同シリーズは最新作『ジョジョリオン』まで物語としては第8部、単行本では100巻以上にわたって物語が紡がれており、「波紋」や「幽波紋(スタンド)」といったユニークな能力描写や、キャラクター達の持つ哲学、そこから繰り出される名言によって幅広い世代に愛されている。
2012年からはアニメシリーズも放送が開始され、そのクオリティから、現在の『ジョジョ』人気を不動のものとした。そのアニメシリーズでは、現在第6部「ストーンオーシャン」がスタート。Netflixでは12話までが先行配信され、2022年1月7日(火)からはテレビ放送もスタートする。
ここではその座談会をコンパクトにテキスト化してお届けする。
※この記事は、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのネタバレを多数含んでいます
目次
登場人物紹介
うぎこ
KAI-YOUの広報担当。年齢非公開。座談会では常に司会をつとめ、いつも論争に発展するKAI-YOUの荒くれ者たちの手綱を握る。わいがちゃんよねや
KAI-YOUの代表取締役社長。1986年生まれ。2021年に突如カエルやトカゲを飼い始めた。好きな少年漫画は冨樫義博。にいみなお
KAI-YOU Premium 編集長/KAI-YOUの副代表。1987年生まれ。漫画を語らせるととにかく長い。荒木飛呂彦さんのインタビュー内容をめちゃくちゃ記憶しているデータ派『ジョジョ』ファン。古見湖
KAI-YOU Videosディレクター。1996年生まれ。『Magic:The Gathering』をこよなく愛し、社内部活動として「MTG部」が存在すると聞きつけ面接に挑み、そのまま入社し実質休眠状態だった「MTG部」を再建するという驚異のバイタリティを持つ。都築陵佑
KAI-YOU編集部のニューカマーにしてラッパー。1996年生まれ。平常時はクールな男だが、「ジョジョの奇妙な冒険」に対して思い入れがありすぎて、今回の座談会中はエンジンがかかりまくっている。『ジョジョ』最高傑作は何部? KAI-YOUの奇妙な仲間たち
KAI-YOUお馴染みの座談会、第6回は『ジョジョの奇妙な冒険』について語りたくて仕方がない4人に集まってもらいました。よろしくお願いします。
よろしくお願いします!!!!
今回も、4人に話し合いたいテーマを持ち寄ってもらいました。まずは、わいがちゃんよねやさん(以下:よねさん)のテーマから…
待ってください! 『ジョジョ』について語るなら、まず聞かなきゃならないことがあるはずです。
はい?
「最強のスタンド」と並び、読者の間で永遠に議論が続けられているテーマ──「『ジョジョ』で一番面白いのは何部か?」問題についてです(ゴゴゴゴゴゴゴ)。
ほう……(ゴゴゴゴゴゴゴ)
(なんだこの空気)
……難しい。僕は長らく第4部「ダイヤモンドは砕けない」がイチオシだったんですけど、アニメを観て第5部「黄金の風」が好きになりました。今度アニメ化される第6部「ストーンオーシャン」や第7部「スティール・ボール・ラン」も面白かった。
逆に、第1部「ファントムブラッド」から第3部「スターダストクルセイダース」まではそこまでハマらなかったですね。
え!? 第3部好きじゃないんだ!? 日本からエジプトを目指すっていうロードムービー感、すごくいいと思うけどな。
第1部から第3部はシンプルすぎて……。第4部以降で作品に深みが出てきたというか、物語の構造や複雑さが変わってくるじゃん。
僕は『ジョジョ』の難解なところに惹かれて好きになったので、第3部まではちょっと普通というか物足りないんですよね。
確かに、荒木先生も「第1部から第3部までは神話的世界」とインタビューで仰ってました。「空条承太郎は神話上の英雄」だと。
第3部まではジャンプ黄金期※に載っていた「ザ・少年漫画」って感じはしますよね。新見さんはどうですか?
