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  • ゲーム部プロジェクトの桜樹みりあの声が変更?
  • 4月にも労働問題で話題に
  • ゲーム部プロジェクトの活動とVTuberのペルソナを考える

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「ゲーム部プロジェクト」声優変更か 彼らがVTuberとして破壊/開拓したもの

ゲーム部プロジェクトの桜樹みりあさん/画像は公式サイトより

人気バーチャルYouTuber(VTuber)グループ・ゲーム部プロジェクト桜樹みりあさんの声が代わったのではないかと話題になっています。

ゲーム部プロジェクトは4月にも劣悪な労働環境が暴露された件で運営会社・Unlimitedがその改善と活動継続を発表したばかりでした(関連記事)。

桜樹みりあさんの声について2019年7月1日(月)時点で公式発表はありません。そして、本稿はその是非を問うものではありません。

ゲーム部の活動を通して、何が特徴的だったのか。そしてそれらが私たちに投げかける問いについて改めて考えてみたいと思います。
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ゲーム部プロジェクトは何が特徴的だったのか

ゲーム部プロジェクトは夢咲楓さん、風見涼さん、道明寺晴翔さん、桜樹みりあさんの4人からなるVTuberグループです。
ゲーム部プロジェクト

ゲーム部プロジェクト。左から夢咲楓さん、風見涼さん、桜樹みりあさん、道明寺晴翔さん/画像は公式サイトより

ゲーム部プロジェクトというのは、彼らが動画を投稿しているYouTubeチャンネルの名前。ゲーム実況を投稿するVTuberとして活動開始した2018年3月当初、このように一つのチャンネルをグループ全体で共有する形のVTuberは珍しく、その点も特徴的でした。

それ以上に一際目立っていたのが設定や演出、脚本といったもののつくり込みを感じさせる日常動画や彼らの関係性でした。それらの動画は1話完結のストーリーやドタバタコメディなどで、"演劇部"と呼ばれるほど高評価を得ていました。
お尻で歩いてみた【がんばって】
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トップ人気のVTuber・キズナアイさんが分裂して「中の人」が増えたことが大きな話題を呼んだ際の記事でも書いたように、批評家の難波優輝さんによる「三層理論」を踏まえつつ今一度整理します。

VTuberはキャラクタ(見た目、アバター)を通して垣間見える彼らのペルソナ(振る舞いや人格)、そしてその向こう側のパーソン(中の人、あるいはVTuber用語では「魂」)を想像して楽しむという見方が一般的です。 だからこそ今回のように声が代わったように感じられることはパーソンの変更を意味し、その結果としてペルソナの同一性を維持できず拒否感を覚える視聴者が多いのでしょう。

しかしゲーム部プロジェクトの場合は、4人の(ペルソナ同士の)関係性はほぼ固定されており、その設定に従って投稿する動画の脚本や演出がなされていたように思います。

Twitterのつぶやきも、ある程度はその設定に適うかチェックが入っている、あるいはそもそもパーソン(Unlimited曰く“声優スタッフ”)以外が投稿していたとしても違和感がないほど、そのペルソナおよびペルソナ同士の関係性はブレのないものでした。

繰り返しになりますが、ここで問いたいのは、桜樹みりあさんのパーソン変更が事実かどうか、あるいは“声優スタッフ”を密かに変えるのはそれを支えるファンに対して企業倫理として適切か否か、という議論ではありません。

我々が接している彼らのペルソナは互いの関係性によって補完・強化されているという意味でそもそも複数のパーソンにより構成されたものだったのではないか? ではなぜそこまでしてペルソナをつくり上げる必要があったのか? という疑問です。

バーチャルYouTuberという概念が拓いた認識

バーチャルYouTuberという概念はモーションキャプチャ技術を安価に利用できるようになったことから誕生しました。しかしそれは、モーションキャプチャ技術を使った3Dアニメを多くの人が視聴するという結果を意味しません。

この概念が切り拓いたのは、1人のバーチャルYouTuberとして画面に登場し、一つのペルソナ(人格)として振る舞うならば──特定のコンテンツに登場する限定的な意味でのキャラとしてではなく──YouTubeやTwitterの向こうに一人のパーソンを仮想してコメントや高評価、リプライやRTをして応援することができる、という視聴者の認識でした。

一つのペルソナとしてYouTubeやTwitterで振る舞うという行為こそ、VTuberとして重要な要素なのではないかと私は考えています。この行為がなければ我々はキャラクターをVTuberとしては認識せず、ただ安価につくられたアニメやゆっくり実況のようにしか捉えられないのではないでしょうか。

例えばピーナッツくんはアニメ「オシャレになりたい!ピーナッツくん」シリーズだけではVTuberたりえず、ただ連続するコンテンツに登場するキャラクターでしかあり得ません。

