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POPなポイントを3行で

  • 「xR」による新たなライブ体験「DIVE XR FESTIVAL」
  • 主催はエイベックス・エンタテインメント、特別協賛はソフトバンク
  • テクノロジーとコンテンツの生み出す、日本独自の新たな可能性

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ソフトバンクとエイベックスが魅せる“バーチャル“の可能性 VTuberからxRまで

(左から)湧川隆次氏、杉浦一徳氏、中前省吾氏

近頃、長らく形を変えなかった音楽体験が変化してきている。音源を聴く、映像を観る、ライブへ行く。それら音楽の体験が技術によって拡張されてきているのだ。

映像の中に入り込んでライブやMVの世界観を体験できたり、そこに実在しないアーティストの臨場感あるライブを目の前で体験できたりと、「AR」や「VR」の技術を駆使した音楽体験は次々と登場している。

そんな技術を結集した統合的な「xR」によって新たなライブ体験を生み出すのが、9月22日(日)・23日(月祝)に幕張メッセで開催される「DIVE XR FESTIVAL」だ。 DIVE XR FESTIVAL 「DIVE XR FESTIVAL」では、有名バーチャルYouTuber(VTuber)たちやボーカロイド、アニメキャラクターたちが集結し、現実世界と拡張世界とのボーダーレスなライブ体験を提供する。

はたして観客はどのようなライブを体験できるのか。そして5G(第5世代通信システム)提供を控えるソフトバンクが“バーチャル”に見出した可能性とは。

主催のエイベックス・エンタテインメントからレーベル事業本部の中前省吾氏(彼はAIシンガー「りんな」のプロデューサーでもある)、特別協賛のソフトバンク株式会社から先端技術開発本部の湧川隆次氏、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科でデジタルコンテンツの研究を専門とする名物コスプレ教授・杉浦一徳氏。

日本文化から音楽産業、VTUber業界への見通し、技術とコンテンツの共創までを語り尽くすため、3名が集まった。

記事最後には、「DIVE XR FESTIVAL」への招待キャンペーンも。

取材・編集:新見直 執筆:鈴木梢 撮影:滝沢たきお

現実の可能性を引き出す「xR」

──そもそも「xR」とは具体的にどういったものなのでしょうか?

中前省吾(以下、中前) 「xR」のxは、AでもVでもMでも「何を入れてもいい」という意味です。だからxは大文字による固有名詞ではなく、小文字のxなんです。

「VR」(仮想現実)は、バーチャル世界のなかに自分が没入する体験です。たとえば漫画の世界であれば、自分が漫画の世界に入り込むようなことです。

「AR」(拡張現実)はその逆。我々のいる現実にバーチャルなものが飛び出してきて、それを鑑賞するような体験です。漫画のキャラクターが現実世界に登場するようなことです。

「VR」は、自分という実在を仮想に溶け込ませるという意味でいかにリアリティをなくすか、いかに自分をバーチャル化するかが重要です。一方で「AR」は、いかにバーチャルなものを現実に溶け込ませるか、つまり、いかに、バーチャルにリアリティを持たせるかが重要になります。

そして「MR」(複合現実)のことを僕らは、「ARをVRする」と例えます。バーチャルによって拡張された現実(AR)の中に没入する体験なので。 中前省吾 遊園地を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。きれいな建物やアトラクションを設置された土地を僕が外から見て「遊園地だな」と認識すれば、現実が拡張されていることになる。それが「AR」です。

そして、その現実世界にできた遊園地に入り込んで「ここは遊園地で、僕はそこの住人だ」と本人が没入し、その中でリアルでありながら非現実な体験をしたときに「MR」になります。仮想世界ではなく、あくまで現実の中でバーチャルな体験をすることを指します。

