相方に全財産を渡してつくる水溜りボンドの「エンタメ」
この様子は“毎日投稿終了”をまだ「大きい発表がある」としか明かしていなかった、8月5日に投稿された動画内で確認できる。
トミーさんがカンタさんに自身の全財産という大金を託したのはなぜか。それは、これまで自分の人生をかけてカンタさんの才能を信じ、その才能を広く世に見せたいと、突き進んできたコンビとしての信頼関係があってこそ。
「何も制約がなかったときに、カンタが何をつくり出すのか見てみたい」という、かねてからのトミーさんの夢が今回実現されたかたちだ。
6年間毎日続けてきた水溜りボンドの要でもある毎日投稿の終了──コンビの今後を左右する大きな発表のタイミングで実現したトミーさんの夢。
そんな大きな節目であるからこそ、「ハッピー毎日投稿終了前ソング」のMVは、カンタさんにすべてを委ねたトミーさんの決意と、それに全力で応えるカンタさんがつくり出した“エンターテインメント”でできている。
「何してもいいよ」というトミーさんと、「持てる人脈と時間のすべてを使ってつくる」と決意したカンタさん。そして今まで2人が築き上げてきたエンタメに魅了され「この2人なら」と信頼したYouTuberたちとの絆、その歩みと次へのステップを見届けたいと思った多くのリスナーたちによって、達成された600万再生である。
YouTuberの「毎日投稿」の終わりが意味するもの
この涙が出そうなほどのハッピーエンドは、これまで頑張ってきた多くのYouTuberたちの思いにも報いるような、YouTuberによるYouTube作品として1つの集大成という感慨深さまでも感じさせた。
HIKAKINさんとの対談内で2人が語っているように、水溜りボンドがYouTubeを始めた2015年当時、YouTuberにとって“毎日投稿”は、チャンネル登録者数や固定リスナーを増やすためにも当然のように行われていることだった。
しかし、世間から好きなことを好きなようにやっているように見えても、“毎日投稿”を続けるとなると、企画も撮影も編集も自らこなすタイプのYouTuberは特に時間が足りない。日々時間に追われ、睡眠時間やプライベートを削りながら、毎日投稿を続けるというのが通常運転になっていた。
HIKAKINが訴えた本来のYouTuberの活動
「本当に楽しいものを思いついたときに撮影し、好きな時間に編集し、好きな時間にアップする。それがYouTuberです!」
当時、周囲にいた大人に「トップYouTuberのHIKAKINが休まないで毎日投稿し続けると、その下にいるYouTuberたちも休めずに巻き込むことになってしまう」と言われたというHIKAKINさん。
そんな彼が、そもそものYouTuberになろうと思ったきっかけである、米トップYouTuberのミシェル・ファンさんの言葉も交えて訴えたメッセージだ。
“好きなことで、生きていく”という本来のYouTuberに立ち返ろうと、自分も含めたYouTuberたちに向けたメッセージは、その後YouTubeで活動するクリエイターの方向性を大きく変えたように思う。
同動画に出演していたはじめしゃちょーさんは2018年、「はじめしゃちょーの畑」という別チャンネルを開設。今までサブチャンネルまでも1人でやってきた彼が、そのチャンネル内では自分ではなく後輩を主軸に置き、自分が出演していなくても成り立つようなグループチャンネルを立ち上げた。
そして、2005年から毎日投稿を続け、最古のYouTuberといわれるMEGWINさんもまた、2018年には13年間に及ぶ毎日投稿をストップ。徐々に流れが変わっていくのがうかがえた。
スカイピースの毎日投稿終了を聞いた水溜りボンドは…
終了する際には、尊敬する先輩として水溜りボンドを誘った飲みの席で、2人に毎日投稿の終了を報告するという動画を投稿している。「水溜りがいるからずっと頑張れていたし、いつか抜かしたいと思っていた」と、一番に報告したかったというスカイピース。
そんな2人に水溜りボンドは「自分たちが変わるための決断として、やめるのはすごい」と深い理解を示していた。