しかし、ピーナッツくんという一つのペルソナとして、YouTuberのような動画を投稿し、Twitterなどで発言をすることによってようやく“YouTubeの外側に存在して自分のコンテンツを投稿している”VTuberとして認識できるのではないでしょうか。
Season2 第1話「闘え!ピーナッツくん!」オシャレになりたい!ピーナッツくん【ショートアニメ】

VTuberという認識を前提とした創作活動

一つのペルソナとしてYouTubeやTwitterで振る舞って初めて、プラットフォームの外側に存在するVTuberとして認められる、という前提は彼らの作品にも当然影響します。

それは、作品の出来で勝負する職人気質なクリエイターが目立ちにくい、という意味だけには留まりません。1話完結のストーリーやドタバタコメディがアニメーションの中心になるのも、それと関係しているのではないでしょうか。
アニメ『バーチャルさんはみている』ティザームービー
【ホロライブ】Cooming Soon!!【予告編】
たとえば、普段のペルソナとは異なる“コンテンツ”つまり企画として、数ヶ月や半年かけて主人公が成長していくストーリーを、VTuberを主役に据えて簡単に展開できるとは思えません。

別の衣装を用意するといった何らかの工夫を用意しないと、視聴者の中でVTuberのペルソナと物語の役としてのペルソナが混じってしまうか、そのギャップが目立ってしまいます。主人公のキャラクターが成長するようには、VTuberのペルソナも変化しないでしょう。

繊細な関係性を描いた人間ドラマはどうでしょうか。これもVTuber同士の関係性と、配役上の関係性とを混同してしまいそうです。

VTuberは一つのペルソナとして活動するものの、現実にはありえないほど曖昧な存在です。その曖昧さを前提とする以上、1話で物語が終わるフィクションだと分かりやすい形式と、より現実にはありえない過剰にナンセンスな表現方法が最適解だったのでしょう。

逆に言えば、別の衣装を用意しフィクションだと明示する表現方法を多用するなら、VTuberを主役に人間ドラマを3ヶ月かけて描いても問題ないということになります。

それを実際におこなったのがテレビ東京系で放映されている『四月一日さん家の』だと言えます。
バーチャルYouTuberドラマ【四月一日さん家の】新番組告知
アメリカのドラマ『フルハウス』のように観客の笑い声を挿入する形式やアフタートーク、「このドラマはフィクションです」と明記する、衣装も普段とは明確に区別するといった表現手法によって、ドラマの配役のペルソナとVTuber自身のペルソナを丁寧に切り分けています。

VTuberが模索するペルソナの在り方

カメラに対して語りかけるような動画を投稿していればYouTuber、それが3Dや2DのキャラクターならバーチャルYouTuber、という認識が定着しているのであれば、それを逆手に取ることも可能です。

たとえばそれは意味深な動画から考察が盛り上がる鳩羽つぐさんのようなジャンルが不明確で不穏な形を取るかもしれませんし、鮮烈なデビューを飾るも半年ほど動きがなく久しぶりに投稿された不可思議な動画群で注目を集めるゆのみユノさんのように一年かけて仕掛けを用意するような形かもしれません。
鳩羽つぐです
【自己紹介】ユノちゃんは有名になりたいの!!!!!
すでに活動休止されて動画も公開されていませんが、薬袋カルテさんのような視聴者との双方向性を利用した表現もありました(関連記事)。

ゲーム部プロジェクトの場合は上記のようなVTuberのペルソナをしっかりとした設定の枠にはめた演出をおこない、その前提にしっくりくる動画を制作することで多くの視聴者を獲得するに至りました。

チームとしてのVTuberを生み出す上で、ペルソナおよびその関係性を重要視し、それによって“かけがえのない”パーソンという従来のあり方を破壊・開拓してきたのが、VTuberおよびゲーム部プロジェクトの新しさ、特徴であったと言えるかもしれません。

そのような構造と今回の騒動の裏側でゲーム部プロジェクトに起こっていたことに関係があるのかと聞かれると、何とも言えません。前述の通り、それでもなおパーソンはペルソナの同一性において必須であると捉えるファンも少なからず存在するはずです。

多くの人間が関わってつくり上げているからこそVTuberのペルソナはもろく崩れやすく、その上で創造性を発揮するのはより難しい。

しかしだからこそ、コンテンツを消費し感情的に振る舞うだけではなく、その枠を超えて何かを表現しよう、新しい可能性に挑戦しようという試みには目を向けていきたいと思います。

このようなVTuberのペルソナに関する様々な試みは今後も語り継いでいきたいところです。

※記事初出時、薬袋カルテさんの現状について誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

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この記事へのコメント(2)

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onda

おんだゆうた 認証済みアカウント

ご指摘ありがとうございます。編集部のおんだと申します。
大変失礼いたしました、表現を「活動休止」と改めてさせていただきました。

匿名のユーザー

匿名のユーザー

とても丁寧に分かりやすく書いて下さっていてありがたいのですが、1点だけよろしいでしょうか。薬袋カルテさんについて、「引退」ではなく「休止」ではないでしょうか。お忙しい中すみませんが、よろしくお願いします。

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