ラッパーのYouTubeで正解が出てない
──以前、呂布カルマさんに取材させてもらったのが5年前、2016年のことでした。その頃、ちょうど呂布カルマさんも仕事を辞めた直後で、「自分がラッパー1本で食べていけるくらいでなけれヒップホップ業界はダメだ」とおっしゃっていました。 ──あの頃、一過性のブームかもしれないという危機感を多くの人が共有していましたが、世間では今も、ヒップホップが一時期に比べて大きな存在感を得ています。それでも、やはり特に30代や40代以上の中堅ラッパーが音楽で食べていくのは難しいという話はいまだによく聞きます。
呂布カルマ そうですね。ほとんど食えてないです。
僕はお金になる方法をすぐ思いついて試してみるんですけど、みんなやらないんですよね。バトルの時に、身体に広告を貼ってそれの広告主を募集するとか。
──YouTubeというのものが、セカンドキャリアじゃないですけど、ラッパーとして生活していくための新しい選択肢になる可能性があるのかもしれない、と思いました。もう幾つ寝ると、凱旋アリーナ。
— 呂布000カルマ (@Yakamashiwa) February 11, 2021
俺にとって今更倒す意味のある相手ってあんま残って無いけど、早雲ならアリだね。
引き続き肉体広告も募集してます。
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呂布カルマ 本当、そう思います。
確かにYouTubeに構えてしまう気持ちは、僕にもあった。それは今までラッパーのYouTubeで正解が出てないから。
僕はラッパーとしてYouTubeやってるわけじゃないので、これも正解かと言われればまた別ですけど。でもインスタライブをやるラッパーは多くて、それと一緒だと思うんですけど、そう言われれば言われるほどますます悔しいんでしょうね。 ライブでも他の仕事でも、そこで起きたことをYouTubeで話す。
SNSで起こったこと──僕は結構SNSでのいざこざが多いんですけど──とか、良いことも悪いことも全部YouTubeに落とし込めるというか、話すことで副産物としての収益にできる。
本業があればYouTubeにフィードバックできる。その仕組みが見えました。YouTubeしかやってない人になっちゃうとしんどいんですけど。なんか無理やり世論切ったりとか、他の同業者のことをつついたりとかは寒いので、そういうことはしたくない。
呂布カルマの、インターネットとの向き合い方
──逆に、こういう人はYouTubeは向いてない、というのはありますか?呂布カルマ 酔っ払って、とか、大麻吸って、みたいな人はやんない方がいい。いらんこと言っちゃうから。
悪口言わせて炎上させる目的の質問とかもあるので、そういう罠に引っかかっちゃう。
あと、しゃべればしゃべるほどアホが露呈するタイプの人もやんない方がいい。マイナスになったら意味がないですし。
──呂布カルマさんは機械に弱いというのは公言されていますけど、ネット上での煽り耐性というか、ネットリテラシーはありますよね。
呂布カルマ ずっとTwitterやってきたからだと思います。Twitterも始めるのは早くはなかったですけど。
あとは『フリースタイルダンジョン』に出て、ヒップホップの外の人たちにも見つけられてきたんです。ヒップホップのことを知らない人たちからのクソリプにさらされることが多かった。
そんなこといちいち言わなきゃわからないのかよってヤツとか本当にいるんですよ。そういう耐性がないと、YouTubeのライブ配信で言わなくてもいいことを絶対言っちゃうと思う。
──ネットリテラシーは必要ということですね。
呂布カルマ あとは、喜怒哀楽のコントロールですかね。怒ってるフリって、必要だったりするんです。
僕はリスナーの晒し上げとかも平気でするんだけど、激怒してるわけじゃないんですよ。全部許すのも違うし、全部真面目に怒ってもやっぱ疲れちゃう。
だから、ネット上で本気でキレたことはないかな……向こうの出方が悪かったらキレるかもしれないんですけど、大体そうはならないので。
──あくまでパフォーマンスとして振る舞って、一定の距離を保っている感じですね。 呂布カルマ よく「呂布カルマには信者がいっぱいいる」と言われるんですが、僕は全くそう思ってない。
彼らはただのオーディエンスでしかなくて、味方じゃない。
僕が面白いことやってるうちは担ぎ上げてるけど、一度失敗したら、僕の肩を持ってくれるわけじゃなくて、一斉に叩くために監視しているだけ。
──舞台上にいるから見上げているだけで、もし足を滑らせたら笑い者にできるのを待ってる?
