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連載 | #2 KAI-YOU編集部ネタバレ全開座談会

『シン・エヴァ』新劇VS旧劇世代ガチ考察座談会【ネタバレ全開】

ポスト『シン・エヴァ』世代に「エヴァ」は刺さるのか?

では、最後は古見くんの「これからエヴァを見る世代、知る世代に、この結末は刺さるのか」というテーマ。

結論から言うと、これから「エヴァ」を全く知らないでNetflixなどで一気観した子たちに、この物語は刺さんないと思うんですよ。なぜ僕たちに『シン・エヴァ』が刺さったのかというと、やっぱり「エヴァ」完結までに生きてる時間があったから

「人生を生きろ」「思い出を忘れて生きろ」という庵野監督からのメッセージ。これが刺さるには、人生を歩んだ経験が必要なんですよ。

歩みが止まってしまったり遅くなってしまったりしたとしても、それを乗り越えたり、乗り越えらなくても自分で何とか落とし所を見つけたりしてどうにか生きてきた。その経験がないと「エヴァ」は刺さらないと思うんですよ。だから仮に、完結したからとNetflixで「エヴァ」を一気観して、劇場に『シン・エヴァ』を観に行っても「何これ?」ってなると思うんですよ。

良いこと言うね。「エヴァの呪縛」というものが、庵野総監督の制作の遅さとか「エヴァ」完結までに成長した自分とかと完全にリンクしている。

今から「エヴァ」を一気に観て『シン・エヴァ』まで辿り着いても、そんなに食らわないだろうなって思いますね。

旧劇のポスターの「みんな死ねばいいのに」とか、登場人物が死んでいく衝撃の展開とか、「インスタントで味の濃い」要素はパッと見ても衝撃的で楽しめるんですよ。

ただ、『シン・エヴァ』の普遍的な「生きろ」っていうメッセージは、自分もちゃんと生きてないとわからない。だから、これから「エヴァ」を知って観る世代は、庵野総監督からのメッセージを受け取れない。

SF的なものとして見るのであれば楽しめるとは思うんですけど、本当の意味では伝わらないのではないか、と思いました。

庵野のことを調べないと、「エヴァ」のことはわかんないからね。

後半部分は同意できないな。そもそも作品はどんなものであっても必ず同時代性を持つわけだよ。今この時代につくられたものをその瞬間に見るっていうことと、後からさかのぼって見ることは、体験としては全く別物なわけで。

もちろん「エヴァの呪縛」っていうのはとりわけ同時代性が強い要素だけど、どんな作品にも言えてしまうことだからこそ、言っても仕方のないことだと思う。

僕は「刺さりうる」と思います。

「エヴァ」のメッセージは、ある程度庵野総監督のことを知らないといけない部分もあるので、後から観て読み取るのは難しい面もあると思うんです。でも、実は僕だってTVアニメ版や旧劇を観たのって『シン・エヴァ』公開時期が決定してからなんです。

みんな! 座談会の終盤になって、一番のにわかがあぶり出されたぞ!!

別に隠してたわけじゃないですよ! 冒頭を読み直してもらえたらわかりますが、「エヴァ」との出会いを話している途中によねさんに話題を奪われたので話すタイミングを失っただけです。

わいのせいなん!?

だから、仮に「エヴァ」と共に時を歩んでいなかったとしても、今自分が社会人として大人になろうかというモラトリアムの終わりに悩んできた思いを作品に重ね合わせることはできた。

僕が「エヴァ」と過ごした期間はTVアニメ版と旧劇合わせて1ヶ月もないと思うんですけど、それが僕のエゴだとしてもメッセージを感じることはできたんです。大人になろうとしている子とかが見たら、その年齢で見れば、刺さりうるんじゃないですかね。

旧劇は、確かにある種のオタクを批判したいっていう気持ちがあったんだろうけど、新劇は「誰もが楽しめるエンターテインメント映像」をつくりたいと庵野は公言していて。それを受け止めた人たちが、後世の人に伝わる/伝わらないと断じるのは、そもそもズレてると思う。

新見さんは『シン・エヴァ』を誰にでも開かれたエンタメとして見てたの? 俺は、ガイナックスからカラーに至るまでの歴史とか庵野総監督自身の振り返りとか、エンタメというよりも私小説的だと思ったよ。

そうだよね。気持ちはよくわかる。みんな「エヴァ」を通して庵野のドキュメンタリーを見てるんだろうと思うし俺も自分の中にその視点があるのを否定はできない。

ただ一方で、新劇から始まって特に今作の『シン・エヴァ』は純粋なエンタメとしてとにかくよくできてた。メッセージはわかりやすかったし、アニメーションとしても素晴らしかったし。もちろん、背景にある文脈を知れば知るほど楽しむことはできるけど、それを抜きにしてもエンタメとして傑作のラインは超えてたよ。

