名古屋を拠点に活動するラッパー・呂布カルマさん。インタビューさせていただくのは2度目となる。
以前、それまでの仕事をやめてマイク一本で食べていくという決断した直後の彼を取材させてもらったが、その彼が、2021年春にYouTubeチャンネルを始めた。
はじめに
それも、現在では多くの「呂布カルマの切り抜き動画」が立ち上がり、そこから収入を得るという手法を採用している。
華々しい経歴を積み上げてきた現役MCバトル覇者としても知られる呂布カルマさんは、これまで度々、バトルにおいて「YouTuber」をdisってきた。
一体どのような意図からYouTubeを始めたのか、その疑問をすべてぶつけてきた。撮影場所は、名古屋にオープンした任侠カフェ。 「申し訳なくて(YouTubeで得ている収益について)言えないです、真面目に出勤してるサラリーマンの同級生に」
さすがMCバトル日本一(2018年・2020年の「KING OF KINGS」で優勝)と言うべきか。理知的で冷静でありながら、天性の煽りスキルが炸裂する瞬間が度々あった。
これまでにないラッパーのYouTubeチャンネル運用を手探りでゼロから模索する彼の狙い、嬉しい誤算、そして今抱いている危機感とは?
撮影:古見湖
呂布カルマ 「YouTubeやった方がいい」みたいなことは、ずっと前からいろんな人から言われてたんですよね。
ただ、自分ではYouTubeを全く見てなかったですし今でも見てないくらいなので、どういうことをやるのかもわからなくて。
それで、ある時「範馬ユウジロウ」っていう、日本語ラップ関連のことをしゃべるYouTuberに色々聞いて、それなら全然できるじゃんってことで次の日から速攻で始めました。
範馬ユウジロウが月どれくらいの小遣いを稼いでるかを知って「俺がYouTube始めたらもっといけるな」って。まあ、スケベ心ですよね(笑)。
──もともとInstagramでのライブ配信はやってたわけですしね。
呂布カルマ インスタライブも、2020年にコロナ禍で自粛期間が始まった春休みに、学生たちが暇だろうからその間だけ毎日やるっていうことで始めたんです。
インスタは、楽しいけど質問の程度が低いというか……これはYouTubeも同じなんだけど、YouTubeライブではスパチャ(スーパーチャット。YouTubeの機能を利用した投げ銭のこと)を投げてくれた人の質問にしか答えないようにしているので、ある程度そこの質は担保されているんですよね。
インスタライブは本当にくだらない質問とか下ネタばっかりで(苦笑)、相手はしないけどそれだけでも精神が削られるんですよ。
その点でもYouTubeの、お金を出した人にだけ応えるというやり方は健全だなと。
──確かにわざわざ投げ銭してまで下ネタをぶつけてくるユーザーは少ないですよね。
呂布カルマ それでもいますけどね、YouTubeにも。
「このどうでもいい下ネタを240円かけてまで言ってんだなコイツ」と思うと許せるようになる(笑)。
悪意があるとはいえお金をくれてるんで、感謝できるんですよね。自分の精神衛生的にも良かった。
インスタライブは、春休み後もたまーに思い付いたら配信してたんですけど、その映像が切り抜かれて勝手にYouTubeに転載されていて。
そういうのもあって、YouTubeを始めた感じですね。
呂布カルマ そうですね。これくらいいくだろうなという予想はありました。
──最初、iPhone一台で録画した動画を投稿されていましたよね。
呂布カルマ チャンネル始めた直後って、ライブ配信ができないんですよ(モバイルでライブ配信するには、チャンネル登録者1,000人が必要)。
それでまずは収益化を目指して、iPhoneで撮影してそのまま投稿するようにしたんですが、最初はいろいろ問題がありましたね。初めては、今の生配信スタイルではなく動画投稿
──何か問題が起きても、YouTubeについては自分では調べないようにしていますよね。
呂布カルマ 「何も調べずにやる」っていうのをYouTubeのコンセプトにしてるんです。
自分で調べて進めることもできるけど、全く知らないゼロの状態から、わからないことは視聴者に教えてもらいながら運営してどこまでいけるか、という実験でもあるので。
iPhoneだけで撮影すると音量が小さくて「マイク買った方がいいですよ」とコメントもらって、じゃあマイク買ってみようとなって、少しずつ改善する。
──関係者から機材をプレゼントされたこともありましたよね。
呂布カルマ そうですね、リングライトを送ってきていただきました。
──ファンの助言もあって、すぐに収益化もされていましたね。
呂布カルマ 収益化する手続きも結構難しいんですよ。最初全然わからなくて、そう言ったらみんながDMで教えてくれるんです。その手順通りにやって全部クリアしました(笑)。
──インターネットを駆使して調べるんじゃなくて、ファンとのコミュニケーションをとりながら成長していくチャンネルだと。
呂布カルマ 他力本願ってことです(笑)。
──収益化もされて配信ライブもできるようになり、スパチャも飛び交うようになりました。その収益で機材も揃ってきている?
