満杯の水で膨れ上がったように見えるビニール袋、実はガラス製のオブジェなんです。
水の重みにたわんでできたしわ、薄っすらと結露したかのような表面の質感は本物のビニール袋とそっくり。でも実際は硬いガラス製です。
板野尚美さんによる作品
一見、ビニール袋ではないことがいささか信じ難いほどのガラスのオブジェを制作したのは、ガラス作家の板野尚美さん。その作品は、3月29日(土)まで東京・清澄白河のアートギャラリー・DJURGARDENで開催中の個展「Compare with」でも目にすることができます。
ガラスという素材を使い、まるでガラスではないような作品をつくる──板野尚美さんに話を聞くと、学生時代の経験が独特な表現方法のきっかけとなっていました。
【画像】本当にガラス? 板野尚美さんが制作したオブジェ硬いだけじゃないガラスの表情に魅せられて作家に
──ガラス作家として、普段はどのような活動をされていますか?
板野尚美 普段は吹きガラスの工房でアシスタントをしながら、自宅でガラスオブジェを制作しています。作品は主にギャラリーやイベントで展示/販売しています。
光に照らされたときの表情の豊かさも魅力的です
──ガラスでこんな表現が可能なのか! と驚きました。作品制作の素材としてガラスを選ばれたきっかけはありますか?
板野尚美 高校生の時に吹きガラス体験をして、硬いイメージのあるガラスの、全く違う表情に魅せられたのがきっかけです。
その後「ガラスにもっと触れ合いたい!」と思い、ガラスの作品づくりを学べる大学に進学しました。
──作品を制作する時に心がけていることや、こだわりはありますか?
板野尚美 オブジェ作品でも吹きガラスの作品でも、遊び心を織り交ぜて制作することを大事にしています。
自分自身が楽しんで制作することで、見る人にも「ガラスって面白い素材だな」と楽しんでもらえるのではないかと思っています。
板野尚美「ガラスが面白い素材だと知ってもらいたい」
──開催中の個展「Compare with」では、川上産業株式会社の協賛でプチプチ®︎の作品も展示されています。あの独特のつぶ感やビニール袋の質感はどう表現しているのでしょうか?
板野尚美 本物のビニール袋やプチプチを型取りしているため、細かな部分まで表現できているんだと思います。
作品自体は、電気炉を使用してガラスを溶かしたり変形させたりする、キルンワークという技法でつくっています。
まず原型をつくり、それを石膏で型取りします。型にガラスを詰めて、電気炉で焼成してガラスを溶かすことで、原型と同じ形のガラスが出来上がります。
そして、それを削ったり磨いたり加工をして作品が完成します。
置いてあると丸まったプチプチに見えますが、ガラスでできたオブジェです
──作品の制作で苦労する点はありますか?
板野尚美 平らな面を、鏡のように光沢のある状態にまで磨くこと(鏡面仕上げ)は、時間と根気がいるので大変です。その分、完成したときは達成感があります。
型取りも、本物のビニール素材を使用するからこその難しさがありますね。
──そうして完成した作品の「ここを見てほしい!」というポイントがあれば教えて下さい。
板野尚美 ビニール袋もプチプチの作品も、シワなど細かな部分まで表現されているので、じっくり観察していただきたいです。

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イベント情報
板野尚美「Compare with」
- 会期
- 3月8日(土)~29日(土)
- 会場
- DJURGARDEN(ユールゴーデン)
- 住所
- 東京都江東区森下3-5-11 chigaya morishita 3階
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