今、作詞/作曲以外のほぼすべてを生成AIで制作したMVが注目を集めている。
それが影ぼうさんの楽曲「開拓者 / Pioneer」。
本動画は、2025年12月28日に影ぼうさんのYouTubeチャンネルで公開。12月18日に開設された同チャンネルの初の横型動画ながら、公開から約2週間で80万回以上再生されている。
生成AIならではの癖を活かした表現、その一方でアルゴリズムに支配されつつ現代社会への皮肉を帯びた歌詞の内容が急上昇の理由のようだ。
生成AI特有の不気味さを逆手に取った影ぼう「開拓者」のMV
「開拓者 / Pioneer」MVの大きな特徴は、作詞/作曲を影ぼうさん本人が手がけつつ、制作の大部分を生成AIが担っているという点だ。
クレジットによれば、編曲は一部に影ぼうさんの手が加えられているとされるものの音楽生成AI・Suno AIがメインで担当。歌唱はSuno AIによるものだ。
MV全体は生成AIによるアニメーションを基調とした構成になっている。
楽曲「開拓者 / Pioneer」の一場面/画像はYouTubeより
AIによって生成された画像/イラストの特徴として、「どこに注目してほしいのか」というつくり手の意図が不在のまま、画面全体に均質な描き込みやライティングが施されがちな点が挙げられる。
アニメーションにおいても、個々の動きに強弱をつけるのではなく画面全体が一斉に動く、作画に費やせる手間暇のコスト感覚を無視したような表現が出力されやすい。
本楽曲のMVでは、そういった生成AIの癖を表現として昇華。
「開拓者 / Pioneer」でもコスト感覚を度外視した表現が随所に/画像はYouTubeより
浮世絵や日本画を参照元としたような和風のビジュアルが生成AI特有のヌメっとしたアニメーションで動く──その違和感や不気味さが前面に押し出されている。
AIによる生成物の特徴を逆手に取った表現は、近年再評価が進むアナログホラー的な感覚とも接続し、強い印象を残す。
生成AIやデジタル社会への風刺を含んだ歌詞も注目
影ぼうさんが作詞した歌詞もまた、生成AIそのものやデジタル社会への風刺を含んだ内容となっている。
冒頭では威勢のいい掛け声とともに、単純作業の反復や感情の消耗についてを描写。後半に向かうにつれ、混沌としたデジタル社会の中で<開拓者>として道を切り拓こうとする姿勢が強調されていく。
そして、最後は<新しい時代拝ませたるわ>という言葉で締めくくられる。
現代社会を風刺した歌詞が現れる「開拓者 / Pioneer」/画像はYouTubeより
生成AIの台頭によってコンテンツが氾濫する現状を、魑魅魍魎がうごめく世界になぞらえているようにも読み取れる構成だ。
実験的な制作手法だけでなく、シンプルに楽曲やMVとしての完成度も高いことが、多くのリスナーを惹きつけた理由のひとつと言えそうだ。
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