呂布カルマ いや、ノートパソコンに卓上マイクを繋げて、もらったリングライトを使ってるくらいですね。
──収益としては、まず、配信中のスパチャと、動画の再生数に応じた金額ですよね。
呂布カルマ そうです。現状、YouTubeの再生回数よりも、スパチャでの収益の方が多いですね。本体のYouTube再生回数はそんなにいかないので。
──毎回、ライブ配信ではスパチャが投下されていますが、始める前から「これくらいはいくだろうな」という予想はしていましたか?
呂布カルマ いや全然全然。本当にすごいなと思います。
僕は今30代後半で、デジタルでの課金とか投げ銭みたいな感覚ってそこまでなくて。やっぱり実際のモノ・フィジカルにお金を払う。
けど、僕らより下の世代はそういうものに抵抗がないんでしょうね。僕のチャンネルの視聴者は、20代半ばから30代半ばぐらいが一番多いです。10代はあんまりいない。
──そうなんですね。男女比的には?
呂布カルマ 95%男性(笑)。自分のライブの客層見ても、まあそんなもんだよねと。バトルのことを聞かれることが多いので、やっぱりバトルヘッズが多いのかな。
呂布カルマ そうですね。まずYouTubeを始めてすぐ、知り合いから「切り抜きをやらせてほしい」っていう連絡がきたんです。
収益化してからは基本ライブ配信が中心なので、公式チャンネル用に、公式の切り抜き動画の編集をやってもらっていたら、勝手に切り抜きするヤツらがたくさん出てきたんです。こちらが公式の切り抜き動画
僕が配信してる動画なので、報告してチャンネルを削除してもらうことできるんですが、違反報告をする代わりに、収益の半分を払えと。
──なるほど。結果、今インフルエンサーらが採用しているような、切り抜き動画を許諾してそこから収益を得る方法になっていったと。非公式の切り抜きチャンネルの動画
呂布カルマ 範馬ユウジロウが教えてくれて、ひろゆき(西村博之)さんを参考にした部分はあります。
呂布カルマ 切り抜きチャンネルが出てくること自体は自然発生的な問題なので、自分でどうこうしたわけではないけど、この方法が効率的だし、継続可能だし、イメージを損なわない。一番理にかなってると思いました。
──実際どのように運用されているんですか?
呂布カルマ 野良切り抜きチャンネルに「勝手に切り抜きすんな、連絡してこい」っていうコメントを残すと「すいません、切り抜きやってる〇〇〇です」みたいな返事がくるので、具体的な条件伝えるようにしてます。
こういうことしちゃ駄目だとか、ああせいこうせいみたいなのもあって、その通りにやらしてます。
──どんなルールですか?
呂布カルマ やられて嫌だったことを禁止してます。
サムネイルだけ見て動画見ない人がほとんどだと思うから、動画を見ないと俺が悪口言ってると誤解するような釣りっぽいサムネイルをつくられたことがあって。サムネイルで釣るような印象操作はダメ、とか。
そもそも動画の中で名前を出してないアーティストの写真を使うのは禁止、とか。 その上で、継続の条件は、チャンネルを開設してから1ヶ月以内に収益化すること。
収益化できない場合は再生数の食い合いになっちゃうだけだから、チャンネルを削除してもらう。収益化できたら、毎月収益の半分を指定口座に振り込むっていうだけです。
──自分の著作物を機械判定してくれる「Content ID」機能を使っているわけじゃないんですね!?
呂布カルマ 違うっすね。それも最初考えたんですけど、結構難しいんですよね。一つひとつ指定する必要もあるので、あんまり簡単じゃない。
それよりも普通に「こんだけ収益でました」って画面をスクショしてもらって、その半額を現金で振り込んでもらう方が数字で見えるしいいかなと。
──そこはアナログなんですね……!
呂布カルマ アナログですね。
──画像を加工して誤魔化すことも、できなくはないですよね?
