こんにちは。年間数百冊の漫画を読んでは「おもしれ〜!!!!」と発狂しているKAI-YOUのゆうきです。
年末ですね。2023年、みなさんは漫画読みましたか? 僕はたくさん読みました!
というわけで、個人的に読んでいて「これはヤバい……!」と感じた漫画……そう、言うなれば、独断と偏愛による「ヤバかった漫画大賞2023」をここに開催します。
超絶おもしろ漫画『スーパースターを唄って。』や佳境を迎えた『よふかしのうた』、ラストの余韻が染み入る『潮が舞い子が舞い』に、全世界待望の新刊が刊行された『堕天作戦』。
2023年、僕に幸福をもたらしてくれた最高の漫画から、厳選して9作品を紹介します。
ちなみに前年はこちら。『好きな子がめがねを忘れた』がアニメ化されて最高でした。ありがとうございました。
母親が残した借金を返すために、半グレの下っ端として売人を請け負う青年が、ラッパーとしてマイクを握り、奪い取られた人生を取り返すために戦う物語。
まず、フルアナログで描き込まれたざらつくストリートの情感に食らいました。絵が強い。
主人公の青年が借金と暴力から抜け出せず、鬱々とした感情を溜めていることを、絵が如実に語ってくる。真に迫る筆致が非常に魅力的。筆者の中の「次にくるマンガ大賞」ぶっちぎりトップです。
不眠の少年が、真夜中の街で出会った怪しく美しい吸血鬼に手を引かれて未知の世界へ。自分も吸血鬼になるため、彼女に恋しようと決める──深夜の街角で育まれてきた恋と青春の物語も、最終章に突入しました。
吸血鬼と人間を結びつける愛憎の関係を描いてきた本作は、最終章直前のエピソードで、“吸血鬼と人間が恋仲になること”の是非が描かれています。
主人公が吸血鬼に恋するために編まれてきた作品の土台を揺るがす転機。起承転結のまさに転でした。
結末に向かう最終章は、特有のカラッとした空気は失われていないものの、不穏さも漂います。どう決着をつけるのか。
3人組の配信者グループのメンバーそれぞれに付いた、熱狂的なファン改め狂い切ったファンが起こす騒動を描く漫画です。どれぐらい狂っているかと言うと、不法侵入がデフォなレベル。
推しへの欲望が強すぎる彼・彼女たちは事件を起こし、結果的に推しの活動を大いに阻害します。まさに本末転倒。歪んだ愛=本能をむき出しにした姿は、まさにガチ恋の獣です。
しかし、推しに「少しでも振り向いてほしい」という原動力は、何かを応援したことのある人なら、多少の差こそあれ身に覚えのある感情でしょう。理解はできないが共感はできる。このアンバランスな読後感が本作の真骨頂です。
2022年から続いていたギンガ編がついに完結。本作で一番長く時間をかけ、今までで一番複雑なファン心理をえぐり出しています。「もうない時代を愛してる」って言葉、ぶっ刺さりました。全てが凝縮された名言。
ギンガ編も終わり、メンバー全員がガチ恋の獣に人生をぐっちゃぐちゃに揺さぶられたわけで。これから物語はどこへ向かうのか。新章も楽しみです。
紆余曲折あり、電子書籍の個人出版で復活した『堕天作戦』。6月に新作エピソードを含む待望の第6巻、12月には7巻が発売されました。今年一番新刊の発売が嬉しかった……!
