ノーベル文学賞作家の代表作『サタンタンゴ』邦訳企画が進行中

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Yugaming
ノーベル文学賞作家の代表作『サタンタンゴ』邦訳企画が進行中
ノーベル文学賞作家の代表作『サタンタンゴ』邦訳企画が進行中

クラスナホルカイ・ラースローさん/画像はノーベル賞公式Xより

2025年ノーベル文学賞を受賞したクラスナホルカイ・ラースローさんの代表作『サタンタンゴ』の邦訳企画が進行していることが明らかとなった。

企画を進めているのは、海外文学・幻想文学を中心に、幅取りジャンルを取り扱う出版社・国書刊行会。

ノーベル文学賞の発表を受けて10月9日、国書刊行会の公式Xアカウントが「来年刊行予定で鋭意制作中」と投稿した(外部リンク)。

終末論な恐怖を描くノーベル賞作家 クラスナホルカイ・ラースロー

『サタンタンゴ』は、1985年に刊行されたクラスナホルカイ・ラースローさんのデビュー長編。ハンガリーの荒廃した共同農場を舞台に、人々の希望と絶望、裏切りと信仰が交錯する群像劇だ。

クラスナホルカイ・ラースローさんは、1954年生まれのハンガリー出身の小説家。長文的文体と、終末論的・形而上的な主題で知られる。

2015年に国際ブッカー賞を受賞し、2025年にはノーベル文学賞を受賞。

ノーベル文学賞の授賞理由には「終末的な恐怖の真っ只中で、芸術の力を再確認させる、説得力に満ちた先見的な作品群」が挙げられた。

京都を舞台にした作品もあるクラスナホルカイ・ラースロー

クラスナホルカイ・ラースローさんは日本とも深い縁があり、1990年代や2000年代初頭に来日し京都に滞在。

その経験をもとにした小説『北は山、南は湖、西は道、東は川』(2003年)は、京都を舞台に光源氏の孫君を中心とした物語が展開される。こちらは日本でも、2006年に早稲田みかさんの邦訳で松籟社から刊行されている。

『北は山、南は湖、西は道、東は川』書影/画像はAmazonより

『サタンタンゴ』は映画監督のタル・ベーラさんによって1994年に同名で映画化され、約7時間半にもおよぶ映像作品としても知られている。

クラスナホルカイ・ラースローさんはその後も、タル・ベーラさんの監督作品『ヴェルクマイスター・ハーモニー』『ニーチェの馬』などで脚本に参加。

なお、映画『サタンタンゴ』は現在Amazon Prime Videoで無料視聴可能だが、視聴に大変な体力を求められる作品だ。

そのため、筆者個人としては、『ヴェルクマイスター・ハーモニー』など別作品からクラスナホルカイ・ラースローさんとタル・ベーラさんの作品に触れることをおすすめする。

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