その際にトミーさんは「意地になって続けるのは誰も幸せじゃない。進化を恐れない人しか残れない世界だと思う」と、今あらためて聞き直すと感慨深い発言を残している。
水溜りボンドの一足早い打ち上げには思い出の品々
“毎日投稿終了”を初めて発表した8月13日の動画では、長いコンビの歴史で初めてかもしれないという、2人が対面で酒を酌み交わす、一足早い“打ち上げ”の様子が投稿された。
個室には彼らが共同生活していた“水溜りハウス”を思わせる、もちろんそれよりもはるかに高級なソファーと、ガスコンロが置かれ、活動当初に2人が動画内でつくった、水を使わずにポン酢だけのしゃぶしゃぶや、おでんの炊き込みご飯、ハワイロケで食べたウルフギャングステーキなど、思い出深い品々が並べられた。
その中で2人は今回の決断を「水溜りボンドという“YouTubeチャンネル”ではなく、水溜りボンドという“コンビ”として長く続けていくために必要な選択」とし、「コンビとしての水溜りボンドが一番大切」と語った。
コンビとして長く続けていくための必要な選択
動画で他のYouTuberが毎日投稿していた当時を振り返る2人は、いつやめてもおかしくない状況をコンビであるからこそ乗り越えられたと語っている。カンタさんは「(毎日投稿をやめる時は)クオリティが納得できなくなったときかなって2年くらい前から思っていたけど、トミーがイベントやグッズなどの手配を全て1人でしてくれたから、自分は編集に没頭することができた」とコメント。
トミーさんは「毎日投稿することがいつか皆のチキンレースみたいになっていて、これではYouTuberが職業や文化として残っていかないなとは思っていたけど、(毎日投稿が)自分たちの武器みたいになっていた」と語った。
加えて、毎日投稿でもクオリティを下げたくないために、撮った動画が微妙だった場合はすぐに別の企画をつくってその日に撮って出すといった苦労や、「バズった動画の次の日にも、変わらず動画を出すので、作品というよりはどんどん消費されていっちゃう」という悩みについても触れている。
それらを踏まえた上で「面白いことをやるために変わり続けていかなきゃいけない」と、「今後、毎日投稿をやめても休むっていうわけじゃなくて、新しいものをちゃんと生む。そうじゃないと俺らも逆に苦しい。つくってる時間が長くなるだけ」と、今回の決断は次へのステップであると改めて宣言した。
「ハッピー毎日投稿終了前ソング」はYouTuberのエンドロール
「YouTuber的に見たら2人組ってそんなに特性ないって思うんだよね。それでも2人組っていいなって思う」と言うカンタさんと、「親友と夢掴むストーリーが一番よくない?」とすんなり言えてしまうトミーさん。この2人の信頼関係に、今後も末長く続くであろう水溜りボンドの将来と、2人がいる限り確かに続いていく“YouTuber”という職業の未来を安心して見守ってもいいなと思ったのは筆者だけではないだろう。「ハッピー毎日投稿終了前ソング」は確かにYouTuberの1つのエンドロールとハッピーエンドを表していたが、同時に、今後を示唆する大きな“始まり”も予感させた。
彼らが時間の制約をとっぱらったら、一体どんなものが出来上がるのか? 本当にワクワクしてくる。そして、それは芸能人であるカジサックさんをYouTubeに本気で突き動かしたり、彼らに憧れる後輩YouTuberを多く出現させたように、YouTubeの新しい可能性と未来をも感じさせる。
「俺はどこでもよかったけど、エンタメをやる場所として、カンタがYouTubeを選んだのは大正解だった」「この時代が一番正解だったね、一番楽しい」という彼らの言葉のように、私も彼らが毎日エンタメを見せてくれる様子を何年も一緒に走り抜けるように追えて本当にラッキーだったし、「“なんか水溜りボンド好きでよかったな”」と本当にそう思う。
私自身、今回の彼らの決断は何かの始まりであると感じる。これからの水溜りボンドと、彼らが担うYouTubeの明るい未来を見守っていきたいと思う。
水溜りボンドの軌跡とインタビューをチェックする
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