物語の舞台は、人類と魔人の戦争が続く荒涼とした大地。複数の勢力が覇権を握ろうと戦いを繰り返す、殺伐とした世界観の作品です。
主人公は、長く生き過ぎて生への活力をなくした不死者。彼が後に数奇な運命をたどる魔人・レコベルと出会い、空の彼方に見つけた物体“星”の謎を追い求める物語になっています。
SFファンタジーとしての硬派な作風と、悪役でも憎めないユーモラスなキャラクターの言動がくせになる。個人出版のため、値段も他と比べて控えめ。しかし中身はがっちり骨太。自信を持っておすすめします。
異世界に転生した青年が、錬金術師としての生活のため、やむなく奴隷の少女とエルフを引き取ることではじまる物語。平穏に生きたいと願う主人公はしかし、特異な能力によって様々な騒動に巻き込まれます。
練られたシナリオとしっかりと固められた世界観によって、読み進めていて引っかかる点はなし。バトルの攻防や駆け引きも読み応え抜群。予測できない展開で読みはじめたら最後、もう止まりません。
杉浦次郎さんによる半ネーム状態の本人いわく“ラフ版”は、シナリオの完成度だけで、読者を掴んで離さない名作がつくれると証明しています。
そんな作品にペンが入るとどうなるのか? うめ丸さんは見事に、原作のハードでシリアスな世界観を描き出しています。ありがとうございました。今年一番待ちわびた新連載でした。
アニメ制作に没頭する映像研がつくり出した渾身の一作。大反響を呼び、出品していたコンテストの優勝も確実と思われた矢先、大人たちに問われた血や暴力表現の是非。
表現への規制、その圧力と対峙する場面は、彼女たちがつくりたいものをつくりたいと一心不乱に駆け抜ける作品である以上、どこかでぶつかる必然がありました。
リアルでも議論を巻き起こし続けるこの命題に、映像研の面々が真正面から挑み、そして提示したシンプルな答え。タイトルの『映像研には手を出すな!』が、徐々に熱を帯びてきているような気がします。
一見ヤンキーっぽい強面くんも、早口で好きなものを語りそうなオタクくんも、誰にも分け隔てないギャルちゃんも、自分だけの世界を持っている不思議ちゃんも、みんな違ってみんな主役。
唐突にはじまる脈絡のない会話劇は、冴えに冴えまくり止まらないべしゃりと、辛辣で軽妙なツッコミの連続で、緩やかに終わる。1話読み終わるごとに何とも言えない充実感。
言葉選びがですね、良いんですよ。ラフでも丁寧でも堅苦しくも柔くもない絶妙なチョイス。最高。そして台詞回しが絶妙。読んでいてリズムを感じる。
それでいてたま〜〜〜に余白のある、会話と会話の合間のような瞬間が描かれていて、その静謐(ひつ)さにグッとくる。いつまでも読んでいたかった。でも、節目の10巻で終わらせるのがちょうど良い気もする。
「終わりは始まりとも言うじゃねえか」とのことなので、次の作品も楽しみにしております。
第一部完結とのことで、一区切り付きました。最後のあの人のエピソードが出てくるとはね。サプライズでした。なお、馬場ふみかさん主演の実写映画が11月に公開されています。
本作は、アパートの住人の自殺現場を、残りの住人たちで処理する場面からはじまります。こうして文字にすると殺伐としているのですが、妙に湿り気があるというか、悲壮感がない。なぜか。
それは「あ〜そーなん?」と、自殺の話を聞きつけた住人たちがあっけらかんと対応するからです。清々しいほど事務的。そして死を悼むわけでもなく、また各々の生活に戻っていく。感情の平坦さが良い。
住人たちの極々個人的な、身の回りの出来事をじっくり掘り下げていく、私小説的で純文学的な質を帯びている。茶目っ気のある彼らの人生は、今年一番の感無量でした。第二部、待っています。
島編(セイレーン編とも)のあのラストを見た時、「そんなことする????」ってなりました。なりましたよね? 乾いた笑いが出ました。どうしてェ……。今年一番ゾクゾクしたオチでした。
老若男女が視聴する「めざましテレビ」内のアニメで島編が放送される時がきたら、どうするのだろうか。お茶の間を無音が支配しちゃうよ。逆に見てみたいわ。
年末ですね。2023年、みなさんは漫画読みましたか? 僕はたくさん読みました!
