「ファスト映画」投稿者に初の有罪判決 悪質な組織犯罪の実態も判明

「ファスト映画」投稿者に初の有罪判決 悪質な組織犯罪の実態も判明
「ファスト映画」投稿者に初の有罪判決 悪質な組織犯罪の実態も判明

Photo by Yudi Indrawan on Unsplash

POPなポイントを3行で

  • 映画を短く改変する「ファスト映画」問題
  • 起訴されていた3名に全国初の有罪判決
  • 執行猶予付きで懲役や罰金
長編映画を短く改変した動画(「ファスト映画」)をYouTubeにアップし、著作権法違反で起訴されていた3名に、仙台地裁から11月16日(火)に有罪判決が言い渡された。

被告人3名は宮城県警察本部と塩釜警察署から6月23日に逮捕、7月14日に起訴されていた。「ファスト映画」関連の事件ではこれが全国で初の判決となる。3名に言い渡された判決は以下の通り。

被告A(主犯格):懲役2年、4年間執行猶予、罰金200万円
被告B:懲役1年6月、3年間執行猶予、罰金100万円
被告C:懲役1年6月、3年間執行猶予、罰金50万円

著作権侵害を申告した映画会社を避けて選定

3名は2020年6~7月の間、東宝が著作権を有する『アイアムアヒーロー』ほか2作品および日活が著作権を有する『冷たい熱帯魚』ほか1作品を無断で10分程度に編集し、ナレーションをつけるなどした上でYouTubeにアップロード等したとして著作権法違反の罪に問われていた。

11月2日に宮城県仙台地裁で開かれた初公判において3名はいずれも起訴内容を認め、加えて、金銭目当てで組織的にファスト映画投稿を行っていたことや、著作権侵害申告を行った映画会社をリストアップし、それらの会社を避けて投稿作品を選定していたなど、悪質な犯罪の実態も判明した。

検察は主犯格とされる被告Aに懲役2年、罰金200万円を求刑したほか、被告Bに懲役1年6ヶ月、罰金100万円、被告Cに懲役1年6ヶ月、罰金50万円を求刑。

一方、3名の弁護側は反省の態度が見られるなどとして、執行猶予付きの判決を求めており、11月16日の第2回公判において判決が確定した。

著作権違反と不当収入が問題に「ファスト映画」

「ファスト映画」は、ナレーションや字幕を交えつつ、引用の域を超える編集により長編映画を短く改変したダイジェスト映像を指す。

ここ数年でYouTubeやTikTokなどの動画投稿サイトへのアップが目立ちはじめていたが、著作権に反する点はもちろん、無断での動画公開による広告収入を不当に得ていた点が問題視されていた。

漫画、アニメなどの海賊版摘発やオンライン上での著作権侵害への対策を進めてきたコンテンツ海外流通促進機構CODA)も「ファスト映画」問題に働きかけており、今回判決が下された3名の逮捕・起訴を公式サイトなどを通じて伝えていた。

CODAは判決に際しても公式サイトで詳細を報告(外部リンク)。判決について「今回の判決は妥当であり、『ファスト映画』という著作権侵害のさらなる被害の拡大を防ぐための大きな成果として捉えています」とコメント。

その上で「クリエイターらが時間、労力、費用をかけて制作した著作物を無許諾で利用し、広告費などから暴利を得る行為は決して許されることではありません。今後とも引き続き『ファスト映画』をはじめとする日本コンテンツの不正利用の一掃と著作権の適正な保護に努めてまいります」としている。

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