ソフトバンクとエイベックスが魅せる“バーチャル“の可能性 VTuberからxRまで

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生み出したいのは「楽しみ方」

──今回のイベントに協賛されているソフトバンクとしては、「DIVE XR FESTIVAL」自体にどういった魅力を見出されていますか?

湧川隆次(以下、湧川) 僕らはあくまで技術屋なんですよね。エイベックスさんが考えるユーザー体験と、我々が「技術を使ってやってみよう」と思うことにはすごく乖離がある。今回のイベント以前に、エイベックスさんのクリエイティビティに魅力を感じてきました。

ソフトバンクとしての過去の取り組みだと、たとえば能のような歴史的コンテンツを多視点で鑑賞できたり、ソフトバンクホークスの試合を「VR」観戦できるコンテンツなどを提供してきました。

僕らもそういったスポーツコンテンツなどのエンターテインメントは提供できますが、それはあくまで「今ある技術で見せられるもの」を考えた結果でしかないんですよね。でもエイベックスさんは、技術を使ってもっと新しいものをつくりにいっている

そうした背景を経た上で、きっかけとしては、今後我々が5Gで何をやっていくかを考えるために、新しいコンテンツが必要だったことです。技術を普及させるには技術だけではダメで、必ずそこには新しいクリエイティビティが必要。

かつて4Gを導入した際には、SNSといった新たなコンテンツがありました。そして今4Gから5Gになる過程で、「xR」や「バーチャルキャラクター」というものに、僕らは可能性を見出したのです

だから今回「DIVE XR FESTIVAL」のお話を聞いたときも、技術のお手伝いをしたいと申し出ました。特にネットワーク技術の活用やインタラクションの面で全力サポートしようと。

エイベックスさんがやりたいと思うことをいかにリアルなイベントに持ち込むかというところに興味があります。まずは皮切りとして「DIVE XR FESTIVAL」を一緒にやらせていただく。それがエイベックスさんのイベントにソフトバンクが協賛させていただく背景です。

──ソフトとハードでそれぞれを磨いてきた両社が今回タッグを組むということですか。

中前 今は「ハード」と「ソフト」という分け方が難しくなっていて。僕らは今回のようなタッグを「エンター・テック」と呼んでいます。

ソフトバンクさんはエンターテインメントのためのテクノロジーをつくる。僕らはテクノロジーを活用したエンターテインメントをつくる。そのサイクルです。

それによって我々が一緒に何をつくりたいかというと、非物質的な価値観、「リテラシー」です。ここでの「リテラシー」が何かというところですが、「楽しみ方」のようなものですね。

たとえばライブで「エーオ」というコールアンドレスポンスを根付かせたのはQUEEN。ライブでタオルを買うのは汗を拭く兼コレクションのためだったのに、今は、曲に合わせて振り回すために買うカルチャーがある。僕らはそういった、ライブの「楽しみ方」をつくりたいのです。 湧川 重要なのは、技術“だけ”じゃない。日本は技術分野を伸ばそう、と言うだけでは世界には太刀打ちできません。技術によって環境を整備して、その先のコンテンツをつくって事業性を構築しないといけない局面にきていると思います。

今、皆さんが利用している携帯のアプリに、日本製は少ないと思います。だから、ソフトバンクが技術を提供して、その「楽しみ方」自体をコンテンツにリードしていってほしいという思いです。

現実をいかにデフォルメするか

──「楽しみ方」をつくる上で重要なことは何なのでしょうか?

中前 葛飾北斎からずっと、日本人はリアリティを追い求めない民族だと思っています。キュビズムにつながるような。葛飾北斎は浮世絵師なのでデフォルメされた絵を描いていたわけですが、実は写実に描くのが非常にうまいんですよ。

多くの人は浮世絵を勘違いしています。写実に描けないのではなく、あえて描かないんです。欧米はCGひとつでもいかにリアルに近づけるかを重視することが多いんですね。それがダメとかではなく、日本も同じ戦い方で勝負をするべきなのかという話です。

つまり無理にリアリティを追求するのではなく、透明スクリーンやホログラムのような最新技術で、日本らしいデフォルメされた仮想の世界観やキャラクターをそのまま、現実で体験できるようにする。今回のライブで実現するのもそういったことです。 ──演出もそうですが、演者にも関わってきそうな話ですね。

中前 たとえば僕がかわいいキャラクターをつくって歌わせるとするじゃないですか。一見、どこか不純物を感じる音楽ファンもいると思います。キャラクターに依存して音楽が担保されているように見えるから。