というわけで、個人的に読んでいて「これはヤバい……!」と感じた漫画……そう、言うなれば、独断と偏愛による「ヤバかった漫画大賞2023」をここに開催します。
超絶おもしろ漫画『スーパースターを唄って。』や佳境を迎えた『よふかしのうた』、ラストの余韻が染み入る『潮が舞い子が舞い』に、全世界待望の新刊が刊行された『堕天作戦』。
2023年、僕に幸福をもたらしてくれた最高の漫画から、厳選して9作品を紹介します。
ちなみに前年はこちら。『好きな子がめがねを忘れた』がアニメ化されて最高でした。ありがとうございました。
目次
薄場圭『スーパースターを唄って。』
今年一番衝撃を受けた漫画は、薄場圭さんの『スーパースターを唄って。』でした。2月から『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載開始、描かれるのは貧困と友情です。母親が残した借金を返すために、半グレの下っ端として売人を請け負う青年が、ラッパーとしてマイクを握り、奪い取られた人生を取り返すために戦う物語。
まず、フルアナログで描き込まれたざらつくストリートの情感に食らいました。絵が強い。
主人公の青年が借金と暴力から抜け出せず、鬱々とした感情を溜めていることを、絵が如実に語ってくる。真に迫る筆致が非常に魅力的。筆者の中の「次にくるマンガ大賞」ぶっちぎりトップです。
コトヤマ『よふかしのうた』
予定通りに進めば、2024年1月での連載終了が発表された『よふかしのうた』。2023年に一番読み返した漫画です。不眠の少年が、真夜中の街で出会った怪しく美しい吸血鬼に手を引かれて未知の世界へ。自分も吸血鬼になるため、彼女に恋しようと決める──深夜の街角で育まれてきた恋と青春の物語も、最終章に突入しました。
吸血鬼と人間を結びつける愛憎の関係を描いてきた本作は、最終章直前のエピソードで、“吸血鬼と人間が恋仲になること”の是非が描かれています。
主人公が吸血鬼に恋するために編まれてきた作品の土台を揺るがす転機。起承転結のまさに転でした。
結末に向かう最終章は、特有のカラッとした空気は失われていないものの、不穏さも漂います。どう決着をつけるのか。
星来『ガチ恋粘着獣 ~ネット配信者の彼女になりたくて~』
今年一番続きが気になった漫画は『ガチ恋粘着獣 ~ネット配信者の彼女になりたくて~』でした。佳境に入ると各話の最後が毎回「え……!?」ってなるので引きが半端じゃなかった。3人組の配信者グループのメンバーそれぞれに付いた、熱狂的なファン改め狂い切ったファンが起こす騒動を描く漫画です。どれぐらい狂っているかと言うと、不法侵入がデフォなレベル。
推しへの欲望が強すぎる彼・彼女たちは事件を起こし、結果的に推しの活動を大いに阻害します。まさに本末転倒。歪んだ愛=本能をむき出しにした姿は、まさにガチ恋の獣です。
しかし、推しに「少しでも振り向いてほしい」という原動力は、何かを応援したことのある人なら、多少の差こそあれ身に覚えのある感情でしょう。理解はできないが共感はできる。このアンバランスな読後感が本作の真骨頂です。
2022年から続いていたギンガ編がついに完結。本作で一番長く時間をかけ、今までで一番複雑なファン心理をえぐり出しています。「もうない時代を愛してる」って言葉、ぶっ刺さりました。全てが凝縮された名言。
ギンガ編も終わり、メンバー全員がガチ恋の獣に人生をぐっちゃぐちゃに揺さぶられたわけで。これから物語はどこへ向かうのか。新章も楽しみです。
山本章一『堕天作戦』
「ついに続きが見られる!」と歓喜した同士はいらっしゃいますか? 生き返った気分ですよね! 握手しましょう!紆余曲折あり、電子書籍の個人出版で復活した『堕天作戦』。6月に新作エピソードを含む待望の第6巻、12月には7巻が発売されました。今年一番新刊の発売が嬉しかった……!