「xR」はそれら体験の総称なので、「AR」「VR」「MR」いずれもxR技術の一種ということになります。

可変性を加えることで新しく生まれる音楽体験

──「xR」に関する取り組みはどのような経緯で始められたのでしょうか。

中前 エイベックスは、YKBXというクリエイターとヘッドマウントディスプレイでのVRを活用したミュージックビデオというものを、世界に先駆けて試みた経験があります。
2016年公開、倖田來未「Dance In The Rain」の360°MV
また、ホログラムを利用した「AR」を活用したライブをやってきました。そういった取り組みを始めたのは、従来の音楽ビジネスに疑問を持ち始めたからで。

これだけ可変性が求められている社会なのに、一切変化しない録音物や収録した映像がメインの商材のままでいいのか。はたしてビジネスとして正解なのか、と。

音楽って、録音してしまうと動かないじゃないですか。音楽を録音したものを聴くのは、エジソンが蓄音機を発明してから100年ちょっとくらいの文化で、もっと言えば一般に広まったのはまだここ半世紀くらいの話。それ以前に音楽を聴く体験といえばライブだけでした。

ライブは、たとえば観客が盛り上がったら演者のパフォーマンスが変わるなど、もともと可変性をもつ音楽体験です。そんな音楽体験から可変性を削ぎ落としたのが音源や映像だとも言える。

でも、音楽業界は、音源の販売をビジネスとして最も成功させたことで、あたかも「これが音楽業界だ」と思い過ぎていないだろうかという疑問がありました。

だから逆に、音源や映像に対してライブ性を加えたら、受け手自身が民主的に携わることを好み、可変性が求められる今の現代社会やお客様の楽しみ方にマッチするのではないか。そんな仮説から、xRライブの立ち上げを決めました。 中前省吾 ── 「AR」や「VR」を活用した音楽体験から発展して、音源や映像をデジタル化してインタラクティブかつ動的にしたものが、xRライブ?

中前 おっしゃるとおりです。「デジタル化」と言うと未来的ですが、ライブなので、体験としては非常にプリミティヴ(原始的)なものなんですよ。音源や映像販売がよくないからライブに戻そうということでもありません。

かつての体験を取り戻すというよりは、音楽体験の新しい選択肢をつくるための試みなのです。

──これまでの「VR」や「AR」の技術を活用した音楽体験と、今回の「DIVE XR FESTIVAL」は、何が違うのですか?

中前 「VR」の技術を活用したライブでよくあるのは、360度から撮影されたライブ映像を観るもの。まるで現実のライブへ行って良い席で観ているかのような体験ができます。

たしかに投影がきれいだとか、いかに擬似的に立体に見えるかという技術的なことも大事ですが、ライブにおいては世界観が非常に重要皆の心の中で何が起きるかが大事なんです

それに「ライブを観に行けなくても『VR』技術を使ってその体験に近づける」のは、「仮想現実」というよりは「擬似現実」であり、今回のライブはそういった体験とは全く異なります。

たとえば衣装の早着替えは、変わるとは言っても演出側があらかじめ決めた衣装に変わるだけです。でも「VR」や「AR」の技術を活用すれば、観客が衣装を多くの選択肢から民主的に決めることもできるかもしれない。従来の早着替えよりも即時性が高まるだけでなく、予測不可能なインタラクティブ性も高まります。

演奏者の楽器を変えるためにもある程度時間がかかりますよね。それもすぐに変えられるので、ステージ転換の時間がほとんどいらない。

今回16〜18組ものアーティストが数時間でライブするというスケジュールの実現こそ、物質が存在しなくてもライブ体験を提供できるxRの技術だから可能なことなんです。 「DIVE XR FESTIVAL」

xRライブによって日本の「応用する文化」が加速する

──杉浦教授は、今回直接関わっているわけではないお立場から第三者としてご覧になって、「DIVE XR FESTIVAL」の魅力をどのように感じていますか?