でも視点を変えると、むしろ純粋に音楽に向き合える仕組みだとも思います。なぜなら、音楽以外の要素に引っ張られない面もあるので。

もちろん容姿やダンスも磨いて活躍しているアイドルは素晴らしいと思います。でも一方でどう頑張ってもそうなれない人もいる。歌だけは抜群にうまい、とか。xRの技術は、そういった特化した才能を持っている人のためのソリューションにもなると思うのです。

──今は、エンターテインメントに総合力が求められすぎていると。

中前 そうじゃないものもあるとは思いますが、昔から音楽は特に演者に総合力が求められてきました。それこそバーチャルなら、一人のキャラクターを複数人が演じるカルチャーも出てくるかもしれません。むしろもう出てきていますよね。

それを「良くない」としているのはまだ過渡期だからだと思います。「それもカルチャーじゃないか」となるときが必ず来ますし、そういったリテラシーも、僕はソフトバンクさんとつくりたいと思っています。

湧川 今回の「DIVE XR FESTIVAL」含め、エイベックスさんとの取り組みは、既存のイベントやコンテンツと全くゴールが違う。いろんなチャレンジがあって、すごく面白いです。

理屈としては難しいなと思っていても、体験してしまえば難しさなんて忘れて楽しめる没入感が「DIVE XR FESTIVAL」にはあるんですよ。それが不思議だなと思って。演出や技術でそうなるのだと思いますが、皆さんにもぜひ体験してほしいです。
『DIVE XR FESTIVAL supported by SoftBank』プロモーション映像
中前 湧川さんの今の言葉に本質があると思います。僕がなぜ「xR」という言葉にこだわるかというと、ホログラムに映しているという「状態」だけでなく「体験」が必要だからなのです。

技術を活用した演出によって、現実世界で普通にライブに行ったときと同じ満足度を味わってもらえたら最高です。会場から出た瞬間に振り返って「ああ、すっかり没入しちゃったな。楽しかったな」と思って帰ってもらえたら最高ですね。

終わったときの気持ちは、xRライブだろうがフジロックだろうが変わらないと思っています。フジロックもある意味でMRですから。 ──実際どのような演出が予定されているのですか?

中前 ホログラムでいかに立体的に映すかではなく、入った瞬間の没入感にこだわっています。そもそも、ステージという一部分を傍観するような設計にしていません。

ステージの光で客席まで明るくなるような副産物的なことではなく、空間自体に照明を当てていて、皆さんのいる場所にもステージと同じくらい力を入れて光の演出をしています。そこには注目していただきたいですね。

リアルなライブの疑似体験を目指すなら、結局リアルが最高となりますが、「DIVE XR FESTIVAL」は、現実をデフォルメしてその拡張世界に自分が入っていくという非現実性に重きがあります。

我々がどういった意味で「xRライブ」と呼んでいるのか。皆さんにはそれを体験していただきたいと思っています。新しい試みだからこそ、体験して初めて理解できる部分も多いのです。

「DIVE XR FESTIVAL」イメージ画像

コンテンツが生まれ続ける限り、技術は発展し続ける

──最後に、テクノロジーは今後、カルチャーが抱える何かの課題に対して、その糸口になると思いますか?

中前 たとえば、「私自身は表に出たくないけど曲はつくりたい」と思っていたけど、DTMの登場をきっかけに音楽制作を始めて、デビューした方々も増えてきています。

かつては楽器を弾けないとトラックがつくれず、多少は歌えないとボーカルをのせられませんでしたが、楽器も歌もできなくてもアーティストになれるようになりました。

「つくる」ことはあたかも高尚なように見えています。特に音楽は、義務教育の過程で、既存の歌を歌ったり奏でることを習っても、音楽を創作することはほぼ習わない。絵画とは真逆です。それはなぜかと言うと、絵は模倣の方が難しくて、音楽は模倣の方が容易だから

音楽は複製カルチャーで、それが音楽業界がCDというコピーを売るというビジネスに繋がっていったと思うんですけど、これからテクノロジーによってさらに「つくる」という行為のハードルは下がっていきます

初音ミクにネギを持たせたのだって一般の方。でもそれからずっとネギを持っていますよね。そうして共創していける状況をテクノロジーがつくっていくと思います。

杉浦 僕、実はテクノロジーは“後追い”だと思っているんです。人間の創造性のポテンシャルはすごくて、技術者は人がつくったものを見て「もっとこの技術を発展させればすごくなるんじゃないか」と考えて技術革新を起こす。

逆に言えば、クリエイターたちが怠けたりアイデアが枯渇したりすると、技術は発展しなくなってしまうと思います。

今は技術とコンテンツが共創できている良い状態だと思います。このまま続いていけば、コンテンツの世界は常に新しいものが生まれてくるし、心配ないと思います。コンテンツが生まれ続ける限り、技術も発展し続けます。 ──今両方が発展している状態というのはそうだと思いますが、起爆剤になるのはどんなものだと思いますか?