かくいうわたしも第4部でしてね(笑)。
他の部は「主人公たちが旅をしながら目的地へと進んでいく」という、直線的かつ『ジョジョ』のテーマ「冒険」を体現している展開じゃないですか。それはそれでもちろんよくできている。
一方で、第4部は杜王町という狭い町で物語が繰り広げられる。日常に潜む恐怖みたいなホラーミステリーの要素もあるし、あの緻密な構成が良かった。
緻密かな……?🤔
回収されていない謎はありますね。幼き東方仗助を救ったリーゼントヘアの不良とか。
緻密……は言い過ぎか😇
俺もあの不良のエピソード、当時読んでて不思議だったな…『ウルトラジャンプ』で連載される第4部のスピンオフで明かされるんだろうか。
とはいえ、週刊連載の作品という意味ではストーリーが練られていたし、もちろんその都度破綻しないようにギリギリでせめぎあってたとは思うけど、全く飽きさせずどんどんラスボスの吉良吉影に迫っていく展開はよくできていたと思う。
どの話からでも読めるのは第4部の良いところですよね。私がこの部から読みはじめたというのもありますが、すごく読みやすいなと思います。
物語全体の展開を追わなくても話が分かるし、『週刊少年ジャンプ』あるあるな日常回も挟まるし。
絵柄も少年漫画として読みやすいしね、第4部。
第5部以降、どんどん絵柄のコミカルさは抜けていくじゃないですか。コミカルさとホラーミステリーのバランスがすごくよかったと思います。
若い2人はどの部が好きですか?
僕は第5部が好きですね。主人公チームの雰囲気がかなりイケてる感じに変わったじゃないですか。
主人公のジョルノ・ジョバァーナは、DIOがジョナサン・ジョースターの肉体を乗っ取ったあとに生まれた息子で、どちらの血筋も受け継いでいる。悪さもある主人公でカッコいい。
ギャングだしね。第5部はアニメの出来もよかったし、ストーリーも完成度が高い。第3部の承太郎や第4部の東方仗助も不良だったけど…
ギャングの方が反社会的というか、より悪くなってますよね。
例えばメローネ戦の冒頭。ヴェネツィアに行くために車を盗みたいけど、1台だけ盗むと敵に場所が特定されてしまう。
どうするか護衛チームが決めあぐねていたとき、ジョルノはスタンド「ゴールド・エクスペリエンス」で周りの車を10台以上破壊しカエルに変えて、どの車に乗っているかを分からないようにした。
そのイカれた発想に、読んでて「今までの『ジョジョ』とちょっと違うぞ」とゾクゾクしましたね。
古見くん大丈夫か……? YouTubeチャンネル(外部リンク)でハードコアな取材に行かせすぎて倫理がおかしくなってきてる気がする…。
僕は第7部がイチオシなんですが……あえて、第1部から第3部までの魅力を語らせてください!
えっ?(困惑)
第1部はジョナサンの青春物語として感情移入して読めるし、第2部「戦闘潮流」はジョセフ・ジョースターが吸血鬼の上位種・柱の男にアイディアで勝負する頭脳戦が面白いし、第3部はDIOの館突入からラストまでのボルテージが最高なんです!
どの部も面白い……最高傑作なんて選べない! この問いの答えはただ一つ、「全部」です。
ズルい!!!!!
じゃあなんで「どの部が一番面白いか問題」とか言い出したの(笑)。『ジョジョ』箱推しってこと?
そうですね。
大河作品として「人間賛歌」というテーマが通底しつつ、どの部もそれぞれ違った魅力がある。それが『ジョジョ』なんだと思ってます。
守られるヒロインから戦うヒロインへ、その先見の明
それでは、まずアニメ化される第6部のテーマからいきましょう。よねさんの"女性主人公であることの共時性"。
私は、今の時代だからこそ女性が主人公の意味があるみたいな話だと思っているんですけど。
そうです。第6部の主人公・空条徐倫は『ジャンプ』作品でも珍しい女性主人公じゃないですか。
流行語大賞にノミネートされているようにジェンダー平等が叫ばれている今こそ、その第6部がアニメ化されるのってかなり面白いと思ったんですよね。
そもそもアニメも含めて『ジャンプ』作品を読んでいる客層も変化していて、明らかに女性読者が増えてきている。その中で女性主人公かつアニメが配信・放送される第6部は、これまで以上にバズるかもしれない。
もしかしたら、徐倫の髪型にするのが渋谷のJKやギャルの間で流行るかも…??🧐
マジ?なるほど(笑)。
それはない(笑)! でも、言いたいことはわかるよ。
実際、先行して1〜12話が配信されたNetflixでは、日本の総合ランキング(配信後28日間で最も試聴された作品)で1位になりました。アメリカをはじめとした海外のランキングでも上位にランクインしてます。
YouTubeで公開されているティザーやOP映像のコメント欄も、海外からの投稿で埋め尽くされていますね。
㊗Netflix 日本の総合TOP10🎉
— TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』公式 (@anime_jojo) December 3, 2021
各国でも続々ランキング入りしているようです…!