杉浦一徳教授(以下、杉浦) 今回のライブを観て熱狂の中で、「私もバーチャルアイドルを生み出したい」と思う人が出てくるかもしれません。新しい技術が生まれたり高性能なグラフィックアートが駆使されたりして、コンテンツも進化していくでしょう。

xRを活用するライブには、消費者であると同時にクリエイターでもある、両方の性質をもつ人たちが応える流れがあると思います。 杉浦一徳 あとは、ライブの中でキャラクターたちがコラボするシーンがあったらすごいと思います。リアルなライブでアーティストがコラボすることもありますが、なかなか難しいじゃないですか。それが技術的な解決で実現できる。しかも観客の皆さんもそれに応えられる。

映画に、爆音上映や応援上映というのがありますよね。あれに近いと思っています。それらとxRライブの違いは、観客たちへのインタラクティブなリアクションができること。

バーチャルキャラクターは仮想的なものですが、インタラクティブな体験をしているうちに現実世界との境目が見えてこなくなる。その世界は魅力的ですね。

──リアルなフェスでもその日限りのアーティスト同士のコラボは見所の一つです。今回も”フェス”と銘打っている以上、コラボは期待されているのではないでしょうか。

中前 それで言うと、カミナリアイ feat. ボヤッキーのライブで、『北斗の拳』のキャラが出てきます。「ヤッターマン×北斗の拳」ですね。なかなか実現しないコラボだと思います。

そういった純粋なキャラクターコラボもあれば、そもそも「DIVE XR FESTIVAL」全体が、パラレルワールドだからこそ実現するコラボです。

それぞれの作品やキャラクターの世界観的に、同時に存在することが本来はあり得ないこともありますよね。たとえばVTuberはバーチャルだけど僕らのいるこの現実世界を生きていて、アニメキャラクターは異世界を生きている場合もある。 「DIVE XR FESTIVAL」 でもパラレルワールドのフェスだから、彼らも共存できる。現実では現実のアーティストのみしか実現できないけど、バーチャルであればあらゆる世界のアーティストが同時に存在できることもある。

杉浦 国境を跨いで、海外とのコラボもできるんです。

映画「スパイダーマン:スパイダーバース」もパラレルワールドの話で、いろんな世界線のスパイダーマンが集まるんですよ。それこそ日本のスパイダーマンも出てくるんです。あれはまさに日本のコンテンツをリスペクトしていて。

日本のコンテンツはそのように非常に世界から尊敬されていて、日本のアーティストはそれを自信につなげてクリエイティブなものをつくり上げていく。

また、日本文化の特徴として、何かを応用する文化があるんですね。完全に新しいものを作るよりも、存在するものを消費して理解して、応用して生み出す。それが非常に得意なんですよ。

──二次創作的な。

杉浦 実は、その鍵を握っているのは今回も出演する初音ミクです。ボーカロイドであり二次創作によって象徴的なキャラクターとなった初音ミクは、クリエイターたちが考え抜いて集まった解とも言えます。世界に広まり愛され、世界中のアーティストがリスペクトしている。

これから先、そういった刺激的なイベントやモノを日本が主体的につくり続け、世界のなかでイニシアティブをとっていくことも、これからの日本のコンテンツ社会の役割になっていくと思います。

クリエイティビティの井戸のようなものを日本は持っていて、そこから誘発される基盤をつくっていかなければならない。今回のライブもそうですし、ライブのインフラも非常に重要になってきます。

今回はインフラが整っていてコラボしやすい環境になっているので、そのあたりは今後も継続的に実現していく必要があると思います。

バーチャルキャラクターの過渡期が来ている

──先ほど「初音ミクが起点」という話をされていましたが、初音ミクが登場してから今のVTuberカルチャーまでは繋がっているということですか?