呂布カルマ 上から石を投げてくるでしょうね。
リアルでの知り合いは手を差し伸べてくれると思うんですけど、やっぱりネットでしかお互い知らない仲で、本気の信頼関係を求める方が危ないというか。
──インターネットは、危険なものと考えているということでしょうか?
呂布カルマ いや、インターネットは、良いことしかないと思います。使い方次第。
危ないやつに刃物を持たせちゃいけないのと一緒ですよ。歳とってからインターネット始めて、大暴れして大恥かくみたいなことありますよね。
やっぱり触ってみないと加減がわからない。僕も徐々に慣れていったので。
ラッパーがYouTubeに進出する未来で、一つだけ確かなこと
──YouTubeを始めたことによる、自分への影響はありますか?呂布カルマ それはありますよね。
同業の人たちからしたら、内容如何に関わらず「呂布カルマがYouTuberになった」っていう見方をしているヤツもいると思う。
──MCバトルで言われそうですね。
僕も「YouTuber」ってヤツに対しては(MCバトルで)言ってたし、僕にも言ってくるやつはいるでしょうね。
ただ、そいつは「YouTubeをやってる」という浅い事実でしか言ってない。そこに対するロジックが僕の方にしっかりあれば、逆に言い返してもっと盛り上げれると思います。
まだそこをそんなに突かれたことはないけど、全然MCバトルにおいてマイナスになるとは思ってません。
──では、良い影響しかないということですかね。
呂布カルマ 一つだけ危惧してることがあるとしたら、僕の真似をするヤツが実際にたくさん出てきた時。
例えばMCバトルもそうですけど、dis、悪口を言い合うわけだけど、そこを言っちゃマズいでしょということはある。
個人的なことを、例えばプライベートの恋愛とかを言うヤツってセンスないと思うんですけど、そういうことが動画でも行われ始めるかもしれない。
──一線を越える?
呂布カルマ 例えばMCバトルの中での危ないワードって、ファンタジーやプロレスとして見ることもできなくはないですが、動画で話すとまた全然(ニュアンスが)変わってくる。
その辺のバランスがわかってないヤツもいるので心配です。その人自身も断罪されると思うし、とばっちりを受ける可能性もある。
──なるほど。同じラッパーのYouTubeでの発言によって、不利益が生じかねないと。
呂布カルマ もっと具体的に、例えば呂布カルマと面識ありますみたいなヤツが僕についていい加減なことを言ってもおかしくない。
そこの加減を全員がわかってるとは限らないので、ちょっと怖いなと思います。
ただ、絶対今後そうなっていきますよ。
──それはなぜですか?
呂布カルマ 馬鹿が多いですからね(笑)。YouTuberがまずそういう文化じゃないですか。
悪口を言う動画の方が再生数は回るし、悪口言ってる風のサムネやタイトルだと伸びる。めっちゃ下品ですよ。YouTuber同士がそういうことをやってるのもダセえ。
昔漢(漢 a.k.a. GAMI)さんが、シバターさんというYouTuberと揉めた時に知ったんですが、何か起きたら意見する動画を出す(物申す系)YouTuberがいるんですよね。
自浄作用と言えば聞こえはいいですが、そういう動画で何十万再生とかいってるのを見ると本当にキツい……。
僕はそういう面子と絡んでるつもりはないですが、ラッパーがYouTubeに増えてきたらそういう風になっても全然おかしくない。それは嫌ですね。
誰かが炎上したらそれについてみんなが意見動画を出すみたいな文化。キショい(笑)。
YouTuberはそれが本業だから……わからないけど。やっぱり、いつでも辞めるって気持ちでいないとキツいっす。
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