呂布カルマ それを僕に疑われた瞬間、チャンネルごと消すので。だから、ギロチンの紐を握ってる状態ですよね。実際、これまで削除申請してきたチャンネルは10以上あります。
ルールに反するようなサムネイルとかタイトルがあったりすると、「サムネよくないですね、どれのことを言ってるか自分で考えて削除してください」と伝えて、そうすると心当たりのものが削除されていたり。
華々しい経歴を積み上げてきた現役MCバトル覇者としても知られる呂布カルマさんは、これまで度々、バトルにおいて「YouTuber」をdisってきた。
一体どのような意図からYouTubeを始めたのか、その疑問をすべてぶつけてきた。撮影場所は、名古屋にオープンした任侠カフェ。 「申し訳なくて(YouTubeで得ている収益について)言えないです、真面目に出勤してるサラリーマンの同級生に」
さすがMCバトル日本一(2018年・2020年の「KING OF KINGS」で優勝)と言うべきか。理知的で冷静でありながら、天性の煽りスキルが炸裂する瞬間が度々あった。
これまでにないラッパーのYouTubeチャンネル運用を手探りでゼロから模索する彼の狙い、嬉しい誤算、そして今抱いている危機感とは?
目次
撮影:古見湖
「俺がYouTube始めたらもっといけるな」
──なぜYouTubeを始めよう、と思い立ったんですか?呂布カルマ 「YouTubeやった方がいい」みたいなことは、ずっと前からいろんな人から言われてたんですよね。
ただ、自分ではYouTubeを全く見てなかったですし今でも見てないくらいなので、どういうことをやるのかもわからなくて。
それで、ある時「範馬ユウジロウ」っていう、日本語ラップ関連のことをしゃべるYouTuberに色々聞いて、それなら全然できるじゃんってことで次の日から速攻で始めました。
範馬ユウジロウが月どれくらいの小遣いを稼いでるかを知って「俺がYouTube始めたらもっといけるな」って。まあ、スケベ心ですよね(笑)。
──もともとInstagramでのライブ配信はやってたわけですしね。
呂布カルマ インスタライブも、2020年にコロナ禍で自粛期間が始まった春休みに、学生たちが暇だろうからその間だけ毎日やるっていうことで始めたんです。
インスタは、楽しいけど質問の程度が低いというか……これはYouTubeも同じなんだけど、YouTubeライブではスパチャ(スーパーチャット。YouTubeの機能を利用した投げ銭のこと)を投げてくれた人の質問にしか答えないようにしているので、ある程度そこの質は担保されているんですよね。
インスタライブは本当にくだらない質問とか下ネタばっかりで(苦笑)、相手はしないけどそれだけでも精神が削られるんですよ。
その点でもYouTubeの、お金を出した人にだけ応えるというやり方は健全だなと。
──確かにわざわざ投げ銭してまで下ネタをぶつけてくるユーザーは少ないですよね。
呂布カルマ それでもいますけどね、YouTubeにも。
「このどうでもいい下ネタを240円かけてまで言ってんだなコイツ」と思うと許せるようになる(笑)。
悪意があるとはいえお金をくれてるんで、感謝できるんですよね。自分の精神衛生的にも良かった。
インスタライブは、春休み後もたまーに思い付いたら配信してたんですけど、その映像が切り抜かれて勝手にYouTubeに転載されていて。
そういうのもあって、YouTubeを始めた感じですね。
はじめに https://t.co/byYTKDJKJ0 @YouTubeより
— 呂布000カルマ (@Yakamashiwa) April 12, 2021
何も調べずにどこまでできるかの実験
──4月から始めて、今4ヶ月目。始める前から、収益的な勝算はあったということですね。呂布カルマ そうですね。これくらいいくだろうなという予想はありました。
──最初、iPhone一台で録画した動画を投稿されていましたよね。
呂布カルマ チャンネル始めた直後って、ライブ配信ができないんですよ(モバイルでライブ配信するには、チャンネル登録者1,000人が必要)。
それでまずは収益化を目指して、iPhoneで撮影してそのまま投稿するようにしたんですが、最初はいろいろ問題がありましたね。
呂布カルマ 「何も調べずにやる」っていうのをYouTubeのコンセプトにしてるんです。
自分で調べて進めることもできるけど、全く知らないゼロの状態から、わからないことは視聴者に教えてもらいながら運営してどこまでいけるか、という実験でもあるので。
iPhoneだけで撮影すると音量が小さくて「マイク買った方がいいですよ」とコメントもらって、じゃあマイク買ってみようとなって、少しずつ改善する。
──関係者から機材をプレゼントされたこともありましたよね。
呂布カルマ そうですね、リングライトを送ってきていただきました。
──ファンの助言もあって、すぐに収益化もされていましたね。
呂布カルマ 収益化する手続きも結構難しいんですよ。最初全然わからなくて、そう言ったらみんながDMで教えてくれるんです。その手順通りにやって全部クリアしました(笑)。
──インターネットを駆使して調べるんじゃなくて、ファンとのコミュニケーションをとりながら成長していくチャンネルだと。
呂布カルマ 他力本願ってことです(笑)。
──収益化もされて配信ライブもできるようになり、スパチャも飛び交うようになりました。その収益で機材も揃ってきている?
