背筋「もっと白石監督っぽくして」と本人に伝える
──原作者である背筋さんは映画に脚本協力として関わられていますね。
背筋 色々とアレンジを加えていただき、白石監督の作品にしていただく嬉しさを感じつつ、作品内での整合性が取れているのかどうかの確認をさせていただきました。
あと、私が白石監督のファンなものですから、「私が思う白石監督の良さはこうなんです! ここはもっと白石監督っぽくしていただけないでしょうか」とご本人にお伝えする謎の時間がありました(笑)。
白石晃士 そう言われたもののその場では思いつかず「ちょっと頑張って考えてみます!」とお返事したのですが、プレッシャーをかけていただいたおかげで元より面白くできました。本当にありがたかったです。
背筋 白石監督の作品には「どこから殴られるかわからない怖さ」があると感じています。ウケを狙っているのではなく、監督がお持ちの魂がそうさせるのかと思いますが、「どういうこと!?」とうろたえてしまうような角度から殴りかかってきたり、幽霊においても気持ち悪さや暴力性があるのが監督ならではの魅力です。
また、各キャラクターを原作よりも生き生きと変化させてくださり、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』(※)に通じる要素もあって光栄でした。最初は工藤(コワすぎ!の名物キャラクター)が出てきてブルドーザーで山を削る、くらいまで行くかと思っていたのですが出てきませんでした(笑)。
※戦慄怪奇ファイル コワすぎ!:オリジナルビデオや映画などで展開された白石晃士監督の代表作の一つ。POVを用いたモキュメンタリー。とても怖い。
白石晃士 今回の作品は幅がありつつ整合性も必要ですから、どういう風にしようかかなり悩んでいました。そんなときに背筋さんから「斜め上から殴られるような感じにしたい」というキーワードをいただけて、それを頼りに考え直しました。該当シーンは最初の方に出てくるので、楽しみにしていただければと思います。
背筋 先ほどから話に出ている『ノロイ』は本当にツカミが凄くて、おばけが出てきて怖がらせるのではなく、謎のおばさんがいきなり登場して怒鳴ってきますよね。ホラー映画を観慣れている人でも予想できないでしょうし、インパクトが強くて続きが見たくなり、時間が経っても覚えているほど記憶にも残ります。
そうしたずっと心に残るシーンを生み出せるのは、白石監督ならではの強みだと勝手に感じていて、「『近畿地方のある場所について』でもぜひそういうものをお願いします!」とお願いさせていただいた次第です。
おびただしい人形……
──原作との比較という意味では、登場人物に関する仕掛けが大きな違いだと思います。人物造形に関してはどのように進めていきましたか?
背筋 実は、キャラクターに関しては特にお話していません。白石監督がつくられるキャラクターが好きなので、お任せしていました。僕が何かリクエストすることはなく、むしろ最初から面白かったので「マジか」と驚かされました。
白石晃士 当初は原作の叙述トリックのような見せ方も考えはしたのですが、やはり映画では難しいと判断してばっさり諦めました。その代わりに、キャラクターの立場をお客さんに共有しながら進めていくオーソドックスなスタイルにして「実はこんな要素もあります」といった仕掛けを入れていきました。
その上で観客が親近感を持てるよう、千紘は推進力のある力強い女性、小沢は面倒をみたくなっちゃうような可愛げのある男性に設計して、凸凹コンビと一緒に旅をしていったら「最終的にこんなところに到達するのか!」と驚いてもらえるようにしたつもりです。
散らかった部屋にたたずむ千紘
小沢の視線の先にあるものは……
──たしかに千紘のサバサバ感が印象的でした。現場ではリアリティを重視され、フラットに見えるように菅野さんに演出されている場面もありましたね。
白石晃士 僕自身、ジメジメしたり・メソメソしたりするホラーがあまり好きではないのです。推進力のあるキャラクターと怪異が衝突してほしい想いがあり、序盤こそ目立っていませんが、終盤になるに従ってしっかり対決姿勢を描くように構成しました。
──“対決”というワードがまさに白石ワールド全開でゾクゾクします。映画『近畿地方のある場所について』では、千紘と小沢の2人と一緒に真相に迫っていく感覚と共に、「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」(※白石監督の映画『貞子VS伽椰子』の名ゼリフ。漫画「ダンダダン」にも影響を与えた)感を楽しめるのですね。
白石晃士 背筋さんにご相談の上で映画ならではの仕掛けを用意しておりますので、ぜひ一緒に戦って最終的な結末を観ていただきたいと思います。
©︎2025「近畿地方のある場所について」製作委員会

この記事どう思う?
作品情報
映画『近畿地方のある場所について』
- 公開日
- 2025年8月8日(金)
- 原作
- 背筋「近畿地方のある場所について」(KADOKAWA)
- 出演
- 菅野美穂、赤楚衛二
- 監督
- 白石晃士
- 脚本
- 大石哲也 白石晃士
- 脚本協力
- 背筋
- 音楽
- ゲイリー芦屋 重盛康平
- 主題歌
- 椎名林檎「白日のもと」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
- 配給
- ワーナー・ブラザース映画
【STORY】
「行方不明の友人を探しています。」・・・から始まる衝撃展開の連続!
これは、あなたを“ある場所”へと誘う、近畿の禁忌の物語。
行方不明になった雑誌編集者。友人のフリーライターは、彼が消息を絶つ直前まで、過去のオカルト記事を読み漁っていたことを知る。記事はどれも噂や都市伝説、怪談話といった真偽が定かではない内容だった。しかし、それらの情報をつなぎ合わせると、ある場所にまつわる、恐ろしい事実が浮かび上がる…。
関連リンク
0件のコメント