連載 | #1 いただきます、インターネット

いただきます、インターネット Vol.1 「レポ」がつくるファンとステージの距離

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ミュージカル「テニスの王子様」の場合

最後に、漫画を原作とした舞台作品、俗に「2.5次元舞台」と呼ばれるものの1つとして「テニスの王子様」が原作のミュージカル、“テニミュ”を見たいと思います。10周年おめでとうございます!
ベンチの存在
わかりやすい部分だと、まずはアドリブや「日替わり」の1シーン。コントのような短い小芝居パートのかけあいは当然レポされます。それ以外にも、観る人の視点によって変わってくる箇所もあります。

テニスの団体戦なので、試合の最中チームメイトはベンチで観戦しているのですが、この「ベンチワーク」のレポがとっても楽しい! どの位置に座ってるとか、誰と誰かこんな風にじゃれてたとか、ここで何か耳打ちして笑ってたとか、話の本筋から一歩引いた部分の、演技と素のあいだのような瞬間を見られます。リピーターのみなさんはかなり細かいネタまで拾ったり比較したりしていてすごいです。

初見の時はステージの中心(というか、テニスコート)に視点を集中していればそれで十分。好きな場所を好きなように見られるの、いいですよね。
中心にある原作
宝塚も「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」などの再演ものは、違うキャストによる過去の同じ公演と比較されることは多いですが、テニミュの場合はファンと役者の真ん中に、すべての基盤として「原作」が強固にあるのがおもしろいなと思います。

もちろんこれまで演じてきた他の役者の演技と比較されることもありますが、まずは、ファンのみなさんそれぞれの脳内で描いていたイメージと重ねられることが避けられません。このシーンのこのセリフにどんな感情を込めるか、仲間との距離感をどう表現するか──

漫画で描かれていない部分は、妄想の余地は、役作りの種は、いろんなところにあるわけです。原作を解釈するというプロセスが、ファンにも役者にも均等にあるので、お互いにそこを中心として見つめている感覚があります。演技によってこっちのキャラへの印象が変わったり。
感想や解釈が多め
なので、事実やアクションを示す「レポ」以上に、個人の感想や解釈を述べるツイートが比較的多い気がします。

具体的にシーンが指定されていれば、なるほど次観るときにそこちゃんと見ておこう、ってなりますし、そういう風に捉えることもできるのか! と発見になったりします。舞台を踏まえて、キャラクターや世界観について考えを深めるイメージです。これは2次元コンテンツを出発点としているからこそかも、と思います。

最後に

さてさて、とても長くなってしまいましたが、わたしがそれぞれの「レポ」文化が大好きなのは、同じ時間に同じものを同じ空間で見ていても、違う世界が見えてることがはっきりわかるところです。

どんなに隅っこにいても後ろの方でも、“自担”や“推し”や“贔屓”(それぞれのジャンルで一番好きな人を指す用語)がファンにとっては瞳の中のセンターで、ステージのどこを見てたって自由なんだ、って心から思います。あなたとわたしが同じようにインターネットを使っていても見てる世界は全然違うように。

この文章にいくつか入れた実際のレポ、わからない単語たくさんありますよね? 少し中に入ってファンの人と一緒に楽しむと、この外国語のような魔法の言葉のような愛の叫びが少しずつ理解できるようになってきます、その瞬間が何度繰り返しても本当に幸せです。まだまだ自分の知らない楽しいことがたくさんあるんだ、って世界が輝きます。

きっと今週末もわたしのTLはいろんな現場のいろんな「レポ」であふれると思います。新しい呪文だってまだまだ会得したい。家から一歩も出ないでこんなに楽しいなんてインターネット最高ですね。今日もおいしくいただきます。
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いただきます、インターネット

インターネットとアイドルが大好きな女子ブロガー・ライター「もぐもぐ」が、日夜インターネットを舞台に巻き起こるディープな「熱狂の世界」を紹介していく連載です!

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もぐもぐ

ブロガー/ライター

1989年生まれ、東京都出身。ブログ「インターネットもぐもぐ」を中心に、ネット界隈で盛り上がっている話題から、普段の何気ない日常まで、独自の感性と視点からあらゆる物事を書き連ねる女子ブロガー/ライター。

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