手のひらに蘇る古代生物 神秘的なガラス作品「ペルム紀幻影」の美しさ

手のひらに蘇る古代生物 神秘的なガラス作品「ペルム紀幻影」の美しさ
手のひらに蘇る古代生物 神秘的なガラス作品「ペルム紀幻影」の美しさ

「ペルム紀幻影」/画像はすべて増永元さん提供

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  • ガラス作品「ペルム紀幻影」が神秘的美しさ
  • 古代の両生類をガラス玉の中に再現
  • 作者は研究者から転身した生物系ガラス作家・増永元
2億年以上前のペルム紀に生息していた両生類の絶滅種・ディプロカウルス(Diplocaulus magnicornus)をモチーフにしたガラス作品「ペルム紀幻影」。

Twitterに投稿されたどこか神秘的な美しさを感じさせる作品は、沖縄県在住の生物系ガラス作家・増永元さん(@masunaga_gen)。

以前はウミヘビの生態研究者だったが、2008年から生物系ガラス作家に転身。ガラス工芸は独学で学び、現在はたびたび個展を開催している。

転身の理由や作品制作の裏側など、珍しい経歴を持つ増永さんに、気になる質問をぶつけてみた。

研究者からガラス作家へ、異色の転身を遂げた増永元

増永元さんによる「ペルム紀幻影」

もともとヘビの研究者になるのが夢だったという増永さん。1991年に琉球大学理学部生物学科に入学して沖縄に移住した。

2003年には琉球大学大学院理工学研究科にてウミヘビの個体群生物学の研究で博士号(理学)を取得。その後、任期付きのポスドク研究者を続けていたが、「現実は恒久的な就職先がほとんど無い厳しい状況だった」という。

「結婚もして将来のことを真剣に考えたとき、もう1つの夢だったアートで食べていきたいという思いが強くなり、個人的に一番創作の可能性を感じたガラス作家になることにしました」

増永さんは以前からアートに興味があり、沖縄に移り住んだと同時に、研究をしながら写真や絵画、陶芸、ガラスなどの創作活動を開始していた。

生物の世界をガラス玉で再現、独学で学んだ制作手法

決心を経て、2008年から作家としての活動を始めた増永さん。制作のガラス工芸の技法書を参考にして独学で腕を磨いた。

「今僕がつくっている作品のような、実在生物を小さなガラスの中に立体で表現する手法は、当時はどこにもなかったので、すべてつくり方を自分で試行錯誤しながら開発しています」

「似た表現で、もう少し大きい作品だとガラスのミニチュアをつくってから透明ガラスに封入するという手法は以前からある」としながら、増永さんのつくり方とは異なるという。 ちなみに増永さんのガラス作品の1つに用いられる「トンボ玉」とは、穴の空いたガラス玉の日本での呼称(英語ではGlass beads)。紀元前の大昔からつくられている歴史のあるガラス工芸品だ。

ランプワークという技法で色ガラス棒を溶かし、さまざまな細工を加えて制作。増永さんの場合はこの技法を応用して、トンボ玉の形をしたアート作品をメインに制作している(今回の「ペルム紀の幻影」はトンボ玉ではなくガラスオブジェ)。

好きな生き物はヘビ、創作時の参考にも

「あまり注目されていない身近な生き物たちの魅力を自分なりの方法で伝えたいというのが創作の原点です」

そう話す増永さんに、せっかくなので特に魅力的だと感じる生き物を聞いてみたら、「僕はヘビ類が特別好きですが」と元研究者ならではの魅力を教えてくれた。

「それは彼らが非常に単純な体の構造にも関わらず、地面、地中、樹上、水中と実に様々な環境に適応している点です。肋骨を開いて空中を滑空するヘビまでいます。手も足もなく、さまざまな進化的制約があっても、そこで止まらず自在な方向に多様化している点に、生物の無限の可能性を感じます(これは創作の際にもとても参考になってます)。他の生き物もじっくりと注目してみたらどれも興味深いものばかりですよ」

森や海で生き物たちを観察・撮影することが一番の趣味という増永さん。彼の創作の根源ともなっているヘビへの愛からは、今後も美しい作品が次々と生まれそうだ。 増永さんの作品は個展などでの展示のほか、神戸にある「KOBEとんぼ玉ミュージアム」でも目にすることができる。

作品は自身のサイトでの販売やガラス作品専用オークションサイト「Glass2H Auction」に月1回出品。記事執筆時点では「ペルム紀幻影」が出品されており、購入者にはかわいらしい「ミニアマビエさま」がプレゼントされる。

【ギャラリー】思わず目を奪われる増永さんのガラス細工

オリジナリティマシマシの素敵な作品

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