呂布カルマ いや、ノートパソコンに卓上マイクを繋げて、もらったリングライトを使ってるくらいですね。
──収益としては、まず、配信中のスパチャと、動画の再生数に応じた金額ですよね。
呂布カルマ そうです。現状、YouTubeの再生回数よりも、スパチャでの収益の方が多いですね。本体のYouTube再生回数はそんなにいかないので。
──毎回、ライブ配信ではスパチャが投下されていますが、始める前から「これくらいはいくだろうな」という予想はしていましたか?
呂布カルマ いや全然全然。本当にすごいなと思います。
僕は今30代後半で、デジタルでの課金とか投げ銭みたいな感覚ってそこまでなくて。やっぱり実際のモノ・フィジカルにお金を払う。
けど、僕らより下の世代はそういうものに抵抗がないんでしょうね。僕のチャンネルの視聴者は、20代半ばから30代半ばぐらいが一番多いです。10代はあんまりいない。
──そうなんですね。男女比的には?
呂布カルマ 95%男性(笑)。自分のライブの客層見ても、まあそんなもんだよねと。バトルのことを聞かれることが多いので、やっぱりバトルヘッズが多いのかな。
アナログ版「Content ID」での収益
──収益についてはもう1つ、いわゆる「切り抜き動画チャンネル」を公認して、そこから売上を受け取っていますよね。呂布カルマ そうですね。まずYouTubeを始めてすぐ、知り合いから「切り抜きをやらせてほしい」っていう連絡がきたんです。
収益化してからは基本ライブ配信が中心なので、公式チャンネル用に、公式の切り抜き動画の編集をやってもらっていたら、勝手に切り抜きするヤツらがたくさん出てきたんです。
──なるほど。結果、今インフルエンサーらが採用しているような、切り抜き動画を許諾してそこから収益を得る方法になっていったと。
──実際どのように運用されているんですか?
呂布カルマ 野良切り抜きチャンネルに「勝手に切り抜きすんな、連絡してこい」っていうコメントを残すと「すいません、切り抜きやってる〇〇〇です」みたいな返事がくるので、具体的な条件伝えるようにしてます。
こういうことしちゃ駄目だとか、ああせいこうせいみたいなのもあって、その通りにやらしてます。
──どんなルールですか?
呂布カルマ やられて嫌だったことを禁止してます。
サムネイルだけ見て動画見ない人がほとんどだと思うから、動画を見ないと俺が悪口言ってると誤解するような釣りっぽいサムネイルをつくられたことがあって。サムネイルで釣るような印象操作はダメ、とか。
そもそも動画の中で名前を出してないアーティストの写真を使うのは禁止、とか。 その上で、継続の条件は、チャンネルを開設してから1ヶ月以内に収益化すること。
収益化できない場合は再生数の食い合いになっちゃうだけだから、チャンネルを削除してもらう。収益化できたら、毎月収益の半分を指定口座に振り込むっていうだけです。
──自分の著作物を機械判定してくれる「Content ID」機能を使っているわけじゃないんですね!?
呂布カルマ 違うっすね。それも最初考えたんですけど、結構難しいんですよね。一つひとつ指定する必要もあるので、あんまり簡単じゃない。
それよりも普通に「こんだけ収益でました」って画面をスクショしてもらって、その半額を現金で振り込んでもらう方が数字で見えるしいいかなと。
──そこはアナログなんですね……!
呂布カルマ アナログですね。
──画像を加工して誤魔化すことも、できなくはないですよね?
呂布カルマ それを僕に疑われた瞬間、チャンネルごと消すので。だから、ギロチンの紐を握ってる状態ですよね。実際、これまで削除申請してきたチャンネルは10以上あります。
ルールに反するようなサムネイルとかタイトルがあったりすると、「サムネよくないですね、どれのことを言ってるか自分で考えて削除してください」と伝えて、そうすると心当たりのものが削除されていたり。
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