杉浦 初音ミクは仮想的なキャラクターですが、歌をつくっているアーティストがいて、初音ミクが歌う。そういった意味で初音ミクは一種のカタリスト(触媒)なんですよね。VTuberもそれに近くて。

僕が大学で教壇に立つ時にコスプレをしたり着ぐるみを着たりして講義をするのも、キャラクターになることで「杉浦一徳」とは異なるカタリストとして違うコンテンツをつくり出しているのです。

──キャラクターになることによって拡散される。

杉浦 結局のところ、主張したいことがあってそれを消費者へ届けるためにどう工夫をするか。カタリストを介したところで、本質的には変わりません。そこで今、メジャーな文化になりつつあるのが、バーチャルなキャラクターであるVTuberたちです。

それがたとえばAIで自立して動くようなものになったときに、成功するかはわかりません。ディープラーニングをしていくさじ加減で変わってきてしまうし、全然売れないものになってしまうこともあると思います。

現状のVTuberでも失敗と言われることはあります。VTuberには中の人が存在していて、その人の個性が出てくる場合がありますよね。ある程度続けていくと、それがVTuberとしての個性になってくることもあります。

それが良く作用することもあれば、清楚なキャラクターなのにガニ股で歩いてしまうとか、ミスマッチな行動をしてしまうことがある。そのあたりのさじ加減についてリテラシーがないと、失敗とされてしまうことが多いと思います。 「DIVE XR FESTIVAL」座談会 ──その点、初音ミクは違いますよね。彼女は完全にツールであって、そもそも“中の人”はいない。VTuberは、キャラクターとしてそれぞれの世界観があるとはいえ、必ず人がいて、実存がある。そのある種の“歪さ”が今後どう作用するか、ということでしょうか。

杉浦 今まさに葛藤の時期だと思います。本来VTuberが持つキャラクター性と中の人のそれが融合したとき、また新しいコンテンツになっていくと思うんですね。

“歪さから生じる問題”でVTuberの世界で盛り上がりが萎んでいっている部分があるのが今かもしれませんが、逆にチャンスだと思います。わたしはまったく悲観的ではなく面白い時代になってきたという感じがしますね。

──問題とは、近頃表出している、VTuberと中の人とがファンの望まない形で引き裂かれていることを指されているかと思いますが(「キズナアイ」や「ゲーム部プロジェクト」参考)、これからはそれが強みにもなると。

杉浦 ここが日本の強みだと思っていて、今度はそれを活かしたコンテンツが出てくると思います。日本以外だと問題が起こりすぎるとそこで「やめてしまおう」となると思いますが、日本はそこから新しい良さを追求していこうとする。そしてそれがまたブレイクスルーになってくるはず。これは、日本の文化的特徴だと思います。

「何を表現したいか」自由であれ

──韓国では「リーグ・オブ・レジェンド」(LoL)というゲームからバーチャルアイドルグループのK/DAが誕生して大きなヒットに結び付きました。K/DAはそれぞれ中の人たちが新進気鋭のシンガーたちで、しかも誰がやっているかを隠していなかった。つまり実在のアーティストがバーチャルキャラクターを演じ、そしてクリエイターがそのキャラを媒介として使っている。しかし、日本ではバーチャルキャラクターがカタリストでありながらも、声優は基本的に明かされませんよね。

杉浦 そこが実は面白いところで。僕は今、着ぐるみを脱いで中の人丸出しでしゃべっていますが、これもひとつのコンテンツとしての可能性だと思っています。

たとえば着ぐるみの世界にも「ディズニーランドにミッキーマウスは一人しかいないんだよ」とか原理主義的な部分はありますが、本来の創作性だけで考えたら妨げになってしまうので、必要ないと思っているんですね。

その人がどんなパッションでコンテンツを表現したいか。それだけだと思います。それがあるからコンテンツが活きてくるんです。

──ビジョン次第であり、「こうあるべき」と一概には言えないと。

杉浦 そうです。「中の人が出てくるコンテンツがあるなら、それはそれでいいじゃないか」という自由さがあるべきだと思います。ただ、ビジョンが伝えられないまま出てくると混乱してしまうので、意図を丁寧に伝えることが大切です。

今は皆、「中の人などいないべきだ」という観点で見てしまっています。でも「これはこういうものですよ」ときちんと説明して伝われば観てくれる。そういう意味では本当に今この世界はいろいろ試行錯誤の第一のハードルがちょうど来たのだなと思います。

中前 一発目の過渡期ですよね。面白いです。

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