イタリアの作家 ウンベルト・エーコさんによる世界的ベストセラー小説『薔薇の名前[完全版]』が、東京創元社から単行本/電子書籍の二形態で刊行される。
邦訳は河島英昭さんと河島思朗さん。刊行日は12月25日(木)頃を予定。中世修道院を舞台にした知の迷宮が、完全版として新たな姿を見せる。
累計5000万部を売り上げた知の迷宮『薔薇の名前』
1980年の刊行以来、全世界で累計5000万部以上を売り上げたウンベルト・エーコさんの代表作にして初の小説作品でもある『薔薇の名前』。
ウンベルト・エーコさんは、イタリア生まれの小説家/評論家。哲学者や記号学者としても知られる。
物語は1327年、北イタリアの修道院で起きた怪事件を、修道士ウィリアムとその弟子アドソが追う歴史ミステリとしてはじまる。その奥には、記号学/中世思想史/宗教論争など、膨大な知の層が折り重なる巨大な迷宮が隠れている。
今回の「完全版」は、ウンベルト・エーコさん自身の改訂を反映した、底本に忠実な構成を採用。歴史的事実の誤認を認めた記述も収録され、表現の厳密さが一層高まった“完全版”と呼ぶにふさわしい仕上がりに。
初回出荷分限定の特別カラー箔押しは、重厚な世界観にふさわしい装いとなりそうだ。
「文庫化したら世界が滅ぶ」とも評された傑作が電子書籍化
『薔薇の名前』は1986年にショーン・コネリーさん主演で映画化、2019年には欧州で連続ドラマ化されるなど、長く映像表現の源泉にもなってきた。
中世の修道院、禁書をめぐる図書館の迷宮、宗教的権力闘争――こうしたイメージは文学界にとどまらず、ゲーム、批評、ネット文化にも引用されている。
日本では1990年に今回と同じく河島英昭さんの邦訳で東京創元社からはじめて刊行。以来、ガブリエル・ガルシア=マルケスさんの『百年の孤独』とならんで「文庫化したら世界が滅ぶ」とまことしやかに囁かれてきた。
そんな『百年の孤独』は2024年6月に文庫版が刊行。今回の『薔薇の名前[完全版]』は文庫化の予定は現時点ではないものの、手軽に入手できる電子版の刊行は新たな読者の手に触れる機会になりそうだ。
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