物語の舞台は、人類と魔人の戦争が続く荒涼とした大地。複数の勢力が覇権を握ろうと戦いを繰り返す、殺伐とした世界観の作品です。
主人公は、長く生き過ぎて生への活力をなくした不死者。彼が後に数奇な運命をたどる魔人・レコベルと出会い、空の彼方に見つけた物体“星”の謎を追い求める物語になっています。
SFファンタジーとしての硬派な作風と、悪役でも憎めないユーモラスなキャラクターの言動がくせになる。個人出版のため、値段も他と比べて控えめ。しかし中身はがっちり骨太。自信を持っておすすめします。
杉浦次郎/うめ丸『ニセモノの錬金術師』
杉浦次郎さんが趣味と称してpixivに投稿し、大反響を呼んだ『ニセモノの錬金術師』。6月に作画担当のうめ丸さんを迎え、商業版の連載がスタートしました。異世界に転生した青年が、錬金術師としての生活のため、やむなく奴隷の少女とエルフを引き取ることではじまる物語。平穏に生きたいと願う主人公はしかし、特異な能力によって様々な騒動に巻き込まれます。
練られたシナリオとしっかりと固められた世界観によって、読み進めていて引っかかる点はなし。バトルの攻防や駆け引きも読み応え抜群。予測できない展開で読みはじめたら最後、もう止まりません。
杉浦次郎さんによる半ネーム状態の本人いわく“ラフ版”は、シナリオの完成度だけで、読者を掴んで離さない名作がつくれると証明しています。
そんな作品にペンが入るとどうなるのか? うめ丸さんは見事に、原作のハードでシリアスな世界観を描き出しています。ありがとうございました。今年一番待ちわびた新連載でした。
大童澄瞳『映像研には手を出すな!』
サイエンスSARU制作のアニメも大いに話題になった『映像研には手を出すな!』。今年は創作の不自由に踏み込んだエピソードが描かれ、今までで一番胸が熱くなる言葉が飛び出しています。アニメ制作に没頭する映像研がつくり出した渾身の一作。大反響を呼び、出品していたコンテストの優勝も確実と思われた矢先、大人たちに問われた血や暴力表現の是非。
表現への規制、その圧力と対峙する場面は、彼女たちがつくりたいものをつくりたいと一心不乱に駆け抜ける作品である以上、どこかでぶつかる必然がありました。
リアルでも議論を巻き起こし続けるこの命題に、映像研の面々が真正面から挑み、そして提示したシンプルな答え。タイトルの『映像研には手を出すな!』が、徐々に熱を帯びてきているような気がします。
阿部共実『潮が舞い子が舞い』
潮が舞い込む海のそばの田舎町で、何だかいろいろと舞い上がっている高校2年生たちの群像劇を描いた『潮が舞い子が舞い』。完結してしまい、今年一番侘しい気持ちになりました。最後までみんな舞い上がっててよかったです。一見ヤンキーっぽい強面くんも、早口で好きなものを語りそうなオタクくんも、誰にも分け隔てないギャルちゃんも、自分だけの世界を持っている不思議ちゃんも、みんな違ってみんな主役。
唐突にはじまる脈絡のない会話劇は、冴えに冴えまくり止まらないべしゃりと、辛辣で軽妙なツッコミの連続で、緩やかに終わる。1話読み終わるごとに何とも言えない充実感。
言葉選びがですね、良いんですよ。ラフでも丁寧でも堅苦しくも柔くもない絶妙なチョイス。最高。そして台詞回しが絶妙。読んでいてリズムを感じる。
それでいてたま〜〜〜に余白のある、会話と会話の合間のような瞬間が描かれていて、その静謐(ひつ)さにグッとくる。いつまでも読んでいたかった。でも、節目の10巻で終わらせるのがちょうど良い気もする。
「終わりは始まりとも言うじゃねえか」とのことなので、次の作品も楽しみにしております。
岩浪れんじ『コーポ・ア・コーポ』
自分の過去と未来をぼんやり眺めながら、今日も何となく生きている、そんな人たち。大阪某所にある安アパートの、脛(すね)に傷を持つ住人たちの群像劇を描いた『コーポ・ア・コーポ』。第一部完結とのことで、一区切り付きました。最後のあの人のエピソードが出てくるとはね。サプライズでした。なお、馬場ふみかさん主演の実写映画が11月に公開されています。
本作は、アパートの住人の自殺現場を、残りの住人たちで処理する場面からはじまります。こうして文字にすると殺伐としているのですが、妙に湿り気があるというか、悲壮感がない。なぜか。
それは「あ〜そーなん?」と、自殺の話を聞きつけた住人たちがあっけらかんと対応するからです。清々しいほど事務的。そして死を悼むわけでもなく、また各々の生活に戻っていく。感情の平坦さが良い。
住人たちの極々個人的な、身の回りの出来事をじっくり掘り下げていく、私小説的で純文学的な質を帯びている。茶目っ気のある彼らの人生は、今年一番の感無量でした。第二部、待っています。
ナガノ『ちいかわ』
「ヤバかった漫画大賞」と題して書くのであれば、この作品は外せません。かわいいの皮を被った怪作『ちいかわ』です。島編(セイレーン編とも)のあのラストを見た時、「そんなことする????」ってなりました。なりましたよね? 乾いた笑いが出ました。どうしてェ……。今年一番ゾクゾクしたオチでした。
老若男女が視聴する「めざましテレビ」内のアニメで島編が放送される時がきたら、どうするのだろうか。お茶の間を無音が支配しちゃうよ。逆に見てみたいわ。
この記事どう思う?
1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:9479)
かなり信頼できる審美眼