書かないべきなのか。

再びWikipedia:あらすじの書き方から引用する。

細部まで書かれた（しばしば非常に長い）あらすじは、多くの場合執筆者が自分の作品体験をそのまま再現しようとすることによって書かれます。

しかし「基本的な考え方」にも示したように、あらすじで必要なのは作品の魅力を伝えることではなく、作品の説明を行うことなのです。 Wikipedia:あらすじの書き方『ウィキペディア日本語版』2021年8月31日 (火) 01:51(UTC)の版よりCC-BY-SA 3.0

『市民ケーン』という映画の説明に求められるのは、長回し、窓の外までピンボケしないパンフォーカス、床に穴をあけてまでの極端なローアングル、それらから語られる、のちの映画へ与えた影響である。ケーンのモデルとなった人物と、その闘争である。ストーリテーリングの妙である。そしてそれを語る上で避けては通れない、「Rosebud」の正体である。

ウィキペディアに求められることは、調べものの役に立つこと、ただそれだけである。作品の良さを伝える必要はない。各種ランキングや興行収入、発行部数や円盤の売れ行きでよい。人物やキャラクターの非常に細かいエピソードはいらない。欲しいのは代表的なエピソードからわかる人物評や性格である。

あなたの好きな作品を、人物を、ウィキペディアで調べてみよう。知らない人が調べるときに、必要なことはなにか、考えてみよう。