荒木飛呂彦さんの漫画『ジョジョの奇妙な冒険(以下、ジョジョ)』第3部「スターダストクルセイダース」──の同時視聴配信をホロライブ所属のVTuber・大空スバルさんが行った。
『ジョジョ』の第3部では、超能力をキャラクターとして可視化し、後の創作に絶大な影響を与えた発明「スタンド」が初登場。そして、シリーズを象徴する主人公・空条承太郎が因縁の宿敵・DIOを倒すべく、仲間たちと共にエジプトを目指し旅をする──言わずもがな、『ジョジョ』を代表する重要な部である。
前シリーズである第1部「ファントムブラッド」や第2部「戦闘潮流」が、劇画調かつややハードでグロテスクということもあり、はじめて読んだ『ジョジョ』は第3部である、という人も多いのではないだろうか?
(余談ではあるが筆者は、第3部のOVA版が『ジョジョ』とのファーストコンタクトだった)
では、読者のあなたは、『ジョジョ』第3部を初めて読んだときのあの興奮と衝撃を、今でも思い出せるだろうか?
※この記事には、『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」のネタバレが含まれます。
面白いからこそ 読み返す度に失う初見の感覚
作者自身も、著作『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)の中で、「『スターダストクルセイダース』は、それまでの不信を脱することができた(※)」と評する第3部。
(※)荒木飛呂彦さんは前提として、当時『ジョジョ』が掲載誌である『週刊少年ジャンプ』の読者アンケートで苦戦していたと同書の中で語っている。
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出版社:集英社 (2015/4/22)
発売日:2015/4/22
面白いからこそ、何度も何度も読み返す。感想や物語の考察・解釈を、『ジョジョ』読者の友人に、あるいはインターネット上で、何度も何度も語り合う(『週刊少年ジャンプ』での連載時から、すでに30年以上経っているのにも関わらず!)。
「花京院の『魂』も賭けよう」「あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!」「世界(ザ・ワールド)!!」などをはじめとする、作中の印象的なセリフやシーンを、ネットミームとして使う。
人気の、そして多くの人が最初に読んだ第3部だからこそより一層、読み返したり語り合ったりミームとして使われたりする機会が多く、初見の記憶や印象がどんどん上書きされていってしまう。
もちろんそれは決して悪いことではないのだが、何事においても初体験でしか味わえないものがあることもまた事実だ。
しかし、その失われた初体験を(擬似的にではあるが)取り戻させてくれるものがあった。
それが、VTuberグループ・ホロライブに所属する大空スバルさんによるTVアニメ『ジョジョ』3部の初見同時視聴配信である。
“あの頃の自分”を思い出させる大空スバルの初見実況
『ジョジョ』第1部&第2部アニメの初見同時視聴配信から1年を経て、4月19日から6月17日まで、TVアニメ『ジョジョ』3部の初見同時視聴配信を行った大空スバルさん。
彼女は、インターネット上で活動するVTuberとしては珍しく、いわゆるオタクカルチャーやネット発の文化にそこまで明るい方ではない。一言で評するならオタク歴が短い(※)。
それゆえに、大空スバルさんのリアクションは、他の初見配信と比べ、オタクカルチャーやネット発の文化に詳しくなかった、“あの頃の自分”を思い出させてくれる。
(※)大空スバルさんは、2018年のデビュー当初、オタクカルチャーやネット発の文化にかなり疎かったことで知られている。その後、現在までの長い活動を経て、大空スバルさんはそれらを嗜むようになった。
また、オタク歴が短いのにも関わらず、物語への理解度や解像度が非常に高いのも大空スバルさんの特徴。
『ジョジョ』ファンが反応してほしい勘所をほとんど外さず、時にオーバーとも思えるほどのリアクションを見せた。
『ジョジョ』第3部の衝撃と興奮を見事に表現!
エジプトに辿り着くまでの、ハラハラ・ドキドキしつつも、どこかギャグめいた旅の道中を、純粋に楽しむ。
物語終盤、(大空スバルさん曰く推しキャラクターであるという)モハメド・アヴドゥルや花京院典明たちの唐突な、しかもあっけなさすぎる死に呆然とする。
不老不死の吸血鬼である宿敵・DIOと、時間を数秒間止められ、その中を自分だけ自由に動けるというそのスタンド「世界」のあまりに強さに絶望する──。
(有名すぎる「世界」の能力自体は流石に大空スバルさんも知っていたようだが)初見だからこその『ジョジョ』3部の興奮と衝撃を、大空スバルさんは見事にリアクションとして表現し切った。
大空スバルさんの『ジョジョ』3部の初見同時視聴配信は、既存の『ジョジョ』読者にとって、初見の“あの頃の記憶”を思い出させてくれる、エモーショナルで独自性の高い内容となった。
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