ご視聴ありがとうございます
We are currently THE MOST WATCHED CONTENT in Japan and also Top6 in the U.S today on #Netflix !!!!!!
If you haven't already, now is the time!https://t.co/b2FqYgVhS6#jojo_anime pic.twitter.com/slv0Sn2YMN
荒木先生、先見の明がありすぎませんか? 20年前に連載されていた作品ですよ?
6部が掲載されていた当時の『ジャンプ』はちょうど女性読者が増えたくらいの時期だったんですよ。『テニスの王子様』が流行りだして、腐女子って言葉が広く使われはじめたとき。
そこで女性を主人公にすることを選んだのは、女性の時代が来ることを読んでいたのかなって思いますね。
荒木飛呂彦自身がインタビューで言ってたのは、『ジョジョ』の前にも女性主人公の作品『ゴージャス☆アイリン』を描いていたんだけど、長編にするのは無理だと判断してやめたんだって。当時の少年誌では女性が戦ったりするのは残酷すぎて難しいと。
それから時代が変わったからこそ、第6部の主人公は女性にしたらしい。
たぶんだけど、第5部の連載中にはちょうど『美少女戦士セーラームーン』が社会現象になったことも判断を後押ししてくれたんじゃないかな。
それでも、当時は少年漫画の主人公が女性だっていうことに、かなり風当たりが強かったけどね。それが今は、むしろ女性主人公の方がしっくりくるくらいになってきている。
徐倫はだらしない部分もたくさんあるけど、めっちゃカッコいいから。
第6部中盤、衛生面が最悪で過酷な厳正懲罰隔離房にブチ込まれたときにも、「くだらない消耗があってはならないッ!いや……逆にもっと強くなってやるッ!」と言って退けるようなタフネスの強さ! 歴代『ジョジョ』主人公の中でもトップクラスだと思います。
カッコいい女性像というのも、かなり先取りしているというか、現代の流行りですよね。
しかも徐倫だけじゃなく、エルメェス・コステロ、フー・ファイターズ(F・F)と3人も戦う女性がいる。
主要キャラクターがほぼ女性のバトル漫画……かつて『ジャンプ』にはなかったんじゃないかな? 本当に冒険的な作品だなって思います。
エルメェスもF・Fもいいキャラなんですよ!
姉・グロリアを殺された自身の運命に決着をつけるため、ヤクザのスポーツ・マックスへの復讐に燃えるエルメェスも、「思い出」をくれた徐倫たちへの恩義に報いようとするF・Fも、2人とも『ジョジョ』らしく「覚悟」が決まっているキャラだと思います。
みんなカッコいい女性ですよね。逆に言えば、従来の少年漫画のヒロイン感は鳴りを潜めているというか。
そうだね。セクシーさとかはあんまりないからね。
ちょっと待ってください、徐倫は可愛いですよ(過激派)!!!!!
徐倫も可愛いけど、「守られるヒロイン」みたいなのとは違うじゃないですか。例えば、第5部のトリッシュ・ウナとかと比べると。
でも、第6部の「戦うヒロイン」のキャラクター像って、原型はトリッシュにあると思うけどね。
トリッシュも回を重ねる中で、守られるだけじゃなくて、スタンド「スパイス・ガール」に目覚めて戦うようになったし。
トリッシュが主役回としてフィーチャーされたのは1エピソードだけだったけどね。
とはいえ、第2部のリサリサ先生然り、第4部の山岸由佳子然り、『ジョジョ』には度々「戦うヒロイン」が登場していたので、その土壌はあったんじゃないかなと。
なるほど確かに。それこそ私、トリッシュがスタンドに目覚める「ノトーリアス・B・I・G」戦が好きなんですよ。
再起不能になりかけているジョルノたちを、自身の危険も顧みず怨霊のスタンドから守ろうとするエピソードで、「スパイス・ガール」もめっちゃ好き。
彼女たちの存在が、第6部の「戦うヒロイン」たちに繋がったのかもしれませんね。
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その時々のエンタメ業界に現れた覇権コンテンツについて編集部が議論する連載。コンテンツ自体はもちろん、そのコンテンツが出てきた背景や同時代性、消費のされかたにも目を向け、ネタバレ全開で思ったことをぶつけ合っていきます。
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