もちろん。でもたぶん、今『シン・エヴァ』を観て刺さっている人たちは、その長い歴史を歩んできたのと、庵野総監督と自分の成長そのものを重ねてたとは思う。

エンタメとして楽しめるか、楽しめないかで言ったら楽しめると思うんですよ。

その上で、自分の中で思慮に及ぶところまで至るのかなって。普通に単発の作品として大ヒットした映画とかアニメと同じように、インスタントに観て、超感動したみたいな刺さり方になると思います。

そうさせる力があるのが「エヴァ」が「エヴァ」たる所以だとは思うけど、自分の体験を特別視しすぎじゃないかな……

でも、すでに散々語ってきたように、「エヴァの呪縛」の設定はこれまで一緒に観てくれた人たちに向けたものだよね。それは後からじゃ理解できないじゃない。「エヴァの呪縛」は旧劇には無い要素で、新劇を考える上で一番大事なギミックになったから。

そもそも庵野総監督は『シン・エヴァ』を同時代的に届けようとしている。今までやってきたものを全部置いてこようとしてたようにも感じたし、僕は、庵野総監督はこれでアニメをやめちゃうんだろうなって思った。

あらゆるガイナックス作品のセルフサンプリングが盛り込まれていて、今まで自分がつくってきた粋を全部このフィルムに残そうという気概があった。それを含めて、後から観てもなかなか理解しづらいというか、刺さりにくいなとは思いました。研究的に見るんだったらともかく。

私は、『シン・エヴァ』がポップカルチャーにもたらしたものっていうのは、私小説的にみんなの思い出として残ってきた同時代性の強いもので、これからへの影響力はそんなにないのかなと思うんですけど…。

いや、影響力はあるでしょ!!!!

後世への影響力はある!!!!

お、おう。

散々否定的な意見を述べたけども、僕は、今まで見てきた全てのアニメの中で一番面白いとさえ思ったよ。

わかりずれえ。

僕の中でも一番です、これを超えるのは相当難しいと思いますね。

だから、このアニメより面白いアニメつくりたいとか。すごいアニメつくりたいと思うクリエイターが出てきてほしいなって。

それは「エヴァ」の私小説的なところとか、同時代性も含んで面白いと思ったクリエイター達がということですかね?

こんなにも監督の、1人の人間の色が出ている劇場アニメなんて存在しないわけです。それを庵野総監督はちゃんとやってのけて、商業的にも成功してるし、いろんなフォロワーも生んでいる。

間違いなく天才というか、唯一無二じゃないですか。そういう意味で、『シン・エヴァ』見た時に、これよりおもしろいアニメ作品は今までないなと思ったんですよね。

だからこそ、今後のポップカルチャーはどんどん面白くなってくる。

「エヴァ」が刺さって、影響されて、育った人たちが生み出すポップカルチャーが、ということですかね。

『シン・エヴァ』で面白さのレベルが更新されたと思うし、今後も更新していかないといけないよね。

NetflixとかYouTubeのおかげでいつでもなんでも見れるようになって、時間の制約から開放された時代に、完結までにこんなにも視聴者を付き合わせたのに面白かった。

インスタントな消費ができる時代ですが、完結までに要した時間、一緒にあった時間にも価値を創出してくれる作品が出てきたらいいなと思いますね。

今はもうアニメの一挙放送とか当たり前だし、確かにこういう体験自体は少なくなるかもしれないね。

「エヴァ」のもたらす影響は確実にあると思う。アニメーション表現への挑戦という意味でも、あの歳になっても妥協せず挑戦し続けるあの背中を見て、刺激されないクリエイターなんて嘘だと思う

それに、やっぱり『シン・エヴァ』以降はファンの心象も変わっていくと思う。これまでは部屋に引きこもり続けたとしても、そもそも引きこもる家がなくなってしまった時、人は外に出て行くしかない。

僕は、自分自身が離れがたく感じているのもあって、いついちゃう人はいると思います。

どうしよう、15年後にまた『シン・シン・エヴァンゲリオン』始まったら……。

それはまたなんか違う物語なんじゃないですかね、違うメッセージ性を持った(笑)。私としては、違う世代のつくる「エヴァ」があってもいいんじゃないかとは思いましたけどね。

やだよ、やだ、やだ😢

それはそうですよ。「エヴァ」がない時代に生まれた、その時代時代を生きている人たちに多大なる影響を与えるのは別の作品であってほしいですね。

ポップカルチャーをディープに読み解く

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mirainwonder

小林優介

コメントありがとうございます! 編集部の小林です。
プロフィール部分を執筆いたしました。
ご指摘の件、失礼いたしました。
「エヴァンゲリオン」の勉強・確認が足りておりませんでした。
もう一度視聴し直しておきます…!

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

居酒屋でやれよ

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

「ヤマアラシのジレンマって話、知ってる?(第参話)」


心理学用語としては「ハリネズミ」も「ヤマアラシ」もどちらでもOKですが、エヴァ的には「ヤマアラシ」になります。

こんな初歩的な部分を抑えていないあたりでお察し・・・ですね。


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