世界文学を代表する作家のジェイムズ・ジョイスさんが最後に遺した作品『フィネガンズ・ウェイク』が、電子書籍化して9月27日(金)より発売開始となった。
『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』が6930円(税込)、『フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ』が5390円(税込)となる。
原典の発表から100年、日本語での全訳完結から30年を記念して、3月に復刊を発表。8月26日に満を持して河出書房新社から復刊を果たした『フィネガンズ・ウェイク』が、ついに電子書籍として楽しめるようになった。
ジェイムズ・ジョイスによる圧倒的難解小説『フィネガンズ・ウェイク』 日本では柳瀬尚紀が完訳
『フィネガンズ・ウェイク』は、アイルランドの作家で、20世紀の世界文学を代表する作家の一人、ジェイムズ・ジョイスさんが手がけた代表作の一つ。執筆開始から約17年を経た1939年5月に、ロンドンとニューヨークで刊行された。
他のジョイス作品と同様、アイルランドの首都・ダブリンを舞台に、酒場経営者のハンフリー・チンプドン・イアウィッカーの一家を中心に展開する。
本作の特徴は、基本は英語による小説ながらフランス語、ドイツ語からゲール語、日本語まで──60種類を超える言語が散在する点。
独特の言語表現と語法も随所に見られ、聖書、神話伝説、過去の文学作品といった要素が縦横に入り交じる独自の文体“ジョイス語”は、あまりに難解。その難解さと奇天烈さから、“文学の極北”とも評されている。
そんな迷宮的奇書の訳をつとめたのが柳瀬尚紀さんだ。“文学の極北”と20年以上向き合い、漢字・ひらがな・カタカナ・ルビという日本語表現を駆使。意味と同時に音とリズムを重視した日本語独自の訳を見事に完成。
1991年9月に『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』、1993年10月『フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ』が刊行された。
『百年の孤独』をはじめ、海外文学作品が盛り上がった2024年の夏
そんな『フィネガンズ・ウェイク』が2024年8月に奇跡の復刊を果たしたことは、海外文学ファンを中心に大きな話題となった。
SNS上には「一行読むのに10分」「翻訳自体が作品」「秋の夜長に再挑戦」といった声が多数投稿されている。
さらに、全国の書店では限定美麗ケース入り特別セット(定価1万1000円)の完売店が続出。刊行直後から出版社の在庫が払底するほどの反響を呼んだ。
なお、同年6月には、ガブリエル・ガルシア=マルケスさんによるラテンアメリカ文学の傑作『百年の孤独』が新潮社から文庫化。
こちらも難解かつ長大な作品でありながら、刊行前の重版決定や刊行後の大規模重版でも注目を集めた。『フィネガンズ・ウェイク』と共に、今夏に海外文学作品が大きな盛り上がりを見せるきっかけをつくった。
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