連載 | #1 いただきます、インターネット

いただきます、インターネット Vol.1 「レポ」がつくるファンとステージの距離

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AKB48の場合

人数が多い、テレビ露出が多い、数万人規模の大箱コンサートが多い、などの共通点のあるAKB48はどうでしょうか。
レポというより「実況」
スピードが速いという面では似ていますが、「レポ」というよりも「実況」です。よりリアルタイムに、まずは事実を。

コンサートでは、客席でスマホ片手に逐一セットリストや歌唱メンバーをツイートしている人が一定数います。サプライズの人事異動や卒業発表なんかもコンサートの最後に発表されることが多いですが、目の前でしゃべってるものを即座にインターネットに流してくれます。

例えばジャニーズだとこれはほとんどありえない、「マナー違反」です。ジャニコンではメモを走らせている「メモ魔」がかなり多いですが、AKBの場合はスマホの方が多いくらいかもしれません。客席を見回して目立つほどではないですが。

AKBグループはメンバーが多いので、同じ曲でもメンバーや立ち位置がその時々で変わります。そして誰が何を歌ったかはファンにとっては超重要事項。好きな子がいい位置で歌っていたり、ほんの数人のユニット曲に選抜されてたりすると嬉しいのです。

なので、目の前で起こってる正確な事実をいち早く共有することがとっても大事な情報になります。ここでは先のようなそれぞれの視線で切り取る、という感覚は薄めです。
公式自ら写真付き、リアルタイム

なんとファンだけでなくスタッフ自ら公式も実況します。しかもこちらは写真付きで! 主にGoogle+で、コンサートの様子がリアルタイムで報告されていきます。「ネタバレ禁止」とはまったく対極ですね。

流れてくる文字や写真を追いながら、今日の衣装かわいい、センター大抜擢のこのちっちゃい子は誰なの!、などなど、遠くにいてもPCやスマホの中でTwitterと連動しながら楽しめます。コンサートが箱の中で閉じていない感覚が強いのは、このおかげかもしれません。

えー出しちゃうの? というのが常識的な感覚だと思いますが、こうやってインターネットを介して一瞬で共有財産になるのはおもしろいです。どれだけ写真が与えられても、生で見たいし、Blu-rayになったら買うんですよね。何を見に、感じに“現場”に行くのかなあと考えさせられます。
「今」の積み重ね
ファンではないみなさんにとっては、紅白や夏冬の音楽特番でズラリと並んで歌うテレビのイメージが強いかもしれませんが、AKBグループのコアは劇場公演です。

秋葉原、栄、難波、博多、全国4箇所にある200~300人程度の収容人数の小さな劇場では、ほぼ毎日2時間程度の公演が開催されていて、平日も休日もすべてネットで生中継されています。

そしてこれはコンサートと違ってセットリストが完全固定。ライブというより、パッケージされた流れの決まったショーなのです。

ここでも「実況」がポピュラーな文化。MCの内容はもちろん日々変わりますし、衣装トラブル、フォーメーションのミスなどのハプニングもすべてその日だけのこと。曲順含む流れは決まっていてもいくらでも見るものがあります。

そして同じ曲を繰り返し繰り返しパフォーマンスするからこそ、ダンスや表情がどんどん変わっていくことがわかります。ライブ映像としてまとめられるものとは違う、日々積み重ねていく映像のおもしろさがあります。

ブログやGoogle+、人によってはTwitterなど、本人からの発信量や頻度が多いこともあり、前述のジャニーズのファンと比べると、常に「今日」「今」の彼女たちを追いかけ続けている感じがあります。例えば、コンサートの感想をブログにまとめて振り返るファンは比較的少ない印象です。

宝塚歌劇の場合

セリフも話の筋も立ち位置も決まっていて、ライブやコンサートよりもハプニング性が少なそうな舞台でも「レポ」はあります。

続けて、今年で100周年を迎えた宝塚歌劇ではどうでしょう。
アドリブ上等
演目にもよりますが、アドリブパートがあるものだと、当然そこは格好の「レポ」ポイントになります。演じてる役に沿いつつ、実際の先輩・後輩関係や素の表情が出たりして、にやにやしたり。

その日に来ている有名人や関係者のお客様にちなんだネタを披露することもあります。ヅカヲタとして知られるAKB48・渡辺麻友さんが、花組「オーシャンズ11」を観に来ていた時は、主役の蘭寿とむさんが「頑張りまゆゆ♡」を披露する一幕もあったようです。

約3カ月に渡り同じ演目を何度も繰り返して演じ、ファンも繰り返して観るからこその発見が目立つのも特徴かもしれません。ここの演出がこう変わってた、演技をこう変えてた、などなど公演自体の変化を記録するようなレポも多い印象です。
「出待ち」の記録は映像で
舞台から離れた場所としては、生徒さんの出入りを劇場前で待つ「入り待ち・出待ち」、ファンの集いの「お茶会」もレポの対象です。

舞台化粧を落として私服に身を包み、颯爽と歩くみなさんはステージの上とは少し雰囲気が違って、なんだかドキドキします。劇場前で集まるファンのみなさんから手紙を受け取ったり、立ち止まって少しお話したりするのですが、千秋楽やお誕生日は特別盛り上がります。以下の動画のように、ファンのみなさんが劇中歌の替え歌を歌ったり。
宝塚歌劇100周年☆星組「眠らない男ナポレオン」柚希礼音千秋楽(2月3日)
出待ち・入り待ちは文章だけでなく映像でも記録されるのもいいところ。アップされてる動画を見て回るの、わたしは大好きです。想像よりずっと距離が近いし、ファンのみなさんもご本人も楽しそう。

「出待ち」、禁止されているジャンルも多いですし、過激なファンが集いそうな危なさすら感じる言葉ですが、宝塚のように一定の制限と統制の中で、お互いに信頼しあって節度を持ってやるとこんなに幸せで貴重な機会になるんだなぁと思います。

お茶会、つまり生徒さんごとのファンイベントでは、稽古や役作りの裏話、他の生徒さんとのあれこれなんかが話されているようです(今年こそ一番好きな娘役さんのお茶会へ行きたい……!)。ここでの発言をまとめたものも毎週末のようにTwitterに流れてきますが、先ほどの話のように読んでるだけで気になってきたり、いいキャラだな~と印象に残る人が何人もいます。
ステージの上と下のギャップ
宝塚のレポ文化をアイドルのそれと比べると、ステージ上の役と実際のパーソナリティが分かれている、という事実がひとつ大きな要素としてある気がします。

上のレポは男役さんが女性の役を、しかも2人の役替わりで演じた時のレポですが、普段の男役とはもちろんまったく違う(女装、って言い方も変ですが……)のはもちろん、役を離れた女性としての部分が透けるのも興味深いしかわいい、と思います。

「え、キメッキメの役なのに話すとこんなにふにゃふにゃなんだ!(ときめき)」とか「髪型変えてお化粧落とすだけで一気にかわいらしい顔になるなんて……(ときめき)」とか、「すごい、私服で歩いてるだけで舞台と同じくらいバリバリにかっこいい!(ときめき)」とか、ギャップがあってもなくてもときめきます。役柄は当然演目ごとに変わっていくので、「新しい一面」をめくり続けることができるのもお芝居を中心としてる宝塚のおもしろさです。

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いただきます、インターネット

インターネットとアイドルが大好きな女子ブロガー・ライター「もぐもぐ」が、日夜インターネットを舞台に巻き起こるディープな「熱狂の世界」を紹介していく連載です!

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