杉浦 僕がよく学生に言っているのは、人間は楽しいものをつくったら共有したいじゃないですか。他の人に教えたいし伝えたい。じゃあ、伝えるにはどうしたらいいのか。

一番良いのは、人に会って伝えること。速度は遅いですが草の根的に伝わっていきます。SNSだと一気に広がりますが、それは情報が広がるだけです。

今のインターネットって、情報を共有することは非常に簡単になったんですよ。でも行間に潜んでいる部分は共有できないから、いろんな勘違いが生まれることがある。コンテクストまで共有されるには、より発展的な技術で伝える方法がないといけません

でもそうしてコンテンツの弊害が生まれたり発展していくと、解決していく方法も出てくるはずですし、共有するコンテンツのつくり方という意味でも発展していくと思います。

湧川 僕も杉浦教授のご意見と同じで、技術というのは後追いだと思います。後追いかもしれないけど、新しい技術はできていく。

その技術をいかに普及させて、安定的に提供できるかというところは、ソフトバンクがやらなければならない仕事だと思っています。たとえばネットワーク。それが安定せずに、せっかくの没入体験から現実に戻ってしまうなんてことが、あり得てはいけないので。

体験する側にとっては、技術なんてあまり関係ないじゃないですか。何を体験させてくれるかが価値になる。そういった意味では、新しい技術によってコンテンツが生まれたときに、技術が足りないことで足枷のようにならないようにするのが課題ですね。

先ほど杉浦教授がおっしゃったようにクリエイターが頑張れば新しい技術をつくり続けられるなら非常に楽しみな話です。我々も技術をどんどんつくっていって、世の中に面白いものが生まれていったらいい。その第一歩として、今回の「DIVE XR FESTIVAL」には非常に期待しています。

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読者限定、20名様を招待!

インタビュー特別企画として、プレゼントキャンペーンを開催します。キャンペーンに応募していただいた方の中から抽選で各回10組20名様を「DIVE XR FESTIVAL」にご招待!

応募方法は下記の通りです。

STEP1: TwitterでKAI-YOUのアカウント(@KAI_YOU_ed)をフォロー

STEP2:以下のキャンペーン対象ツイートをRT

応募締め切りは2019年9月17日(火)23:59まで。当選者へはKAI-YOUアカウントから、Twitterのダイレクトメッセージで18日(水)にご連絡をさせていただきます。

当選者としてお名前を登録いただければ、当日会場に無料来場が可能に。ぜひご応募ください!

※都合により当選通知のご連絡が遅れる場合もございます。あらかじめご了承ください。
※通知発信時に公式アカウントをフォローされていない場合には、当選を無効とさせていただきます。
※本キャンペーンの当選権利を、他の人に譲渡することはできません。
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湧川

ソフトバンク株式会社 先端技術開発本部 本部長

2013年よりソフトバンクモバイルに入社し、 日米で活動し、2016年11月より現職。 5G、ドローンやMaaSなど、 ソフトバンクの新規技術や事業を担当。 著書に「ITの正体」や「MobileIP教科書」など。

杉浦

慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授

1994年慶應義塾大学環境情報学部卒業。 1996年同大学院政策・メディア研究科修士、 2003年同研究科博士課程修了。博士(政策・メディア)。 慶應義塾大学デジタルメディアコンテンツ統合研究機構特別研究准教授, 2008年、同大学大学院メディアデザイン研究科准教授、 2019年、同大学教授を経て現職。 デジタルメディアコンテンツ管理と表現手法、 メディアコンテンツ協生学といったデジタルコンテンツを活用・応用する 技術から、オペレーティングシステム、インターネット伝送技術、 ユビキタス環境といったインターネット基盤技術まで、人間の活動の中で 協生するデジタルコンテンツ基盤の探求がテーマ。 ポップカルチャー創造性技法・技術ならびにコンテンツの創造、 オタクにも精通。「オタク文化」における経験共有の講義も持ち、 これら講義はコスプレ・着ぐるみで行っている。

エイベックス・エンタテインメント株式会社 レーベル事業本部 クリエイティヴグループ ゼネラルディレクター

「TRF」「hitomi」「安室奈美恵」「FACT」「FEMM」など 数々のアーティストのディレションを担当。 近年では、透明スクリーンを使用したARコンテンツ、 PCがジャックされるインタラクティヴ作品などのほか、 新たな技術を用いた音楽体験のハック、 人工知能による音楽制作など、 最新のテクノロジーを用いた音楽体験創出も手がけている。

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